虐待の疑いがあれば「即通報」。様子見や独自捜査はNG行動

問24

Aさん(80歳女性、 要介護2、 認知機能は低下していない)は、長男と二人暮らしで、通所介護を利用している。その通所介護事業所の職員から、入浴時にAさんの体に直径3cmくらいのあざが数か所あることを見つけ、 Aさんが「長男に怒鳴られて、叩かれた」と話していたことについての相談があった。高齢者虐待防止法を踏まえた介護支援専門員の対応として、 より適切なものはどれか。2つ選べ。

  1. 一時的なものと考え、 しばらく様子を見ることにする。
  2. 速やかに市町村に通報する。
  3. 直ちにAさんが長期間養護を受けるために必要となる居室を確保するための措置を決める。
  4. 長男がいない場で、Aさんと今後の介護サービスや対応について話をする機会を設ける。
  5. 長男に対し、なぜ怒鳴ったり叩いたりしたのかを厳しく問いただす。
目次

正解は2・4。通報義務と安全な聞き取り

高齢者虐待防止法では、介護従事者には虐待を発見した際の「通報義務」が課せられています。
「確証がないから」と躊躇する必要はありません。

「疑い」だけで通報していい(選択肢2)

速やかに市町村に通報する。

この記述は適切です。

法律上、虐待を受けたと思われる高齢者を発見した場合は、速やかに市町村に通報しなければなりません。
「虐待の事実確認」は市町村の仕事です。
通報は告げ口ではなく、高齢者と養護者(家族)の両方を救うための第一歩です。

本音が言える環境を作る(選択肢4)

長男がいない場で、Aさんと今後の介護サービスや対応について話をする機会を設ける。

この記述は適切です。

虐待を受けている人は、虐待者(長男)の前では本心を話せません。
恐怖心から「転んだだけ」と嘘をつくこともあります。
心理的な安全を確保し、本人の意思を確認するために、分離した環境での面接は鉄則です。

誤答は1・3・5。放置と越権行為

誤りの選択肢は、事態を悪化させる「様子見」や、権限を越えた「措置の決定」「追及」です。

様子見は命取り(選択肢1)

一時的なものと考え、 しばらく様子を見ることにする。

この記述は不適切です。

虐待対応において「様子見」は最も危険な選択です。
その間に事態が深刻化し、命に関わる事態になることもあります。
専門職としてリスクを過小評価してはいけません。

措置を決めるのは「市町村」(選択肢3)

直ちにAさんが長期間養護を受けるために必要となる居室を確保するための措置を決める。

この記述は不適切です。

虐待対応としての「措置(やむを得ない事由による入所措置など)」を決定する権限は、市町村にあります。
ケアマネジャーが独断で決めることはできません。
まずは市町村と連携し、指示を仰ぐのが手順です。

問いただすのは逆効果(選択肢5)

長男に対し、なぜ怒鳴ったり叩いたりしたのかを厳しく問いただす。

この記述は不適切です。

虐待者を厳しく責めると、逆上して高齢者への虐待がエスカレートしたり、介護サービスを拒否して孤立したりするリスクがあります。
虐待者への対応は慎重に行う必要があり、これも市町村や地域包括支援センターの役割です。

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