親御さんがベッドで過ごす時間が長くなると、ご家族の意識はどうしても「食事」や「排泄」といった、生きるために必須のケアに向きがちです。
「顔を洗う」「歯を磨く」「髪を整える」
こうした身だしなみ(整容)のケアは、「余裕があればやろう」と後回しになっていませんか?
でも、思い出してみてください。
朝起きて顔を洗った時のシャキッとする感覚や、歯を磨いた後の爽快感。
それは、寝たきりの方にとっても変わらず、人間らしい尊厳や生きる意欲を支える大切なスイッチになります。
今回は、ベッドの上でも快適に、そして家族も楽にできる「身だしなみケア」のプロの技と道具をご紹介します。
「うがい」どうしてる?寝たまま使える魔法の器
寝たままの状態での歯磨きで、一番困るのが「うがい」ですよね。
コップだとこぼれてしまうし、洗面器だと大きすぎて首が疲れてしまいます。
そんな時にプロが使っているのが、「ガーグルベースン(うがい受け)」という容器です。
そら豆のような独特の形をしていて、顔の曲線にぴったりフィットします。これを使えば、寝たままでも横を向くだけで、水をこぼさずにペッと吐き出すことができます。
ネット通販や介護用品店で数百円から手に入ります。「うがいが上手くできない」と悩んでいるなら、ぜひ一度試してほしいアイテムです。
入れ歯は「歯磨き粉」で磨いちゃダメ?
「口の中に入れるものだから、歯磨き粉でしっかり磨いてあげよう」
その優しさ、実は入れ歯の寿命を縮めているかもしれません。
一般的な歯磨き粉には「研磨剤」が含まれています。
硬い天然の歯なら問題ありませんが、樹脂でできた入れ歯をゴシゴシ磨くと、目に見えない細かい傷がたくさんついてしまいます。
その傷の中に細菌(カビの一種であるカンジダ菌など)が入り込み、口臭や口内炎、さらには誤嚥性肺炎の原因になってしまうのです。
入れ歯のお手入れは、以下の2点が鉄則です。
- 流水とブラシだけで洗う(または入れ歯専用の洗剤を使う)。
- 熱湯はかけない(変形します)。
朝の「蒸しタオル」が心を開くスイッチになる
洗面所まで行けない時、冷たい水で絞ったタオルで顔を拭いていませんか?
汚れは落ちますが、リラックス効果を高めるなら断然「蒸しタオル(ホットタオル)」がおすすめです。
濡らしたタオルをレンジで少し温めるだけで作れます(※熱すぎないか必ず確認してください)。
温かいタオルで顔を覆うと、毛穴が開いて汚れが落ちやすくなるだけでなく、血行が良くなり、顔色がパッと明るくなります。
「あぁ、いい気持ち」
そのほっとした瞬間が、親御さんの1日の始まりを明るく照らしてくれます。
まとめ
身だしなみを整えることは、単に体をきれいにすることではありません。
「今日も一日頑張ろう」という心のスイッチを入れることです。
便利な道具やちょっとした温度の気遣いで、親御さんの「サッパリした!」という笑顔を引き出してあげてください。
「ガーグルベースン」。この不思議な名前の道具を知っていますか?
そら豆の形をしたうがい受け。この道具を知っているかどうかは、寝たきりの方の口腔ケアを安全に行えるかどうかの分かれ道になります。
「プロはこんな道具を使っていたのか!」と驚いたあなた。ぜひ実際の試験問題で、介護技術の基本をチェックしてみてください。
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