「年だから仕方ない」と諦めるのが一番の老化です。幸せな老後を決める「サクセスフル・エイジング」という考え方

「耳が遠くなって、みんなとの会話に入れないから、もう集まりには行かない」
「膝が痛いから、旅行はもういいや」

親御さんから、そんな寂しい言葉を聞いたことはありませんか?
年を重ねれば、どうしても身体の機能は衰えていきます。今まで当たり前にできていたことができなくなるのは、辛く、自信を失うきっかけになりがちです。

しかし、体が衰えたら、楽しみも諦めなければならないのでしょうか?
答えは「NO」です。

実は、介護や福祉の世界には「サクセスフル・エイジング(幸福な老い)」という素敵な言葉があります。
今回は、老いを嘆くのではなく、工夫して楽しみ続けるための心の持ち方についてお話しします。

目次

「できない」を数えるのではなく「工夫」を楽しむ

サクセスフル・エイジングとは、単に病気にならないことや、長生きすることだけを指すのではありません。
たとえ体に不調があっても、「生きがいを持ち、環境に適応しながら、人生を満足して過ごすこと」です。

例えば、耳が遠くなった時、二通りの反応があります。

  1. 「もう聞こえないから、人付き合いをやめる」
  2. 補聴器をつけて、新しい趣味のパソコン教室に通い始める

どちらが「幸せな老後」に近いかは、一目瞭然ですよね。
前者は「老い=諦め」と捉えていますが、後者は「老い=変化」と捉え、便利な道具を使ってその変化を乗り越えようとしています。

この「できなくなった部分を道具や知恵で補い(補償)、自分のやりたいことを選んで集中する(選択的最適化)」姿勢こそが、幸福な老後を掴む鍵なのです。

「年だから」と諦める必要はありません。実は、体力は落ちても「脳の力(経験知)」は還暦を過ぎてからさらに伸びることをご存知ですか?

親の「やりたい」を復活させる魔法の道具たち

もし親御さんが何かを諦めかけていたら、「もう無理だね」と同意するのではなく、「こうすればできるかもよ?」と新しい方法を提案してあげてください。

1. 耳が遠いなら「最新の集音器・補聴器」

「補聴器は年寄りくさい」と敬遠する方もいますが、最近はワイヤレスイヤホンのようなスタイリッシュなデザインのものや、首にかけるタイプの「集音器」も増えています。
「これならカッコいいし、テレビの音もよく聞こえるよ」とプレゼントすれば、ふさぎ込んでいた気持ちも明るくなるかもしれません。

2. 目が見えにくいなら「タブレット・拡大鏡」

「新聞の字が小さくて読めない」という悩みには、「ハズキルーペ」のような拡大鏡はもちろん、文字を自由に大きくできる「タブレット」が最強の味方です。
紙の本は読めなくても、電子書籍なら読める。それだけで、世界はまた大きく広がります。

3. 足が痛いなら「杖・シルバーカー」

「杖をつくなんて格好悪い」というプライドが、外出を妨げていることもあります。
そんな時は、登山用のトレッキングポールのような「ウォーキングポール」や、おしゃれなデザインの「シルバーカー」を提案してみましょう。
「リハビリのため」ではなく「ファッションの一部」として取り入れることで、外出のハードルが下がります。

道具を使って身体の不自由さを補ったら、次は「心の張り合い」を見つける番です。定年後の新しい役割や趣味の探し方については、こちらをご覧ください。

まとめ

「サクセスフル・エイジング」とは、スーパーおじいちゃん・おばあちゃんになることではありません。
今の自分の体の状態を受け入れ、その中で最大限に楽しむ方法を見つけることです。

「パソコン教室に通い始めたよ」
そんなふうに目を輝かせる親御さんの姿こそが、私たち家族にとっても一番の「サクセス(成功)」なのかもしれません。

サクセスフル・エイジングのゴールは「健康になること」そのものではなく、「健康になって人生を楽しむ(社会に参加する)こと」です。生きる喜びを取り戻すための視点について、詳しくはこちらをどうぞ。

「補聴器をつけてパソコン教室へ」。この前向きな姿勢が正解です。
記事の中で紹介したエピソードは、実は介護福祉士の国家試験で「サクセスフル・エイジングの適切な例」として出題されたものです。
「幸せな老い」とはどういう状態を指すのか。試験問題を通して、その定義を再確認してみませんか?
👉 【挑戦!】実際の試験問題を見てみる

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