久しぶりに実家に帰ったとき、親御さんが「ペットボトルの蓋が開けにくい」と言って渡してきたり、階段を上るだけでゼーゼーと息切れしていたりする姿を見て、ハッとしたことはありませんか?
「年をとれば、力も弱くなるし体力も落ちるもの」
そう思って見過ごしてしまいがちですが、実はその小さな変化こそが、将来の「寝たきり」や「要介護」につながる入り口かもしれません。
高齢者の体は、病気と健康の間を行ったり来たりしています。
今回は、要介護状態になる一歩手前のサインである「フレイル」や、長年の習慣が引き起こす病気について、家族が知っておきたいチェックポイントをお伝えします。
「ペットボトルの蓋が開かない」は筋力低下のサイン
最近よく耳にするようになった「フレイル(虚弱)」という言葉。
これは、健康な状態と、介護が必要な状態のちょうど「中間」にいる状態を指します。
この段階で適切な対策をとれば、また健康な状態に戻ることができますが、放置すればそのまま要介護状態へと坂道を転げ落ちてしまう……そんな分岐点です。
握力は「全身の健康」を映す鏡
フレイルの兆候として、特にわかりやすいのが「握力の低下」です。
筋肉が減って体が弱っていく状態を「サルコペニア(筋肉減弱症)」と呼びますが、その診断基準の一つに握力が使われています。
「最近、瓶の蓋が開けられない」
「雑巾を絞る力が弱くなった」
もし親御さんがそんなことを言っていたら、それは腕の力だけでなく、全身の筋力が落ちているサインかもしれません。
握力が弱まると、転んだ時にとっさに手をついて体を守ることができず、骨折してそのまま寝たきり……というケースも少なくありません。たかが握力、と侮れないのです。
息切れの原因は「タバコ肺」かも?今からでも禁煙を
もう一つ、注意したいのが「息切れ」です。
「ちょっと動いただけで息が上がるのは、運動不足のせいだろう」と思いがちですが、もし親御さんに喫煙歴があるなら、「COPD(慢性閉塞性肺疾患)」という病気かもしれません。
これは別名「タバコ肺」とも呼ばれ、長年の喫煙によって肺が壊れてしまう病気です。
壊れた肺は戻らないが、進行は止められる
残念ながら、一度壊れてしまった肺の組織は元には戻りません。しかし、「禁煙」をすることで、病気の進行を遅らせ、呼吸の苦しさを和らげることは可能です。
「今さらタバコをやめても遅いよ」と諦めている親御さんもいるかもしれませんが、決してそんなことはありません。
これ以上苦しい思いをしないために、今日からの禁煙には大きな意味があります。
お酒とタバコは「血管」をボロボロにする
高齢になると、楽しみの一つとしてお酒やタバコを嗜む方も多いでしょう。
「好きなことを奪うのは可哀想」と、家族としても注意しにくいものですが、命に関わるリスクについては知っておく必要があります。
- タバコ: 血管を縮めて動脈硬化を進め、「心筋梗塞」の最大のリスク要因になります。
- 多量のお酒: 血圧を上げ、「脳卒中(脳出血・脳梗塞)」のリスクを高めます。また、アルコール自体が脳を萎縮させ、認知症のリスクを高めることもわかっています。
「ストレス発散だから」といっても、それが原因で倒れてしまっては元も子もありません。
完全にやめるのが難しくても、量を減らす、休肝日を作るなど、少しずつ見直すきっかけを作ってみてはいかがでしょうか。
まとめ:健診で「フレイル」をチェックしよう
親御さんの健康を守るためには、「年のせい」で片付けないことが大切です。
75歳以上の方が受ける「後期高齢者健康診査」では、こうしたフレイルのチェックも重要な項目として組み込まれています。
「面倒くさいから行かない」という親御さんも多いですが、今の体の状態を客観的に知る良い機会です。
「お父さんの握力、今はどれくらいあるのかな? 測ってもらいに行こうよ」
そんなふうに誘って、ぜひ健診を受けてみてください。早期発見が、自立した生活を長く続ける鍵になります。
