胃ろうでも磨く理由とは?口腔ケアの正解と「麻痺側」の鉄則

問28

口腔のケアについて適切なものはどれか。3つ選べ。

  1. 口腔内・口腔周囲を動かすことは、口腔機能の維持・向上に資する。
  2. 胃ろうによる経管栄養を行っている高齢者では、口腔のケアは必要ない。
  3. 寝たきりで片麻痺がある人の場合には、誤嚥を防ぐため、麻痺側を下にして口腔のケアを行う。
  4. 食後は義歯をはずして口腔内を清掃し、義歯はブラシを使用して流水で洗う。
  5. 高齢者では唾液の分泌量が減り、う蝕や歯周病が起こりやすい。
目次

正解は1・4・5。口は「使わないと錆びる」

「口から食べていないから汚れない」
もしそう思っているなら、その認識は命取りです。口腔ケアは単なる清掃ではなく、感染予防とリハビリテーションの側面を持ちます。
まずは正解の選択肢から見ていきましょう。

口を動かすことはリハビリ(選択肢1)

口腔内・口腔周囲を動かすことは、口腔機能の維持・向上に資する。

この記述は適切です。

筋肉は使わなければ衰えます。
口腔ケアの際に口を開けたり、頬をマッサージしたりすることは、廃用症候群を防ぐリハビリになります。
「食べる準備」を整えること。これも重要なケアの目的です。

義歯は「ヌメリ」を落とす(選択肢4)

食後は義歯をはずして口腔内を清掃し、義歯はブラシを使用して流水で洗う。

この記述は適切です。

義歯(入れ歯)には、目に見えない細菌の膜(バイオフィルム)が付着します。
洗浄剤につけるだけでは不十分。必ずブラシを使って、流水で物理的に汚れを落とす必要があります。
自分の歯と同じように、毎日のお手入れが不可欠です。

唾液は天然の洗浄剤(選択肢5)

高齢者では唾液の分泌量が減り、う蝕や歯周病が起こりやすい。

この記述は適切です。

唾液には「自浄作用」があります。口の中の汚れを洗い流し、細菌の繁殖を抑えるバリア機能です。
高齢者はこの唾液が減少し、口の中が乾燥(ドライマウス)しがちです。
結果として、虫歯(う蝕)や歯周病のリスクが跳ね上がります。だからこそ、介入によるケアが必要なのです。

誤答は2・3。「誤嚥」を招く危険な勘違い

誤りの選択肢は、肺炎を誘発する危険な対応です。

使わない部屋ほど汚れる(選択肢2)

胃ろうによる経管栄養を行っている高齢者では、口腔のケアは必要ない。

この記述は不適切です。

「胃ろうだからケア不要」は大間違い。
口から食べていなくても、新陳代謝で粘膜は剥がれ落ち、垢(あか)となって溜まります。
さらに唾液の分泌も減るため、細菌の温床になります。
この汚れた唾液が肺に入れば、誤嚥性肺炎の引き金になります。経管栄養の人こそ、念入りなケアが必要です。

麻痺側を下にするな(選択肢3)

寝たきりで片麻痺がある人の場合には、誤嚥を防ぐため、麻痺側を下にして口腔のケアを行う。

この記述は不適切です。

片麻痺がある場合、麻痺側を上(健側を下)にするのが鉄則です。
麻痺側を下にしてしまうと、動きの悪い側に水や汚れが溜まり込み、喉へと流れ込んで誤嚥します。
「健側を下(健側臥位)」にすることで、元気な側で水を貯め、安全に吐き出すことができます。

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