脳梗塞などの後遺症で、片側の手足に麻痺が残ってしまった親御さん。
リハビリを頑張って、ようやく杖を使って歩けるようになると、家族としても嬉しい反面、ハラハラしますよね。
「お父さん、足の順番が違うよ!」
「あれ、どっちの足から出すんだっけ?」
いざ歩き出そうとして、足がもつれそうになったり、立ち往生してしまったり。
実は、杖を使った歩行には、「絶対に転んではいけない鉄則の順番」があります。
これを間違えると、バランスを崩して転倒骨折……なんてことになりかねません。
今回は、麻痺のある方が安全に歩くための基本ルールと、それを体に覚えさせるための合言葉についてお話しします。
転ばないための「イチ、ニ、サン」の法則
杖を使った歩き方にはいくつか種類がありますが、麻痺がある場合に最も安定的で基本となるのが「3動作歩行(さんどうさほこう)」です。
難しい理屈は抜きにして、覚えるべき順番はたった一つです。
① 杖
② 悪い方の足(麻痺がある足)
③ 良い方の足(元気な足)
この「イチ(杖)、ニ(悪い)、サン(良い)」のリズムが鉄則です。
なぜこの順番なの?
想像してみてください。
最初に「杖」を前に出し、体を支えるポイントを作ります。
次に、体重をかけるのが不安な「悪い足」を前に出します。この時、後ろに残っている「良い足」と、前の「杖」の2点で体を支えているので安定します。
最後に、しっかり踏ん張れる「良い足」を前に引き寄せます。
もし順番を逆にして、「良い足」を先に出してしまうと、体を支えるのが「杖」と「悪い足」だけになり、ガクッと膝が折れて転倒してしまうリスクがあるのです。
声かけは「トン、スッ、スッ」で
一緒に歩く練習をする時は、横についてリズムをとってあげましょう。
- 「杖(トン)」
- 「悪い足(スッ)」
- 「良い足(スッ)」
「トン、スッ、スッ」と声をかけたり、「杖、右、左」と号令をかけたりすることで、親御さんもリズムをつかみやすくなります。
(※右麻痺の場合は、左手で杖を持つので「杖(左手)、右足、左足」となります)
安定感抜群!「多点杖」という選択肢
「普通の杖だと、先が滑りそうで怖い」
そんな不安がある場合は、地面につく部分が3点や4点に分かれている「多点杖(たてんづえ)」を検討してみましょう。
一点杖に比べて地面を捉える面積が広いため、抜群の安定感があります。また、手を離しても杖が自立するため、「ちょっと靴を履く時に杖を置きたい」という場面でも倒れず、拾うためにしゃがんで転ぶという事故も防げます。
まとめ
歩くことは、生活範囲を広げ、心身の健康を保つために一番大切なことです。
「杖、悪い、良い」
この魔法の合言葉を玄関に貼っておくのもいいかもしれません。
焦らずゆっくり、正しいリズムで「歩ける喜び」を支えてあげてください。
「杖→患側→健側」。このリズムが命を守ります。
なぜこの順番なのか?それは「常に安定した支持基底面を作るため」です。
この歩行介助の基本は、介護福祉士の国家試験で何度も出題されている超重要項目です。「理屈がわかれば忘れない!」というあなた。ぜひ実際の試験問題で確認してみてください。
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