街中や駅のホームで、白杖(はくじょう)を持っている人がスマートフォンを操作していたり、腕時計を見ていたりする姿を見かけたことはありませんか?
「あれ? 目が見えないんじゃないの?」
「白杖を持ってるのに、見えてるじゃん」
もしそう思ってしまったとしたら、それは大きな誤解です。そして、その視線が視覚に障害を持つ方々を苦しめていることがあります。
実は、白杖を持っている人の全員が「全く見えない(全盲)」わけではありません。
今回は、意外と知られていない白杖の役割と、もし親御さんの視力が低下した時に役立つサポートについてお話しします。
「見えにくい」人にとっても、白杖は命綱
視覚障害には、光さえ感じない「全盲」だけでなく、視野が狭かったり、ぼんやりとしか見えなかったりする「ロービジョン(弱視)」と呼ばれる状態の人も多く含まれます。
スマホの画面を目に近づければなんとか見えるけれど、足元の段差は見えない。
そんな「見えにくい」方々にとっても、白杖はなくてはならないパートナーです。
「見えにくいから」と諦めるのではなく、スマホやタブレットなどの文明の利器を使って生活を楽しむ。それは「サクセスフル・エイジング」という理想的な老後の姿でもあります。

「明るいところなら見えるけれど、薄暗いと全く見えない」。そんな「目の老化(暗順応の遅れ)」のメカニズムを知ると、白杖が必要な理由がより深く理解できます。

白杖が持つ「3つの役割」
では、白杖には具体的にどんな役割があるのでしょうか。大きく分けて3つあります。
- 安全の確保(バンパー役)
前方の障害物や段差をコツコツと叩いて確認し、ぶつかったり転落したりするのを防ぎます。 - 情報の収集(センサー役)
点字ブロックや路面の状況(土かアスファルトか)を、手先の感覚で読み取ります。 - 周囲への注意喚起(シンボル役)
これが非常に重要です。「私は目が不自由です」と周囲に知らせることで、車や自転車に注意を促したり、困っている時に声をかけてもらいやすくしたりする効果があります。
つまり、白杖は単なる歩行補助具ではなく、「周囲に配慮をお願いするSOSサイン」でもあるのです。
「恥ずかしい」と拒む親にどう勧める?
もし親御さんの目が悪くなり、一人歩きが危なっかしくなってきたら、白杖の使用を検討する時期かもしれません。
しかし、「障害者だと思われるのが嫌だ」「恥ずかしい」と拒否されることも多いでしょう。
そんな時は、「身を守るためのお守り」として勧めてみてください。
「これを持っていると、周りの人が避けてくれるからぶつかられにくいよ」
「駅員さんがすぐに気づいて手伝ってくれるよ」
最近は、折りたたみ式でバッグしまえるものや、おしゃれなデザインの白杖も増えています。
「ずっと持っていなくてもいいから、人混みや夜道だけ使ってみよう」と提案すれば、ハードルは下がります。
白杖を持つことと同じく、「手伝ってください」と声を上げることも、法的に認められた大切な権利です。障害や加齢による不便さを解消する「合理的配慮」についても知っておきませんか?

一人で出かけたい願いを叶える「同行援護」
白杖を持っても一人での外出が不安な場合は、「同行援護(ガイドヘルパー)」という障害福祉サービスを利用できます。
これは、視覚障害の専門知識を持ったヘルパーさんが外出に付き添い、代読(文字を代わりに読む)や代筆、移動のサポートをしてくれるサービスです。
「病院に行きたい」「趣味の集まりに行きたい」といった希望を叶え、引きこもりを防ぐ強力な味方になります。
まとめ
白杖を持っている人がスマホを見ていても、それは不思議なことではありません。
「見えにくいながらも、便利なツールを使って自立して生きようとしている姿」なのです。
もし街で白杖の方を見かけたら、「見えてるの?」と疑うのではなく、「何かお手伝いしましょうか?」と声をかけられる。そんな温かい社会でありたいですね。
「白杖=シンボル」。この役割、知っていましたか?
白杖には、歩くためだけでなく「周囲に視覚障害を知らせる」という重要な役割があります。
これは道路交通法でも定められた法的根拠のある知識であり、介護福祉士試験でも正解となる重要ポイントです。「へぇ、そうだったんだ!」と思ったあなた。ぜひ実際の試験問題で確認してみてください。
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