「最近、親が認知症と診断されて、デイサービス以外は家に引きこもっている」
「徘徊したら困るから、あまり外に出さないようにしている」
そんなご家族も多いかもしれません。
心配する気持ちは痛いほど分かりますが、もし親御さんが一日中テレビの前でぼんやり過ごしているなら、それはとても勿体ないことです。
実は、世界保健機関(WHO)が定めた健康の指標(ICF)では、病気の状態と同じくらい、「活動(できること)」と「参加(社会との関わり)」が重要視されています。
今回は、認知症になっても生き生きと暮らすために欠かせない、この2つのキーワードについてお話しします。
「一人で体操」と「カフェで体操」は、意味が全く違う
健康のためには運動が大事、とはよく言われます。
では、次の2つのシーンを想像してみてください。
- 自宅のリビングで、一人黙々とラジオ体操をする。
- 近所のカフェに行き、仲間とお喋りしながら体操をする。
体を使っている点(活動)では同じですが、心の健康度や満足度はどうでしょうか?
圧倒的に後者の方が楽しそうですよね。これが「参加」の力です。
「体操ができる」という能力だけでなく、「仲間の中に居場所がある」「役割がある」という実感が、人の心を元気にし、認知症の進行を緩やかにする力を持っています。
ただ身体機能を維持するだけでなく、「社会の中に飛び込んでいくこと」こそが、最高のリハビリなのです。
親を「参加」させるための最初の一歩
「でも、うちの親は出不精だし…」
そんな親御さんを外に連れ出すには、少し工夫が必要です。
1. 「認知症カフェ(オレンジカフェ)」に行ってみる
一番ハードルが低いのが「認知症カフェ」です。
ここは、認知症の人とその家族、地域の人たちが集まる交流の場です。スタッフも認知症に理解があるため、多少の失敗や物忘れがあっても誰も気にしません。
「美味しいコーヒーを飲みに行こう」と誘えば、親御さんも重い腰を上げてくれるかもしれません。
2. 「お客さん」ではなく「出番」を作る
ただ参加するだけでなく、何か役割をお願いするのも効果的です。
「昔取った杵柄で、将棋を教えてあげてよ」
「お母さんの得意な編み物を、みんなに見せてあげて」
誰かに必要とされることで、親御さんの目は輝きを取り戻します。
3. 移動の不安を解消する「福祉タクシー」
「行きたいけど足が悪いから」という場合は、「福祉タクシー」や「移送サービス」を利用しましょう。
ドア・ツー・ドアで送迎してくれるので、家族が付き添えない時でも安心して送り出せます。
『認知症カフェ』ってどんな場所? と気になった方へ。認知症になっても地域と共に生きる『共生』の考え方や、具体的な居場所の探し方について、もう少し詳しく知ってみませんか?

専門職だけでなく、商店街やご近所さんも介護の味方になります。地域全体で親御さんを見守り、役割を作っていく『地域援助』の温かい仕組みについてはこちらです。

まとめ
認知症になっても、人生は終わりではありません。
「何もできない人」になるのではなく、「助けを借りながら、社会に参加し続ける人」であり続けること。
「今日は〇〇さんと会う日だね」
そんな予定がカレンダーに増えていくことが、親御さんとあなたの幸せな未来を作ります。
『家にいると寂しいけれど、老人ホームに入るほどでもない』。そんな親御さんにぴったりの、通いの場や孤独を解消するサービスをもっと知りたい方は、こちらもご覧ください。

「カフェに通って体操をする」。これが幸せな老後の正解例です。
単に体を動かす(活動)だけでなく、カフェという場所に行く(参加)ことがなぜ重要なのか。WHOが提唱する「ICF」の考え方を知れば、介護の目標が明確になります。
「奥が深い!」と感じたあなた。ぜひ実際の試験問題で、その概念を確認してみてください。
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