「介護の仕事は大変ですぐに辞めてしまう」というイメージを持っていませんか?しかし、事前のリサーチと正しい知識があれば、長く楽しく働ける職場を見つけることは十分に可能です。本記事では、公的データに基づいた離職の真相と、後悔しないための戦略を詳しく紹介します。
介護職の離職率は本当に高い?数字で見る業界の現状
「介護の仕事はすぐに辞めてしまう人が多い」というネガティブなイメージを持たれがちですが、公的な統計データを確認すると、意外な事実が見えてきます。
介護業界の離職率は約15%。実は他業界よりも低い水準
介護業界の年間離職率は約15%というデータがあります 。これは、他業界の平均離職率である約20%と比較しても、実は低い水準にとどまっています 。ただし、すべての職種や年代が一律に低いわけではありません。訪問介護員や29歳以下の若年層に限ると、離職率は18.7%と平均より高くなる傾向があり、働く環境や年齢によって状況が異なる点には注意が必要です 。
- 介護職の離職率は約15%で、他業界(約20%)より低い
- 29歳以下の若手や訪問介護員は、離職率が約18.7%と高め
- 業界全体で見れば、「極端に離職率が高いわけではない」のが真実
10年前とは違う!業界全体の努力により定着率は改善傾向
かつて介護業界は非常に離職率が高い時期もありましたが、現在は着実に改善が進んでいます 。正確には、10年ほど前と比較しても離職率は低下してきています 。これは、処遇改善手当による賃金の引き上げや、各法人がICTの導入などで労働環境の整備に力を注いできた結果といえます 。業界全体として、より長く働き続けられる環境づくりが加速しています。
- 離職率は10年前よりも低下・改善している
- 国の施策や各施設の努力により、給与面や労働環境が整備されつつある
- 業界全体で、「長く働ける仕事」への転換が進んでいる
「施設の二極化」に注意!離職者が絶えない施設には特徴がある
全体的な数値は改善していますが、中には依然として離職率が異常に高い「外れの施設」も存在します 。つまり、業界全体の問題というよりも、施設ごとの格差が激しいのが今の介護業界のリアルです 。離職が多い施設には、現場の負担を無視した利用者の受け入れ、上司のマネジメント不足、人間関係のトラブル放置といった明確な共通点が見られます 。
- 離職率が低い施設と高い施設の「格差(二極化)」が激しい
- 避けるべき施設の特徴:対応困難な利用者の過度な受け入れ、上司の指導力不足、お局職員による支配など
- 失敗しないためには、業界全体ではなく「個別の施設」を見極める力が必要
【全年代共通】介護職を辞める理由ランキングTOP4
介護の仕事を離れる理由は多岐にわたりますが、統計で見ると特定の要因が上位を占めていることがわかります 。
第1位:職場の人間関係に問題があった(34.3%)
全年代を通して、離職理由の圧倒的1位は「人間関係」です 。これには同僚とのトラブルだけでなく、上司によるマネジメント不足も大きく関係しています 。
特に、感情的に怒鳴り散らす上司や、部下の悩みを聞かない管理職がいる職場では、職員のモチベーションは急速に低下します 。また、特定のベテラン職員(お局職員)が職場を支配し、新人に対してマウントを取るような環境も、離職者を増やす大きな要因となっています 。
- 約3人に1人(34.3%)が人間関係を理由に離職している
- 上司の不適切な言動やマネジメント力不足が職員のやる気を削ぐ
- 「お局職員」による支配や、同僚からの嫌がらせが放置されているケースが多い
第2位:法人や施設・事業所の理念や運営のあり方に不満があった(26.3%)
次に多いのが、自分が目指す介護と施設の運営方針との間に生じる「ズレ」です 。
現場が疲弊しているにもかかわらず、利益や稼働率を優先して対応困難な利用者を次々と受け入れる姿勢に、疑問を感じる職員は少なくありません 。また、「介護の質の向上の手法」が自分の理想と異なっている場合、特に経験を積んだ「働き盛り層」での離職理由として第1位になる傾向があります 。
- 4人に1人以上(26.3%)が運営方針に不満を感じている
- 「現場の限界を無視した受け入れ」など、経営優先の姿勢が不信感を生む
- 介護の質や方向性に対する価値観の不一致が、中堅職員の離職を招く
第3位:他に良い仕事・職場があった(19.9%)
現在の職場に不満を抱えながら、より良い条件や自分に合った環境を求めて転職するケースです 。
介護業界は他施設への転職ハードルが比較的低いため、より働きやすい環境(夜勤のないデイサービス、あるいは福利厚生が充実した大規模施設など)が見つかれば、すぐに移りやすいという側面もあります 。
- 約20%の職員が、より好条件の職場へ移っている
- 自身のキャリアアップや生活スタイルに合う施設を求めて前向きに転職する
- 「ここよりも良い環境がある」という選択肢の多さが転職を後押しする
第4位:収入が少なかった(16.6%)
生活の基盤となる給与面への不満も、依然として根強い理由の一つです 。
特に29歳以下の若年層において、この「収入の低さ」は全体平均(16.6%)よりも高い割合で離職理由として挙げられています 。キャリアの先行きが見えない不安(将来の見込み)と重なることで、より給与水準の高い他業界や他施設へ流出する原因となっています 。
- 約16%の職員が、収入の少なさを理由に挙げている
- 特に若年層ほど、将来性や低収入への不安から離職を決断しやすい
- 昇給やキャリアプランが不明確なことが、長期的な勤務を阻む一因となる
【年代別・職種別】離職理由に見られる特徴的な傾向
若年層(29歳以下)は将来性や収入への不安が離職に直結
29歳以下の離職率は18.7%と全年代で最も高くなっています 。この層では、職場の人間関係に対する悩みに加え、給与水準の低さや、このままこの施設で働き続けて良いのかという「将来の見込み」が立たないことへの不安が、離職を決意させる大きな要因となっています 。
- 29歳以下の離職率は18.7%で全年代において最多である
- 主な理由は「職場の人間関係」「将来の見込みへの不安」「収入の少なさ」である
- 他の年代と比較して、仕事内容のミスマッチを感じて辞めるケースも多い
30代・40代はライフイベントや家族介護との両立が課題
30代になると離職率は13.8%とやや低下し、40代では12.4%となります 。30代では結婚・出産・育児といったライフイベントが離職理由に加わりやすく 、40代以降になると、自身のキャリアへの不満に加え、自分自身の親などの「家族の介護」を理由とする離職(介護離職)が現実的な問題として浮上してきます 。
- 30代の離職率は13.8% 、40代は12.4%
- 結婚・出産・育児といった私生活の変化が離職のきっかけになりやすい
- 働き盛りである一方で、「仕事と家族介護の両立」が困難になり辞める人が増える年代である
50代以降は「体力面」への不安と「経営方針」へのこだわりが焦点
年齢が上がるほど離職率は低下し、若年層ほど「すぐに辞める」傾向は小さくなります 。この層での主な悩みはキャリアの将来性よりも、心身の負担や健康面といった「今の仕事を続けられるか」という点にシフトします 。また、現場経験が長いからこそ、施設の経営方針や「介護の質の方向性」が自分の理想と異なることが大きなストレス要因となります 。
- 年齢が上がるほど離職率は低下するが、体力や健康面の不安が重要な理由となる
- 35歳〜55歳未満では、「介護の質の理想と現実のズレ」が運営への不満の第1位になる
- 将来性よりも「経営方針・運営への不満」が占める割合が相対的に高くなる
職種別:訪問介護や有料老人ホームは心身の負担が大きい傾向
職種によっても離職の背景は異なります。訪問介護員は一人で対応する緊張感や移動の多さが負担となり、離職率が高い職種の一つです 。施設系では、特定施設(有料老人ホーム等)の離職率が15.1%と高めで、夜勤や重度介護、ご家族への対応など、業務の責任の重さが主な理由となっています 。一方、デイサービス(通所介護)は12.4%と比較的低い傾向にあります 。
- 訪問介護員は一人対応のストレスや移動時間の長さなどが離職に繋がりやすい
- 有料老人ホームは、夜勤や重度介護の責任の重さから離職率が15.1%と高めである
- デイサービスは12.4%と低めだが、人間関係や多忙さは共通の課題となっている
要注意!離職者が多い介護施設に見られる4つの共通点
現場を無視した「対応困難な利用者」の過度な受け入れ
経営や運営の安定を優先し、現場の職員のキャパシティを無視して、対応が非常に難しい利用者を次々と受け入れている施設は要注意です 。少子高齢化の影響で高齢者すら減っている地域もあり、経営上「お客さんを選べない」という事情はありますが、それによって職員が心身ともに疲弊し、辞めていく悪循環に陥っています 。
- 現場の限界を無視して、困難なケースを次々と入所させている 。
- 運営のために利用者を選べない状況が、職員の負担を増大させている 。
- 結果として、職員が心身ともに疲弊し離職を選択することになる 。
上司のマネジメント不足・コミュニケーション不全
上司の振る舞い一つで、職員のやる気は大きく左右されます 。部下の話を聞かない、感情的に怒鳴り散らす、あるいは指示が不明確な上司がいる職場では、離職者が絶えません 。介護業界は他業界と比較して「マネジメント力」が不足しがちという側面もあり、人間関係のトラブルが起こりやすい背景となっています 。
- 部下の話を聞かず、感情的に怒鳴るなど、上司の資質に問題がある 。
- 組織としてのマネジメント力が低く、人間関係のトラブルが解決されない 。
- 上司への不信感や尊敬の欠如が、職員の離職を後押しする 。
キャリアパスが不明確で将来のビジョンが描けない
特に若手職員にとって、その施設で働くことで「将来どうなれるのか」というビジョンが見えないことは、大きな離職理由になります 。昇進の仕組みや評価基準が曖昧な施設では、意欲のある優秀な人材ほど「ここでは成長できない」と判断し、早期に見切りをつけてしまいます 。
- 将来のキャリアビジョンや昇進の仕組みが作られていない 。
- 「将来の見込みが立たない」ことは、若年層の主要な離職理由である 。
- 意欲のある職員のモチベーションを維持する仕組みが欠如している 。
「お局(おつぼね)職員」の支配や嫌がらせの放置
特定のベテラン職員(いわゆるお局職員)が職場を支配し、和を乱しているケースです 。こうした職員は、論理的な会話が通じず、自分のやり方が常に正しいと思い込んでいることが多く、特に新人職員が精神的に追い詰められやすくなります 。施設側がこうした問題を「野放し」にしている場合、健全な職員から先に辞めていくことになります 。
- コミュニケーション能力が低く支配的な職員が、職場の和を乱している 。
- お局職員による嫌がらせやマウントが施設側によって放置されている 。
- 新人が精神的に追い込まれ、病んだり辞めたりする負の連鎖がある 。
転職・入職後に「こんなはずじゃなかった」と後悔しないための注意点
パフォーマンスの一時的な低下とストレスを覚悟する
どれほど介護の経験がある人でも、職場が変われば環境やルール、人間関係、そして利用者もすべて一新されます 。新しい環境に適応するまでは、以前の職場と同じようなパフォーマンスを発揮することは難しく、どうしても作業効率が悪くなったり、仕事の質が低下したりする時期があります 。この「思うように動けない自分」に対する焦りやストレスが、早期に「自分はこの職場に向いていない」と誤解してしまう原因になります 。
- 環境の変化により、一時的に仕事のパフォーマンスが低下するのは避けられない
- 職場ごとの「当たり前」に自分をアジャストさせるには、相応の時間とエネルギーが必要である
- 「最初はできなくて当然」という心構えを持つことが、過度なストレスを防ぐ鍵となる
経験者ほど注意!周囲からのシビアな評価への対策
即戦力として期待される経験者や資格保持者ほど、周囲からの視線はシビアになります 。まだ環境に慣れていない段階でのミスが、「期待外れ」というマイナス評価に直結しやすい点には注意が必要です 。また、残念ながら介護現場には、新しく入った人の失敗を待ち構えてマウントを取ろうとする人が一定数存在する場合もあります 。こうした周囲の反応に一喜一憂せず、まずは着実に信頼を築く姿勢が求められます 。
- 「経験者だからできて当たり前」という周囲のシビアな評価を想定しておく
- 失敗を望むような不適切な言動に直面しても、冷静に対応する覚悟を持つ
- 焦って成果を出そうとせず、まずは新しい職場の文化を尊重し、着実に人間関係を構築する
「どこにでも課題はある」前提で戦略的な職場適応を
「今の職場が嫌だから」と安易に転職を繰り返すと、新しい先でも同じような人間関係のトラブルに直面し、後悔することになりかねません 。介護業界全体でマネジメント力が不足しがちな背景もあり、人間関係の悩みはどの施設でも起こり得る課題です 。大切なのは、過去の失敗を分析し、「なぜ前の職場ではうまくいかなかったのか」「次の職場ではどう立ち回るか」という戦略的な視点(PDCA)を持って入職することです 。
- 「新しい職場に行けばすべて解決する」という幻想を持たず、ある程度の覚悟を持って臨む
- 過去の離職理由を棚卸し(PDCA)し、同じ失敗を繰り返さないための具体的な対策を考えておく
- 「自分の働きやすい環境」を自ら作っていくための戦略を持ち、柔軟に立ち回る
良い施設を見抜くためのチェックリスト
介護業界全体の離職率は低下傾向にありますが、依然として施設ごとの「質の格差(二極化)」は激しいのが現状です 。後悔しない職場選びのために、以下のポイントを確認しましょう。
1. 情報収集・見学時に見るべき「職場の空気感」
データだけでは見えない、現場の人間関係や活気をチェックします。
- 職員同士、または外部の人に対して自然な挨拶があるか
- 挨拶がない、あるいは表情が暗い職場は、人間関係が冷え切っている可能性があります 。
- 特定の職員(お局職員)が威圧的な態度をとっていないか
- 特定の人物が支配し、周りが顔色を窺っているような職場は、新人が定着しにくい「外れ」の可能性が高いです 。
- 掲示物や清掃状況が整っているか
- 現場が疲弊しすぎている施設では、細かな清掃や情報の更新にまで手が回らなくなります 。
2. 面接や求人票で確認したい「経営・マネジメント体制」
上司の質や組織の仕組みは、離職率に直結する重要な要素です 。
- キャリアアップの仕組み(評価基準)が明確に示されているか
- 「どうなれば昇給・昇進するのか」が曖昧な施設は、将来の見通しが立たずモチベーションが続きません 。
- 上司や面接官に「謙虚さ」や「傾聴の姿勢」があるか
- 部下の悩みを聞かない、あるいは高圧的な上司がいる職場は、離職理由の第1位である「人間関係」のトラブルが起きやすい環境です 。
- 法人の理念と現場の介護観が一致しているか
- 「どのような介護を目指しているか」という理念が現場に浸透していないと、後々運営方針への不満につながります 。
3. 現場の負担を推測する「受け入れ体制」の確認
無理な運営をしていないか、以下の質問を通じて確認することをお勧めします。
- 「対応が難しい利用者」に対して、組織としてどう対応しているか
- 現場の限界を無視して無制限に受け入れている施設は、職員が心身ともに疲弊してしまいます 。
- 離職率の具体的な数値とその理由を隠さず話してくれるか
- 離職の原因を分析し、改善に取り組んでいる姿勢がある施設は、信頼に値します 。
- 夜勤体制や残業時間の平均は実態に即しているか
- 特に有料老人ホームなどの施設系では、業務量と責任の重さが離職の引き金になるため、詳細な確認が必要です 。
見学や面接の際に、以下のポイントを確認しましょう。
- 挨拶と空気:職員同士や外部の人に対して、自然な挨拶や明るい表情があるか 。
- 上司の姿勢:面接官(上司)が謙虚で、こちらの話を親身に聞く姿勢があるか 。
- 理念の浸透:施設が目指す介護の質が明確で、現場とズレていないか 。
- 教育と評価:具体的なキャリアアップの仕組みや評価基準が示されているか 。
- 現場の余裕:清掃が行き届き、掲示物が最新の状態に更新されているか。
[ポイント] 全ての条件を満たす「完璧な職場」は存在しないかもしれません。しかし、自分が最も譲れないポイント(給与、人間関係、将来性など)を明確にした上でこのリストを活用すれば、失敗の確率はぐっと下がります
まとめ:納得できる環境で介護の仕事をスタートしよう
介護職の離職理由は、単に「給料が低い」「仕事が大変」といったイメージだけではありません。統計や現場の声を見ると、本当の原因は人間関係や運営体制、そして「職場選びのミスマッチ」に隠されていることがわかります 。
介護の仕事そのものを嫌いにならないために
せっかく志を持ってこの業界を選んだのに、たまたま選んだ「外れの施設」が原因で介護そのものが嫌いになってしまうのは、非常にもったいないことです 。離職率が低下傾向にある一方で、施設による環境の差(二極化)は依然として存在します 。まずは施設見学を通じて、そこで働く職員が「楽しそうに働いているか」を自分の目で確かめることが、最も確実なリスク回避になります 。
- 離職率約15%と業界全体は改善しているが、施設ごとの格差は大きい
- 業界を去る前に、まずは「自分に合った環境」を探すことが重要
- 施設見学や現場の空気感を確認し、納得感を持って入職する
給与だけで選ばない!自分にとっての「譲れない条件」を整理する
長く働き続けるコツは、給与条件だけでなく、教育体制や理念への共感など「自分が大切にしたい価値観」を明確にすることです 。離職理由の第1位が「人間関係(34.3%)」、第2位が「理念や運営への不満(26.3%)」であることからもわかる通り、心の納得感が定着に直結します 。特に若年層なら「キャリアプラン(将来性)」、ベテラン層なら「介護方針(質の追求)」など、自分のライフステージに合わせた優先順位を持ちましょう 。
- 人間関係や運営方針への不満が最大の離職要因であることを忘れない
- 若手は「キャリアパス」、働き盛りは「介護の質」など優先項目を絞る
- 転職直後の「一時的な不慣れ」を想定し、焦らず環境に馴染む戦略を持つ
介護は本来、非常にやりがいのある素晴らしい職業です。この記事を参考に、あなたが納得して長く働き続けられる職場を見つけられることを願っています。