親の「自分でやりたい」と家族の「心配」が衝突したら。納得を生む解決のヒント

入院生活を経て、久しぶりに自宅に戻ってきた親御さん。
嬉しさ反面、以前よりも足腰が弱ってしまった姿を見て、ご家族は不安を感じることも多いでしょう。

ここでよく起こるのが、「親本人の希望」と「家族の希望」の衝突です。

親御さんは「リハビリして、前みたいに自分でお風呂に入りたいし、家事もしたい!」と意欲的。
一方で、ご家族は「また転んで骨折したら大変。お風呂はデイサービスで安全に入ってほしい」と心配する。

どちらの言い分も、痛いほどよくわかります。
本人の「自立したい気持ち」も、家族の「安全を守りたい気持ち」も、どちらも正解だからです。

こうして話し合いが平行線になってしまったとき、どうすればお互いが納得できる着地点を見つけられるのでしょうか。
今回は、介護のプロであるケアマネジャーが、こうした場面でどのように調整を行っているのか、その視点をご紹介します。

目次

一方の意見だけで押し切るのはNG

まず大切なのは、「どちらか一方の意見だけで突っ走らない」ことです。

ご家族の心配はもっともですが、「危ないからダメ」と本人の意欲を頭ごなしに否定し、すべてをサービス任せにしてしまうとどうなるでしょうか。
親御さんはやる気を失い、心身の機能がさらに低下してしまう(廃用症候群)リスクがあります。

逆に、本人の「やりたい」だけを尊重して、危険な環境を放置するのも無責任です。
大切なのは、「安全を確保しつつ、本人の意欲を活かす方法はないか?」と考えることです。

プロが実践する「3つの解決ステップ」

ケアマネジャーは、こうした板挟みの状況になったとき、感情論ではなく「事実」と「環境」に目を向けて解決策を探ります。

1. 「無理」と決めつけず、専門家に聞く

家族が見て「もう無理だろう」と思っても、リハビリの専門家から見れば「まだ回復の余地がある」というケースは多々あります。

「筋力が落ちた原因は何か?」「リハビリや栄養改善でどこまで戻りそうか?」
医師や理学療法士、管理栄養士などの意見を聞くことで、「今は無理でも、3ヶ月リハビリを頑張れば自宅入浴ができるようになるかもしれない」といった具体的な見通しが立ちます。

2. 「転ばない環境」を作れるか検討する

「自宅は危ない」と言うなら、危なくないように変えることはできないでしょうか?

  • お風呂場に手すりをつける
  • 段差を解消する
  • 滑りにくいマットを敷く

このように、生活環境(ハード面)を整えることで、転倒リスクを大幅に減らせる可能性があります。
「今のままでは危ないけれど、手すりがあれば一人でもできる」となれば、本人の希望と家族の安心を両立できます。

3. 第三者を交えて冷静に話し合う

家族だけで話し合うと、どうしても「わがままだ」「心配しすぎだ」と感情的になりがちです。

そこへケアマネジャーのような第三者が入り、「お母様はこうしたいんですね」「娘さんはここが心配なんですね」と整理しながら話し合う場(サービス担当者会議など)を設けることが重要です。

専門家のアドバイスを交えながら、「最初の1ヶ月はデイサービスで体力をつけて、自信がついたら自宅での入浴に切り替えましょう」といった、段階的な目標(折衷案)を作ることで、双方が納得しやすくなります。

「目標」のないサービス利用は避けよう

一番良くないのは、「とりあえず心配だから」と、目標も期間も決めずに漫然とサービスを使い続けることです。

「いつまでに、どうなりたいか」という目標がないと、リハビリの効果も上がりません。
「また家事ができるようになるために、今はデイサービスでリハビリを頑張る」という前向きな理由付けがあれば、親御さんも納得してサービスを利用してくれるはずです。

まとめ:対立したら「ケアマネジャー」を頼ろう

親子の意見が食い違ったときこそ、ケアマネジャーの出番です。
彼らは単にサービスの手配をするだけでなく、こうした「家族間の調整役」としてのプロでもあります。

「親が頑固で困っている」「心配だから説得してほしい」
そんな時は、遠慮なくケアマネジャーに相談してみてください。きっと、あなたと親御さんの間に入って、最善の「第三の道」を一緒に考えてくれるはずです。

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