問25
Aさん(85歳女性)は、長女と二人暮らしである。Aさんは自宅で転倒して腰椎を圧迫骨折し、 1か月入院した。退院後、筋力低下が著しく、要支援2の認定を受けた。介護支援専門員が訪問したところ、 Aさんは以前のように自分で家事や入浴をしたいと希望しているが、長女は転倒を心配してデイサービスでの入浴介助を希望していて折り合わない。自立支援・重度化防止の観点に立った介護支援専門員の対応として、より適切なものはどれか。3つ選べ。
- 長女の希望だけに沿ったケアプランを作成する。
- 筋力低下の原因や回復方法等の確認のため、医師、理学療法士、管理栄養士などに相談する。
- 自宅での転倒リスクを軽減し、できるだけ自宅での自立した生活を営めるように、生活環境全般を把握する。
- 様子を見るため、あえて目標や期間を定めずに介護予防通所リハビリテーションの利用を位置付ける。
- Aさんと長女を交えて、自立支援・重度化防止に向けた話し合いの場を設ける。
正解は2・3・5。専門知識と対話で合意を作る
この事例のポイントは、「本人の自立意欲」と「家族の安全への不安」のバランスをどう取るかです。
ケアマネジャーは調整役として、専門的な視点と丁寧な対話を駆使します。
専門家の知見を借りる(選択肢2)
筋力低下の原因や回復方法等の確認のため、医師、理学療法士、管理栄養士などに相談する。
この記述は適切です。
「筋力が落ちたから無理」と決めつける前に、専門家に意見を求めます。
リハビリや栄養改善でどこまで回復する見込みがあるのか。それを知ることが、プラン作成の根拠になります。
環境を整えてリスクを下げる(選択肢3)
自宅での転倒リスクを軽減し、できるだけ自宅での自立した生活を営めるように、生活環境全般を把握する。
この記述は適切です。
転倒が心配なら、転ばない環境を作ればいいのです。
手すりの設置や段差の解消など、ハード面でのアプローチが可能かを検討します。
これにより、本人の「自分でやりたい」と家族の「安全に」を両立できるかもしれません。
膝を突き合わせて話し合う(選択肢5)
Aさんと長女を交えて、自立支援・重度化防止に向けた話し合いの場を設ける。
この記述は適切です。
どちらか一方の言い分を通すのではなく、お互いの思いを共有する場を作ります。
「なぜ心配なのか」「なぜ自分でしたいのか」。
専門職のアドバイスも交えながら、双方が納得できる着地点(合意形成)を探ります。
誤答は1・4。偏った判断と不適切な計画
誤りの選択肢は、ケアマネジメントの原則に反する対応です。
家族の言いなりはNG(選択肢1)
長女の希望だけに沿ったケアプランを作成する。
この記述は不適切です。
ケアマネジメントの基本は「利用者本位」です。
家族の介護負担軽減も重要ですが、本人の意向を無視して家族の希望だけでプランを作ることは許されません。
計画には「目標」が必須(選択肢4)
様子を見るため、あえて目標や期間を定めずに介護予防通所リハビリテーションの利用を位置付ける。
この記述は不適切です。
ケアプラン(介護予防サービス計画)は、漫然とサービスを利用するためのものではありません。
「いつまでに」「どうなりたいか」という目標と期間を定めることが義務付けられています。
目標のないリハビリはあり得ません。