「最近、お父さんの食欲がないみたい」
「食事の量は減っているのに、なぜかお腹だけぽっこり出ている気がする」
そんな様子を見て、「太ったのかな?」と軽く流していませんか?
実はそれ、脂肪ではなく、腸の中にガスや便が溜まってパンパンになっている「腹部膨満感(ふくぶぼうまんかん)」かもしれません。
高齢者にとって、この「お腹の張り」は単なる不快感にとどまらず、食欲不振や体調不良の大きな原因になります。
今回は、なぜ高齢者はお腹が張りやすいのか、その原因と、苦しさを和らげるための家庭でのケア方法についてお話しします。
なぜ、高齢者のお腹は「ガス」が溜まりやすいのか
若い頃は、おならやゲップとして自然に体外へ出せていたガス。
しかし、高齢になると以下の理由で体の中に閉じ込められやすくなります。
- 腸の動きが鈍くなる
加齢により腸のぜん動運動が弱まり、ガスや便を押し出す力が低下します。 - 空気を飲み込んでしまう(呑気症)
早食いや、入れ歯が合わないことなどが原因で、食事と一緒に大量の空気を飲み込んでしまいます。 - 腹筋が弱くなる
お腹に力を入れて「いきむ」力が弱くなり、排泄がスムーズにいかなくなります。
たかがガスと思うなかれ。お腹が張って横隔膜が押し上げられると、呼吸が苦しくなったり、心臓に負担がかかったりすることさえあるのです。
「苦しい」を取り除くための3つのガス抜きケア
お腹の張りを解消し、美味しくご飯を食べてもらうために、日々の生活でできる工夫を取り入れましょう。
1. 魔法の「の」の字マッサージ
便秘やガスの解消に一番手軽で効果的なのが、お腹のマッサージです。
親御さんに仰向けになってもらい、おへそを中心に、時計回り(ひらがなの「の」の字を書く方向)に優しくさすってあげてください。
腸の形に沿って刺激することで、ガスや便の移動を助けます。入浴中や就寝前のリラックスタイムに行うのがおすすめです。
2. 「ガスを発生させにくい」食事の工夫
お芋や豆類は食物繊維が豊富で体に良いですが、ガスが発生しやすい食材でもあります。
お腹が張っている時は少し控えめにし、消化の良い「お粥」や「煮込みうどん」、整腸作用のある「ヨーグルト」などを取り入れてみましょう。
また、食事中にあまりお喋りをさせすぎない(空気を飲み込まないようにする)のもポイントです。
3. 上体を起こして過ごす時間を増やす
一日中寝てばかりいると、腸の動きは止まってしまいます。
無理に運動しなくても、ベッドの背もたれを起こして座っている時間を増やすだけで、重力が働き、腸が刺激されます。
「テレビを見る時は座ろうか」と声をかけ、姿勢を変える習慣をつけましょう。
ガスや便を出しやすくするためには、マッサージだけでなく『座り方』も重要です。腹筋が弱っていても排泄しやすくなる、魔法のポーズをご存知ですか?

お腹の調子を整えるには、消化吸収の主役である『小腸』をいたわることが大切です。ガス溜まりを防ぎつつ、しっかり栄養を吸収するための食事術はこちらです。

注意!こんな時はすぐに病院へ
単なるガス腹ではなく、腸閉塞(イレウス)などの病気が隠れている場合もあります。
以下の症状がある場合は、迷わず医療機関を受診してください。
- 激しい腹痛がある
- 吐き気や嘔吐がある
- 便やおならが全く出ていない
まとめ
「お腹が苦しい」というのは、言葉にしにくい辛さです。
「さすってあげようか?」と手を当ててあげるスキンシップは、物理的な効果以上に、親御さんの安心感につながります。
お腹がスッキリすれば、食欲も笑顔もきっと戻ってきますよ。
『お腹が張る』以外にも、下痢や腹痛が続いている場合は要注意です。単なる消化不良だと思っていたら、実は栄養状態に深刻な影響が出ているかもしれません。

「腹部膨満感=お腹が張る感覚」。この言葉、正しく理解していますか?
ただの「お腹の張り」も、介護の現場では「腹部膨満感」という専門用語で観察・記録されます。この用語の意味を正確に知っておくことは、高齢者の体調変化を見逃さないための第一歩です。
「他の消化器症状も知りたい!」と思ったあなた。ぜひ試験問題でチェックしてみてください。
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