「熱があるからお風呂はやめておこう」
「足腰が痛くて、浴室まで移動するのが辛い」
高齢になると、体調によって入浴を控える日がどうしても増えてきます。
でも、何日もお風呂に入らないと、汗でベタベタしたり、痒くなったりして不快ですよね。
そんな時、家族ができるケアが、温かいタオルで体を拭く「清拭(せいしき)」です。
「ただ拭くだけでしょ?」と思うかもしれませんが、実はやり方を間違えると、親御さんの体温を一気に奪い、風邪を悪化させてしまう危険があります。
今回は、介護のプロが必ず守っている「湯冷めさせない体拭きのルール」と、家庭でできる温かいケアのコツについてお話しします。
最大の敵は「気化熱」。濡れたままは命取り!
濡れた手で風に当たると、ヒヤッとして涼しく感じますよね。
これは、水分が蒸発する時に周りの熱を奪う「気化熱(きかねつ)」という現象です。
夏場なら涼しくて良いですが、体調が悪い高齢者にとって、これは大敵です。
濡れタオルで拭いた後、肌が湿ったままにしておくと、この気化熱によって体温がぐんぐん奪われ、あっという間に体が冷え切ってしまいます。
プロの清拭において、最も重要なルールはこれです。
「蒸しタオルで拭いた後は、すぐに乾いたタオルで水分を拭き取る」
汚れを落とすことと同じくらい、この「乾拭き(からぶき)」で水気を断つことが、親御さんの体を守るためには絶対に必要なのです。
家庭でできる「極楽・体拭き」の3つのコツ
「乾拭き」以外にも、気持ちよく、かつ安全にケアするためのポイントがあります。
1. お湯の温度は「50℃〜55℃」と高めに
洗面器にお湯を張る場合、お風呂と同じ40℃ではぬる過ぎます。タオルを絞ったり、運んだりしている間に冷めてしまうからです。
給湯器の設定を少し上げるか、ポットのお湯を足して、「手を入れるとちょっと熱いかな(50℃前後)」くらいのお湯を使いましょう。
(※もちろん、親御さんの肌に当てる前には必ず自分の腕の内側で温度確認をしてくださいね!)
【裏技】ゴム手袋の上に軍手
熱いお湯でタオルを絞るのは大変です。
「ゴム手袋」をした上に、さらに「軍手(または綿手袋)」を重ねてみてください。熱さを感じずに、ガッチリと固く絞ることができます。
2. 部屋を「南国」にする
体を露出するのですから、室温管理は必須です。
清拭をする前には暖房を強めに入れ、室温を24℃〜26℃くらいまで上げておきましょう。
窓を開けて換気をするのは、終わって服を着てから。最中は寒気が入らないように閉め切るのが鉄則です。
3. 「泡」や「電子レンジ」を活用する
お湯を運ぶのが大変なら、便利なグッズを使いましょう。
- 清拭剤(せいしきざい): 泡で出てくるタイプなら、お湯ですすぐ必要がなく、タオルで拭き取るだけで汚れが落ちます。保湿成分が入っているものも多く、肌に優しいです。
- ホットタオル: 濡らしたタオルをラップで包み、電子レンジで数十秒温めれば、即席の蒸しタオルが完成します。
まとめ
「お風呂に入れない=不潔」ではありません。
温かいタオルで背中を拭いてもらうだけで、血行が良くなり、まるでお風呂に入ったかのようにリラックスして眠れることもあります。
「拭いた後は、すぐ乾拭き!」
この合言葉だけ忘れずに、親御さんに「サッパリしたね」という時間をプレゼントしてあげてください。
「拭いたらすぐに乾拭き」。これが風邪を防ぐ鉄則です。
なぜ乾いたタオルが必要なのか。それは「気化熱」による体温低下を防ぐためです。
この手順は、介護福祉士の国家試験でも「最も適切な方法」として選ばれる重要なケア技術です。あなたの知識が正しいか、実際の試験問題でチェックしてみませんか?
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