「お母さん、もっとお世話の充実した施設に移ろう」
「お金のことは心配しなくていいから」
認知症が進み、今の環境では生活が難しくなってきた親御さん。
子供としては、安全安心な場所で暮らしてほしいと願うのは当然のことです。
しかし、その提案に対し、親御さんがうつむいてこう呟いたら、あなたはどうしますか?
「ペットと一緒に暮らせなくなるのは嫌だ……」
夫に先立たれた後、孤独を埋めてくれたオウムや猫、犬。
高齢者にとって、ペットは単なる動物ではありません。生きる張り合いであり、心の支えであり、かけがえのない家族そのものです。
今回は、施設入居の際に必ずぶつかる「ペット問題」と、親御さんの「心」を守るために家族ができることについてお話しします。
ペットを取り上げると、認知症が一気に進む?
「命には代えられないでしょ」
「向こうに行けば、お友達もできるよ」
家族はつい、合理的な説得をしてしまいがちです。
しかし、無理やりペットと引き離すことは、親御さんから「生きる役割」と「愛情の対象」を奪うことになります。
その喪失感は計り知れません。
「あの子(ペット)がいないなら、もうどうでもいい」と生きる意欲を失い、ふさぎ込み、結果として認知症が一気に進行してしまうケース(ペットロス)も少なくないのです。
「安全な施設に入れたけれど、心は死んでしまった」
そんな悲しい結末を避けるために、私たちは「安全」と同じくらい「生きがい」を尊重する必要があります。
「ペット可」の施設は、実は増えている
「でも、ペットと入れる施設なんてないでしょ?」
そう諦める前に、もう少しだけ探してみませんか?
近年、アニマルセラピーの効果が見直され、「ペット同伴可(ペット共生型)」の特別養護老人ホームやグループホームが少しずつ増えてきています。
- 個室で一緒に飼える施設
- 施設の看板犬・看板猫として迎え入れてくれる施設
- 敷地内にペットホテルが併設されている施設
ケアマネジャーや入居相談員に、「母はペットが生きがいなんです。なんとかなりませんか?」と熱意を持って相談してみてください。
多少遠方になったとしても、ペットと離れずに済むなら、親御さんはそちらを選ぶかもしれません。
実際にペットと暮らせる施設にはどのような種類があるのでしょうか? 『認知症になってもペットと一緒にいたい』という願いを叶えるための、具体的な施設の選び方はこちらをご覧ください。

どうしても一緒に行けない時の「次善の策」
どうしても条件に合う施設が見つからない場合でも、バッサリと切り捨てるのではなく、親御さんの気持ちに寄り添った「妥協点」を探りましょう。
1. 家族が引き取り、頻繁に連れて行く
「私が責任を持って育てるからね」と約束し、施設の許可を得て、面会のたびに連れて行きます。
「週末にはあの子に会える」という目標が、生活のメリハリになります。
2. 「見守りカメラ」でいつでも会えるようにする
引き取ったペットの様子をスマホやタブレットで見られるようにします。
「今、ご飯食べてるよ」と動画を見せるだけでも、安心感につながります。
3. ロボットペットという選択肢も
本物のペットには敵いませんが、最近の「セラピー用ロボットペット」は、鳴き声や温もり、反応が非常にリアルです。
「オウムのピーちゃんの弟分だよ」といって渡すことで、寂しさが紛れることもあります。
もしペット可の施設が見つからなくても、諦めないでください。『自宅に施設のようなケアを呼び込む』ことで、ペットとの暮らしを最期まで続ける方法があります。

まとめ
親御さんの「嫌だ」という言葉は、わがままではありません。
「最後まで、私らしく生きたい」という、尊厳をかけた訴えです。
「安全」を優先するあまり、親御さんの「心」を置き去りにしていないか。
決定を下す前に、もう一度だけ立ち止まって考えてみてください。
『ペットと離れるなら死んだほうがマシ』という激しい言葉の裏には、住み慣れた環境や役割を失うことへの深い喪失感があります。引っ越しを拒む親御さんの心理を、もう一歩深く理解してみませんか?

「意思を尊重しましょう」。介護のプロなら、娘さんにこう声をかけます。
安全のために転居が必要な状況でも、まずは利用者の「ペットといたい」という気持ちを受け止める。これが介護福祉士に求められる「受容と尊厳の保持」です。
「効率よりも大切なものがある」と気づかせてくれる良問。ぜひ実際の問題で、その精神に触れてみてください。
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