「最近、親の歯が抜けたみたいだけど、入れ歯を作るのを嫌がっている」
「柔らかいものばかり食べていて、噛む力が弱っている気がする」
もしそんな状況なら、少し危機感を持ったほうがいいかもしれません。
「歯なんてなくても、柔らかいものを食べれば生きていけるでしょ」と軽く考えてはいけません。
実は、「歯(噛む力)」と「認知症」には、切っても切れない密接な関係があることが、最新の研究で明らかになっています。
今回は、なぜ歯を失うことが脳の老化につながるのか、そして親御さんの脳を守るために家族ができる「お口の対策」についてお話しします。
「噛む」ことは、脳への直接ノック
私たちが食事をする時、歯の根っこにある膜(歯根膜)が圧力を感じ取り、その刺激が脳へとダイレクトに伝わります。
「噛む」という行為は、ポンプのように脳への血流を増やし、酸素や栄養を送り届ける、いわば「脳への直接マッサージ」のようなものなのです。
もし歯が抜けたまま放置し、噛む回数が減ってしまうとどうなるでしょうか?
脳への刺激が激減し、記憶を司る「海馬」などの機能が低下してしまうリスクが高まります。
実際、厚生労働省のデータでも、「歯がほとんどなく、義歯(入れ歯)を使っていない人は、認知症の発症リスクが約1.9倍高い」という衝撃的な結果が出ています。
「入れ歯」は脳を守るヘルメット
ここで重要なのは、「自分の歯じゃなきゃダメ」というわけではないことです。
たとえ自分の歯を失っていても、「入れ歯を入れてしっかり噛んでいれば、認知症リスクは抑えられる」ということも分かっています。
「入れ歯は痛いし、年寄りくさい」と嫌がる親御さんも多いですが、こう説得してみてはいかがでしょうか。
「ご飯を美味しく食べるためだけじゃないの。お父さんの脳をボケさせないために、入れ歯が必要なんだよ」と。
入れ歯を入れて噛み合わせを直すことは、転倒予防にもつながります。まさに健康寿命を延ばすための重要アイテムなのです。
今日から始める「噛む」ための環境づくり
親御さんの「噛む力」を維持するために、具体的なアクションや道具を取り入れてみましょう。
1. 3ヶ月に一度の「歯科検診」を習慣に
「痛くなってから行く」のではなく、「メンテナンスのために行く」のが今の常識です。
かかりつけの歯科医院を見つけ、定期的に歯石除去や入れ歯の調整をしてもらいましょう。プロに口の中を掃除してもらう爽快感を知れば、親御さんも通うのが楽しみになるはずです。
2. 「噛み応えのある食材」を食卓に
柔らかい煮込み料理ばかりではなく、あえて少し歯ごたえのある食材を取り入れましょう。
「根菜類(ごぼう、レンコン)」や「きのこ類」、おやつには「スルメ」や「小魚アーモンド」などがおすすめです。
「よく噛んで食べてね」と声をかけるだけでなく、噛まざるを得ない食材を出すのがポイントです。
3. お口周りの筋トレ「パタカラ体操」
食事の前に、「パ・タ・カ・ラ」と大きな声で発音する体操も有効です。
唇や舌の筋肉を鍛えることで、飲み込む力が維持され、唾液もよく出るようになります。
お風呂に入っている時などに、「歌を歌う」のも良いリハビリになります。
まとめ
認知症予防というと、計算ドリルやパズルを思い浮かべるかもしれません。
ですが、それよりもまず先にやるべきは、「歯医者さんに行くこと」かもしれません。
「一生自分の口で美味しく食べる」。
その当たり前の幸せを守ることが、結果として親御さんの脳と尊厳を守ることにつながります。
「歯がないと認知症になりやすい」。これ、噂ではなく医学的な事実です。
咀嚼(そしゃく)機能の低下が認知症のリスク要因であること。これは介護福祉士の国家試験でも「正しい選択肢」として出題される、信頼性の高い知識です。
「運動不足だけじゃないんだ!」と驚いたあなた。ぜひ実際の試験問題で、リスク要因の全体像をチェックしてみてください。
👉 【挑戦!】実際の試験問題を見てみる
