「最近、お父さんがトイレにこもることが多い」
「食欲はあるのに、なぜか体重が減ってきている」
高齢になると、ちょっとした体調の変化を「年のせい」で片付けてしまいがちです。
特にお腹の不調(下痢や腹痛)は、「冷えたのかな?」「悪いものでも食べたかな?」と様子を見てしまうことが多い症状です。
しかし、もしその不調が長く続いているなら、注意が必要です。
それは単なるお腹の風邪ではなく、腸の中で炎症が起き、体に必要な栄養が取り込めなくなる「栄養障害」のサインかもしれないからです。
今回は、難病指定されている「クローン病」などの消化器疾患を例に、お腹のトラブルと栄養状態の密接な関係についてお話しします。
腸が荒れると、体は「ガス欠」になる
私たちの体は、食べたものを胃で溶かし、小腸や大腸で栄養と水分を吸収してエネルギーに変えています。
しかし、クローン病や潰瘍性大腸炎のように、消化管に慢性の炎症や潰瘍ができる病気にかかると、この吸収システムが故障してしまいます。
腸の壁が腫れたりただれたりしているため、せっかく食べた栄養素をキャッチできず、そのまま体の外へ排出してしまうのです。
その結果、「食べているのに栄養失調になる」という怖い状態に陥ります。
これを「栄養障害」と呼びます。
特に高齢者の場合、もともと食が細くなっているところに吸収不良が重なると、あっという間に筋肉が落ち、免疫力が下がり、寝たきりのリスク(フレイル)が高まってしまいます。
「ちゃんと食べているはずなのに、なぜか痩せていく…」その原因は、胃ではなく「小腸」の吸収力低下にあるかもしれません。効率よく栄養を摂るための食事の工夫については、こちらをご覧ください。

お腹の不調を見逃さないためのチェックリスト
「ただの下痢」か「病気のサイン」か。見極めるために、以下のポイントをチェックしてみてください。
- 体重が減り続けていないか?(ダイエットしていないのに減るのは危険信号)
- 下痢や腹痛が2週間以上続いていないか?
- 便に血が混じっていないか?
- 微熱が続いていないか?
これらに当てはまる場合は、市販の整腸剤で誤魔化さず、早めに「消化器内科」を受診することが大切です。
下痢や腹痛とあわせて高齢者を悩ませるのが「お腹の張り(ガス)」です。苦しさを和らげるための「の」の字マッサージや、ガスを溜めない生活習慣についても知っておきましょう。

お腹をいたわり、栄養を確保する食事術
お腹の調子が悪い時でも、体力を落とさないためには栄養が必要です。腸に負担をかけずに栄養を摂る工夫を取り入れましょう。
1. 「低脂肪・高タンパク」な食材を選ぶ
脂っこい食事は腸への刺激が強く、負担になります。
お肉なら「鶏のささみ」や「胸肉」、魚なら「白身魚(タラやカレイ)」、そして消化に良い「豆腐」や「卵」を積極的に使いましょう。
調理法も、油を使う「揚げ物・炒め物」より、「煮る・蒸す」がおすすめです。
2. 足りない分は「栄養補助食品」で補う
「食事だけで栄養を摂るのがしんどい」という時は、無理せず文明の利器を頼りましょう。
ドラッグストアで手に入る「高栄養流動食(メイバランスなど)」や「エネルギーゼリー」は、少量で高カロリー・高タンパクを摂取できるよう設計されています。
お腹への負担も少ないので、食欲がない時の強い味方になります。
3. お腹を温める「腹巻き」習慣
腸は冷えに弱いです。物理的に温めることで血流が良くなり、働きが整います。
薄手で蒸れにくい「シルク素材の腹巻き」などをプレゼントしてみてはいかがでしょうか。
夏場の冷房対策としても、冬場の底冷え対策としても、お腹を守る基本アイテムです。
まとめ
「便」は、体からの「お便り」です。
お腹の調子が悪いということは、体が「栄養が足りないよ!うまく取り込めないよ!」と叫んでいる証拠です。
「たかがお腹」と思わず、その裏にある栄養状態にまで気を配ってあげてください。それが、親御さんの元気な体を守ることにつながります。
下痢が続くと怖いのが「脱水症状」です。しかし、高齢者は喉の渇きを感じにくくなっています。本人が「飲みたくない」と言った時の水分補給のコツについて、こちらもあわせてご覧ください。

「クローン病=栄養障害」。この知識、国家試験の正解です。
消化管の病気がなぜ全身の栄養状態に影響するのか。このメカニズムを知っていることは、高齢者の「低栄養」を防ぐケアにもつながる重要な知識です。
「病名を聞いたことはあるけど…」というあなた。ぜひ実際の試験問題で、その特徴を確認してみてください。
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