「もし親が認知症になったらどうしよう」
「私のことも忘れて、何もできなくなってしまうのかな」
親御さんの物忘れが増えてきたり、同じ話を繰り返すようになったりすると、どうしても悪い想像ばかりが膨らんでしまいますよね。
「認知症=何もわからなくなる怖い病気」というイメージが、まだ強く残っているからかもしれません。
ですが、安心してください。
今の日本の認知症対策は、かつてのような「隔離・管理」から、大きく方向転換しています。
2019年に国が定めた「認知症施策推進大綱」という方針には、私たち家族にとって希望となる2つのキーワードが記されています。
今回は、これからの介護の支えとなる「共生」と「予防」の本当の意味についてお話しします。
「予防」とは「絶対にならないこと」ではない
まず誤解されがちなのが「予防」です。
「脳トレをすれば絶対にならない」「サプリを飲めば大丈夫」と思っていませんか?
国が定義する「予防」とは、「絶対に認知症にならないこと」だけを指すのではありません。
「発症を遅らせること」、そして「もしなっても、進行を緩やかにして長く自分らしく暮らすこと」を含んでいます。
誰でも年をとれば体力は落ちますし、目も悪くなります。それと同じように、脳も変化します。
「なってしまったら失敗」ではなく、「なるべくゆっくり付き合っていく」。そう考え方を変えるだけで、プレッシャーはずいぶん軽くなるはずです。
「予防」のために何をすればいいか迷ったら、まずは「歯」を見直してみませんか?意外かもしれませんが、「噛むこと」は脳を守るための最強の予防策の一つです。

隠さずに生きる「共生」という考え方
もう一つのキーワードが「共生」です。
これは、認知症になった人を社会から切り離すのではなく、「認知症になっても、地域の一員として当たり前に一緒に暮らす(共に生きる)」ということです。
一昔前は、認知症になると「恥ずかしいから」と家に閉じ込めたり、すぐに施設に入れたりすることが一般的でした。
しかし、認知症になっても、できることはたくさんあります。感情も豊かに残っています。
「スーパーで買い物がしたい」「馴染みの喫茶店に行きたい」
そんな当たり前の願いを、周りのサポートを受けながら叶え続ける。それが「共生」の社会です。
家族だけで抱え込まず、「親が認知症になりまして」とオープンに話せる環境が、少しずつですが整ってきています。
「共生」と言われてもピンとこないかもしれません。実は、ただ家にいるだけでなく「社会に参加すること」こそが、認知症の進行を抑える特効薬になるのです。詳しくはこちらをご覧ください。

孤立を防ぎ、共生するための「ツールと場所」
では、具体的にどうすれば「共生」できるのでしょうか。家族の負担を減らしつつ、親御さんの社会参加を助けるサービスやツールを活用しましょう。
1. 地域の居場所「認知症カフェ(オレンジカフェ)」
「共生」を体感できる一番の場所が「認知症カフェ」です。
認知症の方本人やその家族、専門職、地域住民が気軽に集まり、お茶を飲みながら交流できる場所です。
「うちの親だけじゃないんだ」と知るだけで、家族の孤独感は消えます。自治体の広報誌やホームページで探してみてください。
2. もしもの時のお守り「見守りGPS・QRコードシール」
「外に出してあげたいけど、迷子が心配」という場合は、テクノロジーに頼りましょう。
靴や杖に取り付ける「小型GPS」や、爪に貼れる「身元確認用QRコードシール」があれば、万が一徘徊してしまっても、早期発見につながります。
「閉じ込める」のではなく、「安全に外出できる準備をする」ことが、共生への第一歩です。
3. 声でつながる「コミュニケーションロボット」
家の中での話し相手として、「おしゃべりロボット」や「スマートスピーカー」も有効です。
何度も同じ話をしても、ロボットなら嫌な顔ひとつせず聞いてくれます。
「誰かと話す」ことは脳への最高の刺激になり、進行予防(予防)にもつながります。
認知症カフェの他にも、地域にはあなたを支える「専門のチーム」が待機しています。初期の相談から日々の見守りまで、頼れる存在を知っておくだけで安心感が違います。

まとめ
認知症は、特別な人がなる病気ではありません。誰もがなる可能性がある、身近なものです。
「なってしまったらどうしよう」と怯えるのではなく、「なっても大丈夫なように、地域の仲間を見つけておこう」。
そんな前向きな準備が、あなたと親御さんの未来を明るく照らしてくれます。
「認知症予防=ならないこと」だと思っていませんでしたか?
実は国の定義では「発症を遅らせる」「進行を緩やかにする」ことも予防に含まれます。この「共生と予防」の考え方は、今の日本を支える最重要テーマとして、介護福祉士試験でも必ず問われる知識です。
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