「お父さん、町内会の敬老会に行ってみたら？」
そう勧めた途端、「俺を年寄り扱いするな！」と烈火のごとく怒り出し、記念品のお饅頭すら受け取らない。
定年退職をしたお父さんが、急に頑固になったり、無理な筋トレに励んだりして、「若さ」に執着する姿に困惑しているご家族はいませんか？
「もういい歳なんだから、のんびりすればいいのに」
そう思うのが家族の正直な気持ちでしょう。でも、お父さん自身は「のんびりすること＝終わった人になること」だと感じて、必死に抗っているのかもしれません。
今回は、そんな「強がる高齢男性」の心理を、有名な心理学の理論を使って紐解いてみましょう。お父さんの心の鎧（よろい）が見えてくれば、接し方も変わってくるはずです。
心理学でわかる「若作り」の正体
アメリカの心理学者ライチャードは、定年退職後の男性の性格を5つのタイプに分類しました。
その中に、まさに今回のお父さんに当てはまる「自己防衛（装甲）型」というタイプがあります。
このタイプの男性は、一言で言えば「老いへの不安を、活動の鎧（よろい）で隠している人」です。
- 特徴: 仕事熱心だった人に多い。「老い＝悪」だと感じている。
- 行動: 身体の衰えを認めたくないため、過度な運動や新しい活動に没頭する。
- 心理: 「まだ現役だ」「若い者には負けん」と思い込むことで、死や老化の恐怖から自分を守っている。
つまり、お父さんが敬老会を拒否したり、毎日必死に筋トレをしたりするのは、性格が歪んだからではなく、「老いていく自分を認めるのが怖くてたまらないから」なのです。
そう考えると、「素直じゃないなあ」というイライラも、「お父さんなりに必死なんだな」という愛おしさに変わりませんか？
「鎧」を着た父への正しい接し方
このタイプの方は、エネルギーがあり活動的（適応的）なので、基本的には健康で長生きする傾向があります。
しかし、「老い」を極端に嫌うため、病気や怪我で動けなくなった時にガクッと落ち込んでしまうリスクも秘めています。
家族ができるサポートは、その「プライド」を傷つけず、上手に行動力を活かしてあげることです。
1. 「老人扱い」は禁句。「先輩扱い」が正解
「おじいちゃん」「ご隠居」といった言葉はNGです。
代わりに、「さすが経験豊富ですね」「現役時代と変わりませんね」と、その能力や若々しさを認める言葉をかけましょう。
「若いですね」と言われることが、彼らにとって一番の精神安定剤になります。
2. 「役割」という舞台を用意する
会社という場所を失った喪失感を埋めるために、新しい役割が必要です。
ただし、「留守番」や「草むしり」のような雑用ではプライドが許しません。
「町内会の役員」「マンションの理事」「趣味サークルの指導役」など、「頼られる立場」「教える立場」を見つけられるよう誘導してあげましょう。
若々しさをサポートする「大人のツール」
お父さんの「若くありたい」という意欲を応援するグッズをプレゼントするのも効果的です。もちろん、老人向けの商品は避けてくださいね。
1. 成果が見える「スマートウォッチ」
毎日の筋トレやウォーキングに励むお父さんには、「スマートウォッチ」がぴったりです。
「今日は1万歩歩いた」「心拍数が還暦とは思えない数値だ」と、自分の健康状態をデータで確認できることは、大きな自信と喜びにつながります。
2. プロ仕様の「スポーツウェア・シューズ」
「形から入る」ことも大切です。
あえて若者向けのスポーツブランドの「トレーニングウェア」や、機能性の高い「ランニングシューズ」を贈ってみましょう。
「これを着こなせる俺」を確認することで、自己肯定感が上がり、より活動的になります。
3. 社会とつながる「パソコン・タブレット」
会社の後輩と連絡を取りたがるのは、社会との接点を持ち続けたい証拠です。
自分専用の「タブレット」や「高性能なパソコン」があれば、ニュースをチェックしたり、SNSで趣味を発信したりと、家の中にいても「社会参加」している感覚を持てます。
まとめ
「俺はまだ若い」と強がるお父さん。
それは、最後まで自分の足で立ち続けようとする、男の意地のようなものです。
その鎧を無理に脱がそうとせず、「かっこいいね」と磨いてあげてください。
自信に満ちた笑顔で過ごしてもらうことが、結果として家族の安らぎにもつながるのですから。
「老いへの不安を筋トレで隠す」。これ、心理学的に名前がついています。
ライチャードの老年期適応類型における「装甲型（自己防衛型）」。
頑固なお父さんの行動パターンが、実は教科書通りの典型例だと知ると少し面白くありませんか？この知識は介護福祉士試験でも頻出です。ぜひ実際の試験問題で確認してみてください。
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