「実家のお風呂、床がツルツル滑って怖い」
「浴槽が深くて、またぐのが大変そう」
久しぶりに実家のお風呂に入った時、そんな風にヒヤッとしたことはありませんか?
高齢者にとって、お風呂場は家の中で最も事故が起きやすい「危険地帯」です。
裸で、水で濡れていて、固いタイル張り。転倒すれば大怪我につながります。
「危ないから気をつけて」と言うだけでは事故は防げません。
転ばないための環境を作るのが、家族の役割です。
今回は、お風呂場の安全を守る最強のアイテム「手すり」について、意外と知られていない「縦と横の役割の違い」と、失敗しない設置のポイントをお話しします。
「とりあえず付ければいい」は大間違い!
「手すりなんて、掴めればなんでもいいでしょ?」と思っていませんか?
実は手すりには、向きによって明確な役割分担があります。これを間違えると、かえって使いにくくなってしまいます。
1. 立ち上がるなら「縦(I型)」
お風呂の椅子から立ち上がる時や、浴槽から出る時など、「上下の動き」を助けるのは縦の手すりです。
ドアの横や、浴槽の出入り口付近に設置します。しっかり握って、体を上に引き上げる力をサポートします。
2. 移動するなら「横(ー型)」
洗い場を歩く時や、浴槽の中で座っている姿勢を安定させる時など、「左右の動き」を助けるのは横の手すりです。
廊下や、浴槽の壁側に設置します。杖のように体重を預けてバランスを取ることができます。
最強なのは「L字型」
立ち上がりも移動も必要な場所(浴槽の横やトイレなど)には、縦と横を組み合わせた「L字型」の手すりがベストです。
親御さんの動線をシミュレーションして、「ここで立って、ここでまたぐから…」と必要な手すりの向きを考えてみましょう。
「低い浴槽」は逆に危ない?
リフォームの際、「またぎやすいように浴槽を低くしよう」と考える方が多いですが、ここにも落とし穴があります。
浴槽の縁(ふち)が低すぎると(例えば床から20cmなど)、今度は「お風呂の中から立ち上がるのが大変」になってしまうのです。
深く沈み込んだ状態から立ち上がるには、強い脚力が必要です。
一般的に、またぎやすく、かつ立ち上がりやすい高さは「40cm前後(普通の椅子の高さ)」と言われています。
「低ければいい」というわけではないことを覚えておいてください。
工事なしでも安全は作れる!
「賃貸だから工事はできない」「費用が心配」という方には、以下の方法がおすすめです。
1. 「浴槽手すり(工事不要)」
浴槽の縁(ふち)を万力のように挟み込んで固定するタイプの手すりです。
工事なしで簡単に取り付けられ、またぐ動作や立ち上がりを強力にサポートします。介護用品のレンタル対象にもなっています。
2. 「シャワーチェア」と「浴槽台」
お風呂用の椅子や、浴槽の中に沈める台を使って、段差を調整しましょう。
手すりと組み合わせることで、体の負担を最小限に抑えることができます。
3. 「住宅改修費」を使う
要介護認定を受けていれば、手すりの取り付け工事などに最大20万円(1割負担なら実質2万円)まで介護保険が使えます。
ケアマネジャーに「お風呂が危ないので手すりをつけたい」と相談すれば、すぐに業者を紹介してくれます。
まとめ
お風呂は、裸で無防備になる場所だからこそ、道具に頼ることが重要です。
「転ばぬ先の杖」ならぬ「転ばぬ先の手すり」。
たった一本の棒が、親御さんの「一人でお風呂に入れる自信」と「命」を守ってくれます。
「手すりは縦と横を使い分ける」。これが安全な入浴の鉄則です。
それぞれの役割を正しく理解し、適切な場所に設置すること。これは介護福祉士の国家試験でも問われる、住環境整備の基本知識です。
「我が家のお風呂は大丈夫かな?」とチェックしながら、実際の試験問題に挑戦してみませんか?
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