もしも、大切な親御さんが「余命」を告げられたら。
あるいは、重い病気で死を意識せざるを得ない状況になったら。
ご本人がショックを受けるのはもちろんですが、それを見守る家族も、親御さんの激しい感情の波に翻弄されてしまうことがよくあります。
「誤診だ!医者を変えろ!」と叫んだかと思えば、
「なんで私だけこんな目に遭うんだ!」と家族に当たり散らし、
翌日には「もう死んでしまいたい」と塞ぎ込んでしまう。
「あんなに穏やかだった親が、変わってしまった」と悲しくなるかもしれません。
でも、それは性格が変わったわけではなく、人間が大きな喪失(死)を受け入れるために必死にもがいている「心の防衛反応」なのです。
今回は、アメリカの精神科医キューブラー・ロスが提唱した有名な「死の受容過程(5段階モデル)」をご紹介します。
親御さんの心が今どこにあるのかを知るための「地図」として、役立ててください。
心が辿る5つのステップ
人は死を宣告された時、いきなり「はい、わかりました」と納得できるわけではありません。
多くの人は、以下の5つの段階を経て、少しずつ死を受け入れていくと言われています。
第1段階:否認(ひにん)
「間違いだ!私が死ぬはずがない」
頭では理解していても、心が追いつかず、事実を認めようとしません。ドクターショッピング(病院を次々と変えること)を繰り返すのもこの時期です。
第2段階:怒り(いかり)
「なんで私が! 真面目に生きてきたのに!」
「なぜ自分だけが」というやり場のない感情が、家族や医療者への攻撃となって現れます。家族にとって一番辛い時期ですが、「私たちが憎いわけではない」と理解することが大切です。
第3段階:取り引き(とりひき)
「神様、財産はいりませんから命だけは助けてください」
何かにすがり、奇跡を願う段階です。「孫の小学校入学までは生きたい」といった条件をつけて、死を先延ばしにしようとします。
第4段階:抑うつ(よくうつ)
「もうダメだ…何もしたくない」
いよいよ死が避けられないと悟り、気力を失います。
今までできたことができなくなる喪失感や、家族との別れを想って深い悲しみに沈みます。
※今回の試験問題の答えになっているのが、この段階です。
第5段階:受容(じゅよう)
「静かにその時を待とう」
感情の波が凪ぎ、穏やかな気持ちで死を受け入れる最終段階です。
感情の波だけでなく、『いないはずの人や虫が見える』といった不思議な言動に戸惑うこともあるかもしれません。それは『終末期せん妄』という生理現象です。穏やかな時間を守るための対応法はこちらをご覧ください。

心の準備ができたら、体のサインについても知っておきませんか? ドラマで見る『瞳孔の確認』が持つ本当の意味を知れば、最期の瞬間も落ち着いて手を握ってあげられます。

「抑うつ」の時期に、家族ができること
特に家族が対応に迷うのが、第4段階の「抑うつ」です。
部屋の隅で泣いていたり、一日中天井を見つめていたりする親御さんを見て、つい「元気出して!」「奇跡が起きるかもしれないよ」と励ましたくなるかもしれません。
しかし、この時期の励ましは、かえって本人の孤独感を深めてしまうことがあります。
本人は今、人生の喪失と向き合い、別れの準備をしている最中です。
必要なのは、無理に元気づけることではなく、「ただそばにいて、沈黙を共有すること」。
手を握ったり、背中をさすったりして、「あなたの悲しみはわかっているよ」と態度で示すことが、一番の癒やしになります。
順番通りには進まない。行ったり来たりするのが人間
この5段階は、必ずしも順番通りに進むわけではありません。
怒っていたと思ったら否認に戻ったり、受容したと思ったらまた怒り出したり。行ったり来たりを繰り返しながら、少しずつ前に進んでいくのが自然な姿です。
「昨日は穏やかだったのに、また怒ってる…」と一喜一憂しなくても大丈夫。
「今は『怒り』の時期なんだな」「今日は『取り引き』をしているんだな」と、地図を見るように客観的に捉えるだけで、あなたの心はずっと楽になるはずです。
まとめ
親御さんの感情の爆発も、深い沈黙も、すべては「生きよう」とした証であり、人生を全うしようとする心の働きです。
そのプロセスを理解しているあなたなら、きっと最期の瞬間まで、優しく寄り添い続けることができるはずです。
最期の時を自宅で迎えたいと願うなら、一つだけ絶対に準備しておくべきことがあります。それは『誰に死亡診断書を書いてもらうか』です。警察沙汰を避けるための必須知識はこちら。

「死を受け入れるまでの5つの段階」。これを知っているだけで救われます。
キューブラー・ロスの「死の受容過程」。これは単なる学説ではなく、終末期ケアにおいて患者と家族の心を支えるための「羅針盤」となる知識です。
「今、親はどの段階だろう?」と考えながら、実際の試験問題で各段階の特徴を確認してみてください。
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