親の「昔話」を遮っていませんか?それは脳を元気にする「回想法」という魔法の時間です

「俺が若い頃はなぁ…」
「お母さんが子供の頃は、こんな便利なものなかったのよ」

実家に帰省した時、親御さんから何度も同じ「昔の自慢話」や「苦労話」を聞かされて、内心うんざりしてしまった経験はありませんか?
「その話、もう100回聞いたよ」と、つい話を遮ったり、聞き流したりしてしまうこともあるでしょう。

でも、ちょっと待ってください。
実はその「昔話をすること」自体が、高齢者の脳を活性化し、心を元気にする「回想法(かいそうほう)」という、医学的にも認められた心理療法の一つなのです。

今回は、ただの自慢話だと思っていた親の会話が持つ驚くべきパワーと、それをもっと楽しく引き出すためのテクニックについてお話しします。

目次

過去を語ることは、脳へのご馳走

なぜ、高齢者は昔話が好きなのでしょうか?
認知症が進んで「さっき食べたご飯」は忘れてしまっても、数十年も前の「子供の頃の記憶」は驚くほど鮮明に残っていることがよくあります(長期記憶の保存)。

親御さんにとって、忘れてばかりの「現在」は不安な世界です。
しかし、鮮明に覚えている「過去」の話をしている時は、自分が主役になれる輝かしい時間です。

「昔はこんなに頑張っていた」「こんな楽しいことがあった」
そうやって過去を振り返り、誰かに聞いてもらうことで、「自分の人生は悪くなかった」と自信を取り戻すことができるのです。
これは脳の血流を良くし、うつ状態の改善や認知機能の維持に大きな効果があります。

昨日のご飯は忘れるのに、なぜ何十年も前のことは鮮明に覚えているのでしょうか?その脳の不思議な仕組みを知れば、繰り返す昔話も少し違って聞こえるかもしれません。

「聞き上手」になるための3つの小道具

とはいえ、何の手掛かりもなく話を広げるのは大変です。
「回想法」のプロも使っている、記憶の扉を開けるための「魔法のアイテム」を3つご紹介します。

1. 押し入れの奥にある「古いアルバム」

言葉だけで話すよりも、視覚的な刺激があると記憶は一気に蘇ります。
次に実家に帰ったら、あえて古いアルバムを引っ張り出して、「これ、どこに行った時の写真?」と聞いてみてください。
「ああ、これはね!」と、親御さんの目の色がパッと変わる瞬間が見られるはずです。デジタル化して「デジタルフォトフレーム」に入れてプレゼントするのも良いでしょう。

2. 青春時代の「歌謡曲プレイリスト」

音楽は、瞬時にその当時の感情を呼び覚まします。
親御さんが10代〜20代の頃に流行った歌(昭和歌謡など)を、スマホや「スマートスピーカー」で流してみましょう。
「この曲、お父さんが初めてお母さんとデートした時に流れてたんだよ」なんて、意外なエピソードが飛び出してくるかもしれません。

3. 懐かしさを刺激する「昔の道具・お菓子」

「黒電話」や「足踏みミシン」、「駄菓子」など、昔懐かしいアイテムも会話のきっかけになります。
最近は、昭和の暮らしを再現した「回想法グッズ」や、当時のニュース映像が見られるDVDなども販売されています。
「昔はこれで洗濯してたのよ」と、今の便利な家電と比較しながら話すだけで、立派な脳トレになります。

とはいえ、オチのない長い話をずっと聞き続けるのは疲れてしまいますよね。そんな時は、話を遮らずに満足感を高めるプロの会話テクニック「要約」を試してみてください。

大切なのは「事実」より「共感」

話を聞くときのコツは、「否定しないこと」です。
たとえ記憶違いがあっても、「それは違うよ」と訂正する必要はありません。

大切なのは事実確認ではなく、「その時、お父さんは頑張ったんだね」「お母さんは楽しかったんだね」と、感情に共感することです。
「へぇ〜!すごいね!」「知らなかった!」と相槌を打つだけで、親御さんは満たされた気持ちになり、情緒が安定します。

まとめ

「またその話?」と遮るのをやめて、「もっと聞かせて」と言ってみてください。
親御さんの昔話は、あなたにとっても、親の知らなかった一面を知る貴重な財産になるはずです。

お茶を飲みながら、タイムマシンのような会話の旅を楽しんでみませんか?

親御さんの語る昔話は、単なる思い出話ではありません。長い人生で培われた「結晶性知能」という、若者にはない脳の力が発揮されている瞬間でもあります。高齢者の脳の強みについて、こちらもあわせてご覧ください。

「昔の写真を見ながら話す」。これが認知症ケアの正解です。
ただの世間話に見えて、実は「回想法」という専門的なアプローチを実践していることになります。
「写真や音楽を活用する」という具体的な手法は、介護福祉士の国家試験でも頻出のポイント。あなたの対応がプロレベルであることを、試験問題で確認してみましょう!
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