待ちに待った親の介護認定の結果通知。「今の状態なら、要介護3くらいは出るだろう」と思っていたのに、封を開けてみたら「要介護1」。
「えっ、こんなに大変なのに?」
「調査員さんは何をみていたの?」
あるいは、毎月引かれる介護保険料の通知を見て、「計算が間違っているんじゃないか?」と疑問に思ったことはありませんか?
役所から届く通知書は「絶対的な決定事項」のように見えますが、実はそうではありません。私たちには、その決定に対して「待った」をかけ、再審査を求める権利が保障されています。
今回は、いざという時に自分たちの権利を守るための「不服申し立て」の仕組みについて、わかりやすく解説します。
役所の決定は「絶対」ではない
市町村が決めたことに納得がいかない場合、泣き寝入りするしかないと思っていませんか?
介護保険制度には、こうした市民の「納得できない!」という声を受け止め、公平に審査し直してくれる専門機関が存在します。
それが「介護保険審査会」です。
これは、市町村が行った決定(行政処分)に対して、私たち利用者が正式に不服を申し立てることができる場所です。裁判のような大掛かりなものではなく、制度の中に組み込まれた正当な権利行使の場といえます。
どんなことが審査の対象になる?
主に以下のようなケースで、審査を請求することができます。
- 要介護認定の結果
- 「普段の様子が伝わっておらず、認定度が低すぎる」
- 「非該当(自立)と判定されたが、生活に支障がある」
- 保険料や給付に関する決定
- 「保険料の計算がおかしい気がする」
- 「滞納を理由に財産の差し押さえ処分を受けたが、事情を聞いてほしい」
つまり、介護サービスの入り口である「認定」と、生活に直結する「お金」に関するトラブルが主な守備範囲です。
公平に判断するための「2つの安心」
「不服を申し立てても、結局はお役所仕事で、なあなあにされてしまうのでは?」
そんな不安を持つ方もいるかもしれません。しかし、この審査会には公平性を保つためのしっかりとしたルールがあります。
1. 「都道府県」が設置する第三者機関
認定や保険料を決めたのは「市町村」です。その市町村に対して文句を言っても、自分たちの決定を覆すのは難しいかもしれません。
そのため、介護保険審査会は、市町村の上位機関である「都道府県」に設置されています。決定を下した当事者とは別の、第三者的な立場で審査が行われる仕組みになっています。
2. 私たち「利用者代表」も参加する
審査会のメンバーは、役所の人だけで構成されているわけではありません。
- 市町村の代表
- 公益代表(弁護士や医師などの中立な専門家)
- 被保険者代表(私たち利用者の代表)
このように、利用者側の視点を持った委員が必ず含まれることが法律で決められています。一方的な理屈だけでなく、市民感覚も踏まえた議論が行われるよう配慮されているのです。
「おかしい」と思ったらどう動くべき?
もし、届いた通知の内容にどうしても納得がいかない場合は、以下のステップで行動してみましょう。
STEP 1:まずは窓口やケアマネジャーに相談
いきなり審査請求をする前に、まずは市町村の窓口で「なぜこの結果になったのか」説明を求めたり、担当のケアマネジャーに相談したりしましょう。単なる計算ミスや、調査時の伝え漏れであれば、もっと簡単な手続き(区分変更申請など)で解決する場合もあります。
STEP 2:通知書を確認する
認定結果や保険料の通知書の下の方には、必ず「この処分に不服がある場合は…」という教示文(きょうじぶん)が書かれています。そこに審査請求ができる期間(通常は決定を知った日の翌日から3ヶ月以内)や提出先が記載されています。
STEP 3:審査請求を行う
それでも解決しない場合は、通知書に記載された手順に従って、都道府県の介護保険審査会へ審査請求を行います。
まとめ:権利を知っていることが「お守り」になる
- 役所の決定には、都道府県の「介護保険審査会」に不服を申し立てることができる。
- 審査会には「利用者代表」も参加し、公平に判断される。
- 認定結果だけでなく、保険料のトラブルも対象になる。
実際に審査請求を行うケースは多くはありませんが、「いざとなれば異議を唱える場所がある」と知っているだけで、漠然とした不安は軽くなるものです。
介護は長く続く生活の一部。疑問や不満を抱え込まず、制度を正しく理解して、納得のいくサービスを受けていきましょう。
