高齢の親御さんと一緒にレストランや役所に行ったとき、こんな経験をしてモヤッとしたことはありませんか?
「耳が遠いと言っているのに、店員さんが早口でまくし立ててくる」
「車椅子だからと、奥の席に追いやられた気がする」
「難しい書類の説明を一方的にされて、親が困惑している」
「忙しそうだし、これ以上頼んだら迷惑かな…」と我慢してしまうご家族も多いでしょう。
しかし、これからは我慢する必要はありません。
「障害(や加齢)を理由に不便を感じている人に対し、負担になりすぎない範囲で、個別に手助けをすること」
これを「合理的配慮(ごうりてきはいりょ)」といい、2024年4月から、役所だけでなくお店や会社などの民間事業者にも義務化されました(改正障害者差別解消法)。
今回は、この「合理的配慮」とは具体的に何なのか、そして私たちがどう活用すれば親御さんとの外出が快適になるのかについてお話しします。
「特別扱い」ではなく「スタートラインを揃える」こと
「合理的配慮」と聞くと、「エレベーターを設置する」といった大掛かりな工事をイメージするかもしれません。
しかし、それは「環境の整備」と呼ばれるもので、合理的配慮とは少し違います。
合理的配慮とは、「その場の工夫」です。
例えば、こんな対応が当てはまります。
- 耳が聞こえにくい人には…
- 口頭だけでなく、紙に書いて(筆談で)伝える。
- メニューや商品を指差して確認する。
- 車椅子の人には…
- 高い棚にある商品を、店員が取って手元で見せる。
- 通路が狭い場合、机や椅子を一時的に動かして通りやすくする。
- 理解がゆっくりな人には…
- 難しい専門用語を使わず、わかりやすい言葉でゆっくり説明する。
- 書類にふりがなを振る。
これらは決して「わがままを通す特別扱い」ではありません。
誰もが同じようにサービスを受けられるよう、「障害という壁を取り除くための調整」に過ぎないのです。
お店の人に『筆談』をお願いする時、どんな風に書けば伝わりやすいのでしょうか? 誰でもすぐに使える『要約筆記』のコツはこちらです。

家族が「橋渡し役」になろう
お店や役所の人も、意地悪をしているわけではなく、「どう接すればいいかわからない」だけのことがほとんどです。
そこで重要なのが、家族による「具体的なお願い」です。
「合理的配慮をお願いします!」と言うと身構えられてしまいますが、こう伝えてみてください。
- 「父は耳が遠いので、メニューを指差しながら注文を聞いてもらえますか?」
- 「母は難しい言葉が苦手なので、ゆっくり簡単な言葉で説明してもらえますか?」
具体的に「どうしてほしいか」を伝えることは、法律で認められた正当な権利です。
遠慮せずに伝えることで、店員さんも「あ、それならできます!」と快く対応してくれるはずです。
ヘルプマークと同じように、周囲に『手助けが必要』と知らせる役割を持つのが『白杖』です。視覚障害の方の外出を支えるツールの意味を、正しく知っておきませんか?

外出をサポートする便利グッズ
口頭で伝えるのが難しい場合や、さらにスムーズにコミュニケーションを取るために、便利なツールを活用しましょう。
1. バッグにつける「ヘルプマーク」
外見からは分からなくても、援助や配慮を必要としていることを知らせる「ヘルプマーク」。
これをつけているだけで、周囲の人が「何か手伝いましょうか?」と声をかけやすくなります。自治体の窓口などで無料でもらえます。
2. 書いて伝える「ブギーボード(電子メモ)」
何度も聞き返すのが申し訳ない時は、100円ショップや文具店で売っている「電子メモパッド」やホワイトボードを持ち歩きましょう。
「ここに書いてもらえますか?」と差し出すだけで、筆談がスムーズに始まります。
3. スマホが耳になる「音声文字変換アプリ」
スマートフォンの「UDトーク」や、Googleの「音声文字変換」などのアプリを使えば、相手の話した言葉がリアルタイムで画面に文字として表示されます。
役所の窓口など、説明が長い場面で威力を発揮します。
まとめ
「合理的配慮」とは、難しい法律の話ではなく、「困っている人に合わせて、やり方を変える」という、人としての温かい知恵のことです。
親御さんが街の中で困っていたら、堂々と「手伝ってください」と声を上げてください。
その一言が、誰にとっても優しい社会を作るきっかけになります。
『手伝ってもらうのは情けない』と親御さんが躊躇してしまうなら、この考え方を伝えてあげてください。道具や人の手を借りることは、諦めではなく『賢い選択』なのです。

「わかりやすい言葉で説明する」。これが法律で求められる正解です。
お店や役所での「ちょっとした気遣い」が、実は「合理的配慮」という法的な義務であることをご存知でしたか?
「どんな対応が良いとされているの?」と気になったあなた。具体的な事例問題を通して、その優しいルールを確認してみませんか?
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