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第36回(令和5年度)介護福祉士国家試験 午後問題・解答・解説

介護の基本

問題64
介護を取り巻く状況に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 1 ダブルケアとは,夫婦が助け合って子育てをすることである。
  • 2 要介護・要支援の認定者数は,介護保険制度の導入時から年々減少している。
  • 3 家族介護を支えていた家制度は,地域包括ケアシステムによって廃止された。
  • 4 要介護・要支援の認定者のいる三世代世帯の構成割合は,介護保険制度の導入時から年々増加している。
  • 5 家族が担っていた介護の役割は,家族機能の低下によって社会で代替する必要が生じた。

答え:5

解説
かつては家族が担うことが当然とされた介護ですが、核家族化の進行、女性の社会進出、地域のつながりの希薄化といった「家族機能の低下」(社会環境の変化)により、家族だけで介護を担うことが困難になりました。このため、介護を社会全体で支え合う仕組み(介護の社会化)が必要となり、介護保険制度などが創設されました。
1のダブルケアは、子育てと親(高齢者)の介護を同時に行うことを指します。2の認定者数は、高齢化の進展により年々「増加」しています。3の家制度は、地域包括ケアシステムではなく、第二次世界大戦後の日本国憲法や民法の改正によって廃止されました。4の三世代世帯の割合は、核家族化により「減少」しています。


問題65
介護福祉士に関する次の記述のうち,適切なものを1つ選びなさい。

  • 1 傷病者に対する療養上の世話又は診療の補助を業とする。
  • 2 喀痰吸引を行うときは市町村の窓口に申請する。
  • 3 業務独占の資格である。
  • 4 資格を更新するために5年ごとに研修を受講する。
  • 5 信用を傷つけるような行為は禁止されている。

答え:5

解説
「社会福祉士及び介護福祉士法」(第45条)において、「信用失墜行為の禁止」が定められています。介護福祉士は、専門職としての社会的な信用を傷つけるような行為をしてはならないと規定されています。
1は看護師(保健師助産師看護師法)の業務内容です。2の喀痰吸引等の「登録特定行為事業者」の登録は、市町村ではなく都道府県に行います。3は「名称独占」の資格であり、医師や弁護士のような「業務独占」ではありません。4の介護福祉士資格には、5年ごとの更新研修のような制度はありません。


問題66
施設利用者の個人情報の保護に関する次の記述のうち,最も適切なものを 1つ選びなさい。

  • 1 職員がすべての個人情報を自由に閲覧できるように,パスワードを共有する。
  • 2 個人情報を記載した書類は,そのまま新聞紙と一緒に捨てる。
  • 3 個人情報保護に関する研修会を定期的に開催し,意識の向上を図る。
  • 4 職員への守秘義務の提示は,採用時ではなく退職時に書面で行う。
  • 5 利用者の音声情報は,同意を得ずに使用できる。

答え:3

解説
個人情報保護法に基づき、事業所には個人情報を安全に管理する義務があります。その一環として、職員に対して個人情報保護の重要性や適切な取り扱い方法についての研修を定期的に実施し、組織全体の意識向上を図ることは、非常に重要な取り組みです。
1(パスワード共有)や2(不適切な廃棄)は、重大な情報漏洩につながる不適切な行為です。4の守秘義務は、採用時に説明し、契約を結び、退職後も継続することを周知させなければなりません。5の音声情報も個人情報であり、同意なく使用することはできません。


問題67
個別性や多様性を踏まえた介護に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 1 その人らしさは,障害特性から判断する。
  • 2 生活習慣は,生活してきた環境から理解する。
  • 3 生活歴は,成人期以降の情報から収集する。
  • 4 生活様式は,同居する家族と同一にする。
  • 5 衣服は,施設の方針によって統一する。

答え:2

解説
食事の好み、睡眠時間、入浴の頻度、日課といった「生活習慣」は、その人が生まれ育ち、長年生活してきた環境(家族構成、地域の文化、職業など)によって形成されます。その人らしさを尊重した個別ケアを行うためには、その背景にある生活環境を理解することが不可欠です。
1(その人らしさ)は、障害特性だけでなく、生活歴や価値観など全体から判断します。3(生活歴)は、成人期だけでなく幼少期からの情報も重要です。4や5は、個人の生活様式や好みを無視し、家族や施設の方針を押し付ける不適切な対応です。


問題68
Aさん(48歳,女性,要介護1)は,若年性認知症(dementia with early onset)で,夫,長女(高校1年生)と同居している。Aさんは家族と過ごすことを希望し,小規模多機能型居宅介護で通いを中心に利用を始めた。Aさんのことが心配な長女は,部活動を諦めて学校が終わるとすぐに帰宅していた。ある日,夫が,「長女が,学校の先生たちにも相談しているが,今の状況をわかってくれる人がいないと涙を流すことがある」と介護福祉職に相談をした。夫の話を聞いた介護福祉職の対応として,最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 1 長女に,掃除や洗濯の方法を教える。
  • 2 家族でもっと頑張るように,夫を励ます。
  • 3 同じような体験をしている人と交流できる場について情報を提供する。
  • 4 介護老人福祉施設への入所の申込みを勧める。
  • 5 介護支援専門員(ケアマネジャー)に介護サービスの変更を提案する。

答え:3

解説
長女は、母親の病気と介護(ヤングケアラー)という状況を抱え、「わかってくれる人がいない」と孤立感を深めています。この状況で最も必要なのは、長女の心理的な負担を軽減することです。若年性認知症の家族会やヤングケアラーの支援団体など、同じような体験をしている人(ピア)と交流し、思いを共有できる場についての情報を提供することが、孤立の解消につながる最も適切な支援です。
1や2は、長女や家族の負担をさらに増やす不適切な対応です。4は家族の希望に反します。5は、Aさん自身のサービスの問題ではなく、長女の支援が求められているため不適切です。


問題69
Bさん(61歳,男性,要介護3)は,脳梗塞(cerebral infarction)による 左片麻痺がある。週 2回訪問介護(ホームヘルプサービス)を利用し,妻(58歳)と二人暮らしである。自宅での入浴が好きで,妻の介助を受けながら,毎日入浴している。サービス提供責任者に,Bさんから,「浴槽から立ち上がるのがつらくなってきた。何かいい方法はないですか」と相談があった。Bさんへのサービス提供責任者の対応として,最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 1 Bさんがひとりで入浴できるように,自立生活援助の利用を勧める。
  • 2 浴室を広くするために,居宅介護住宅改修費を利用した改築を勧める。
  • 3 妻の入浴介助の負担が軽くなるように,行動援護の利用を勧める。
  • 4 入浴補助用具で本人の力を生かせるように,特定福祉用具販売の利用を勧める。
  • 5 Bさんが入浴を継続できるように,通所介護(デイサービス)の利用を勧める。

答え:4

解説
Bさんのニーズは「自宅での入浴」を継続したいが、「浴槽から立ち上がるのがつらい」という具体的な課題です。この課題を解決するためには、介護保険の「特定福祉用具販売」を利用し、バスボード(浴槽の縁に渡す板)やシャワーチェア、浴槽内いす、浴槽用手すりなどの入浴補助用具を活用する方法があります。これらはBさんの残存能力を活かし、安全に立ち上がる動作を補助します。
1(自立生活援助)や3(行動援護)は、障害福祉サービスであり、Bさんのニーズとは異なります。2(改築)は、課題に対して大掛かりすぎます。5(通所介護)は、Bさんの「自宅での入浴が好き」という希望に沿っていません。


問題70
社会奉仕の精神をもって,住民の立場に立って相談に応じ,必要な援助を行い,社会福祉の増進に努める者として,適切なものを1つ選びなさい。

  • 1 民生委員
  • 2 生活相談員
  • 3 訪問介護員(ホームヘルパー)
  • 4 通所介護職員
  • 5 介護支援専門員(ケアマネジャー)

答え:1

解説
設問の記述は、民生委員法に定められた「民生委員」の職務(役割)をそのまま示しています。民生委員は、厚生労働大臣から委嘱された民間のボランティア(非常勤の地方公務員)であり、地域住民の身近な相談相手として、福祉事務所や関係機関への橋渡し役を担っています。
2、3、4、5は、それぞれの施設や事業所に所属する専門職であり、民生委員とは役割や立場が異なります。


問題71
3階建て介護老人福祉施設がある住宅地に,下記の図記号に関連した警戒レベル3が発令された。介護福祉職がとるべき行動として,最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 1 玄関のドアを開けたままにする。
  • 2 消火器で,初期消火する。
  • 3 垂直避難誘導をする。
  • 4 利用者家族に安否情報を連絡する。
  • 5 転倒の危険性があるものを固定する。

答え:3

解説
(※図記号は、国土交通省が定める「土砂災害」のハザードマップ記号を想定しています。)
「土砂災害」の警戒レベル3は「高齢者等避難」であり、避難行動を開始すべき段階です。土砂災害の危険がある場合、3階建ての施設において最も優先されるべき行動は、土砂が流れ込む危険性の高い1階(低層階)から、危険性の低い2階や3階(高層階)へ利用者を移動させる「垂直避難」です。
1は危険です。2は火災時、5は地震時の対応です。4の家族への連絡は、利用者の安全確保(避難誘導)が完了した後に行うべきことであり、最優先の行動ではありません。


問題72
次の記述のうち,介護における感染症対策として,最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 1 手洗いは,液体石鹸よりも固形石鹸を使用する。
  • 2 配膳時にくしゃみが出たときは,口元をおさえた手でそのまま行う。
  • 3 嘔吐物の処理は,素手で行う。
  • 4 排泄の介護は,利用者ごとに手袋を交換する。
  • 5 うがい用のコップは,共用にする。

答え:4

解説
スタンダードプリコーション(標準予防策)の観点から、排泄物などの体液には感染源が含まれている可能性があるとみなし、介護者は手袋を着用します。そして、利用者Aのケアで使用した手袋で利用者Bのケアを行うと、感染を広げてしまう(交差感染)ため、必ず「利用者ごと」に手袋を交換する必要があります。
1は、共用の固形石鹸は表面に菌が付着する恐れがあるため、液体石鹸が推奨されます。2は、手で口元をおさえた場合、その手は汚染されているため、必ず手洗いをしてから配膳に戻ります。3は、ノロウイルスなどの感染リスクが非常に高いため、素手での処理は厳禁です(手袋、マスク、エプロン着用)。5は、共用してはいけません。


問題73
介護福祉士が行う服薬の介護に関する次の記述のうち,最も適切なものを 1つ選びなさい。

  • 1 服薬時間は,食後に統一する。
  • 2 服用できずに残った薬は,介護福祉士の判断で処分する。
  • 3 多種類の薬を処方された場合は,介護福祉士が一包化する。
  • 4 内服薬の用量は,利用者のその日の体調で決める。
  • 5 副作用の知識をもって,服薬の介護を行う。

答え:5

解説
介護福祉士は、服薬の介助を行う際、薬の主な作用や「副作用」(例えば、眠気、ふらつき、便秘、下痢など)についての基本的な知識を持っておく必要があります。これにより、服薬後の利用者の状態変化にいち早く気づき、医療職(看護師、医師、薬剤師)に正確に報告・連携することができます。
1(服薬時間)、2(残薬の処分)、4(用量の決定)は、すべて医師や薬剤師が判断する医療的な領域であり、介護福祉士が判断してはいけません。3の「一包化」は、薬剤師が行う「調剤」行為にあたるため、介護福祉士は絶対に行ってはいけません。

コミュニケーション技術

問題74
Cさん(85歳,女性,要介護3)は,介護老人保健施設に入所しており,軽度の難聴がある。数日前から,職員は感染症対策として日常的にマスクを着用して勤務することになった。ある日,D介護福祉職がCさんの居室を訪問すると,「孫が絵を描いて送ってくれたの」と笑いながら絵を見せてくれた。D介護福祉職はCさんの言動に共感的理解を示すために,意図的に非言語コミュニケーションを用いて対応した。このときのD介護福祉職のCさんへの対応として,最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 1 「よかったですね」と紙に書いて渡した。
  • 2 目元を意識した笑顔を作り,大きくうなずいた。
  • 3 「お孫さんの絵が届いて,うれしかったですね」と耳元で話した。
  • 4 「私もうれしいです」と,ゆっくり話した。
  • 5 「えがとてもじょうずです」と五十音表を用いて伝えた。

答え:2

解説
この問題の鍵は「非言語コミュニケーションを用いて」という点です。Cさんは「笑いながら」話しており、うれしい気持ちが表れています。D介護福祉職はマスクを着用しているため口元は見えませんが、目元を意識した笑顔(目の表情)を作り、大きくうなずく(相槌)ことで、言葉を使わずにCさんのうれしい気持ちに共感していることを伝えることができます。
1、3、4、5は、筆談、言語(発話)、五十音表など、いずれも「言語コミュニケーション」を用いた対応であるため、適切ではありません。


問題75
利用者の家族との信頼関係の構築を目的としたコミュニケーションとして,最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 1 家族に介護技術を教える。
  • 2 家族に介護をしている当事者の会に参加することを提案する。
  • 3 家族から介護の体験を共感的に聴く。
  • 4 家族に介護を続ける強い気持ちがあるかを質問する。
  • 5 家族に介護保険が使える範囲を説明する。

答え:3

解説
信頼関係(ラポール)を構築するための基本は、相手を理解し、受け入れることです。家族も介護の疲れや不安、葛藤を抱えています。介護福祉職が、家族が日々感じていることや介護の体験談を「共感的に聴く」(傾聴・受容)ことで、家族は「自分のことをわかってくれた」と感じ、専門職への信頼感を抱くことができます。
1、2、5は情報提供や指導であり、信頼関係が構築された「後」に行うと有効ですが、信頼関係を「築く」ための最初のステップとしては3が最適です。4は家族の気持ちを尋問するような形になり、信頼関係を損なう可能性があります。


問題76
Eさん(70歳,女性)は,脳梗塞(cerebral infarction)の後遺症で言語に障害がある。発語はできるが,話したいことをうまく言葉に言い表せない。聴覚機能に問題はなく,日常会話で使用する単語はだいたい理解できるが,単語がつながる文章になるとうまく理解できない。ある日,Eさんに介護福祉職が,「お風呂は,今日ではなくあしたですよ」と伝えると,Eさんはしばらく黙って考え,理解できない様子だった。このとき,Eさんへの介護福祉職の対応として,最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 1 「何がわからないのか教えてください」と質問する。
  • 2 「お風呂,あした」と短い言葉で伝える。
  • 3 「今日,お風呂に入りたいのですね」と確かめる。
  • 4 「あしたがお風呂の日で,今日は違いますよ」と言い換える。
  • 5 「お・ふ・ろ・は・あ・し・た」と1音ずつ言葉を区切って伝える。

答え:2

解説
Eさんは、発語の障害(運動性失語)と、文章の理解の障害(感覚性失語)の両方があると推測されます。介護福祉職が伝えた「お風呂は,今日ではなくあしたですよ」という「文章」が理解できなかったため、Eさんが理解できる「単語」レベルまで情報を単純化する必要があります。「お風呂」と「あした」というキーワードを短い言葉で伝えることで、Eさんは意味を理解しやすくなります。
1は、Eさんが「話したいことをうまく言葉に言い表せない」ため、答えることが困難です。3は、介護福祉職の推測であり、事実と異なる可能性があります。4は、言い換えていますが、依然としてEさんが理解しにくい「文章」です。5は、聴覚障害(難聴)のある人への対応であり、失語症のEさんには適切ではありません。


問題77
Fさん(70歳,女性)は,最近,抑うつ状態(depressive state)にあり,ベッドに寝ていることが多く,「もう死んでしまいたい」とつぶやいていた。Fさんの発言に対する,介護福祉職の言葉かけとして,最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 1 「落ちこんだらだめですよ」
  • 2 「とてもつらいのですね」
  • 3 「どうしてそんなに寝てばかりいるのですか」
  • 4 「食堂へおしゃべりに行きましょう」
  • 5 「元気を出して,頑張ってください」

答え:2

解説
「死んでしまいたい」という利用者の発言は、深刻な心の痛み(つらさ)の表れです。このような発言に対して最も重要なのは、その発言を否定したり、安易に励ましたりするのではなく、まずはその「つらい」という気持ちをそのまま受け止め、共感することです。「とてもつらいのですね」という言葉かけは、利用者の気持ちを受容し、寄り添う姿勢を示すものです。
1と5は、利用者のつらい気持ちを否定する「不適切な励まし」です。3は、利用者を問い詰める(非難する)ような聞き方であり不適切です。4は、利用者の気持ちを受け止める前に話題をそらしており、拒絶されたと感じさせてしまう可能性があります。


問題78
Gさん(70歳,女性,要介護1)は,有料老人ホームに入居していて,網膜色素変性症(retinitis pigmentosa)による夜盲がある。ある日の夕方,Gさんがうす暗い廊下を歩いているのをH介護福祉職が発見し,「Hです。大丈夫ですか」と声をかけた。Gさんは,「びっくりした。見えにくくて,わからなかった…」と暗い表情で返事をした。このときのGさんに対するH介護福祉職の受容的な対応として,最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 1 「驚かせてしまいましたね。一緒に歩きましょうか」
  • 2 「明るいところを歩きましょう。電気をつけたほうがいいですよ」
  • 3 「見えにくくなってきたのですね。一緒に点字の練習を始めましょう」
  • 4 「白杖があるかを確認しておきます。白杖を使うようにしましょう」
  • 5 「暗い顔をしないでください。頑張りましょう」

答え:1

解説
Gさんは、夜盲(暗いところで見えにくい)という特性により、うす暗い廊下で不安を感じていたところに声をかけられ、「びっくりした」と述べています。「受容的な対応」とは、まずGさんのその瞬間の気持ち(驚き、不安)を受け止めることです。1は、まず介護福祉職が「驚かせた」ことを謝罪・受容し、その上でGさんの不安に寄り添う「一緒に歩きましょうか」という提案をしており、最も適切です。
2と4は、「~しましょう」「~たほうがいい」という指示・指導的な対応であり、Gさんの気持ちを受容しているとは言えません。3は、点字という急な提案であり、Gさんの今の気持ちからかけ離れています。5は、Gさんの「暗い表情」を否定する不適切な対応です。


問題79
事例検討の目的に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 1 家族に介護計画を説明し,同意を得る。
  • 2 上司に利用者への対応の結果を報告し,了解を得る。
  • 3 介護計画の検討をとおして,チームの交流を深める。
  • 4 チームで事例の課題を共有し,解決策を見いだす。
  • 5 各職種の日頃の悩みを共有する。

答え:4

解説
事例検討(ケースカンファレンス)の最大の目的は、一人の職員では解決が難しい事例(ケース)について、チームのメンバーが多角的な視点で「課題を共有」し、専門的な知見を持ち寄って議論することで、より良い「解決策を見いだす」ことです。
1はサービス担当者会議などでの説明です。2は業務報告です。3(チームの交流)は事例検討の副次的な「効果」ではありますが、「目的」ではありません。5は、事例検討の場ではなく、スーパービジョンや職員のメンタルヘルスケアの場で行われるべきことです。

生活支援技術

問題80
介護老人福祉施設における,レクリエーション活動に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 1 利用者全員が参加することを重視する。
  • 2 毎回,異なるプログラムを企画する。
  • 3 プログラムに買い物や調理も取り入れる。
  • 4 利用者の過去の趣味を,プログラムに取り入れることは避ける。
  • 5 地域のボランティアの参加は,遠慮してもらう。

答え:3

解説
レクリエーション活動は、体操や歌、ゲームだけでなく、利用者の「生活の質(QOL)」や「役割の回復」につながる活動も含まれます。「買い物」や「調理」といった生活行為(IADL)そのものをレクリエーションとして取り入れることは、利用者の自立支援や生活意欲の向上に役立つため非常に適切です。
1は利用者の自己決定権(参加・不参加の自由)を侵害します。2は慣れた活動を好む方もいるため不適切です。4は逆で、過去の趣味(編み物、書道など)は本人の意欲を引き出す重要な資源です。5は地域との交流や社会参加を促進する観点から不適切です。


問題81
関節リウマチ(rheumatoid arthritis)で,関節の変形や痛みがある人への住まいに関する介護福祉職の助言として,最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 1 手すりは,握らずに利用できる平手すりを勧める。
  • 2 いすの座面の高さは,低いものを勧める。
  • 3 ベッドよりも,床に布団を敷いて寝るように勧める。
  • 4 部屋のドアは,開き戸を勧める。
  • 5 2 階建ての家の場合,居室は2階にすることを勧める。

答え:1

解説
関節リウマチの方は、手指の関節に痛みや変形があり、円筒形のものを「握る」動作が困難な場合があります。手すりに関しても、握るタイプではなく、手のひらや前腕全体で体重を支えられる「平手すり」(またはI字手すりの縦設置)を勧めることが適切です。
2や3は、膝や股関節に大きな負担がかかり、立ち座り動作が非常に困難になるため不適切です。4は握力が必要なドアノブではなく、レバーハンドルや引き戸が望ましいです。5は階段昇降の負担が大きいため不適切です。


問題82
心身機能が低下した高齢者の住環境の改善に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 1 玄関から道路までは,コンクリートから砂利敷きにする。
  • 2 扉の取っ手は,レバーハンドルから丸いドアノブにする。
  • 3 階段の足が乗る板と板の先端部分は,反対色から同系色にする。
  • 4 車いすを使用する居室の床は,畳から板製床材(フローリング)にする。
  • 5 浴槽は,和洋折衷式から洋式にする。

答え:4

解説
畳の部屋は、車いすを漕ぐ際に抵抗が大きく、移動が困難です。また、畳の縁(へり)が小さな段差となり、つまずきや車いすのキャスターが引っかかる原因にもなります。板製床材(フローリング)など滑りやすい床材に変更することは、車いすのスムーズな移動を可能にする適切な住環境の改善です。
1は逆で、砂利は不安定なためコンクリートにします。2は逆で、握力が必要な丸いノブより、少ない力で開閉できるレバーハンドルが望ましいです。3は逆で、段差を認識しやすくするために、反対色(コントラスト)をつけます。5は、洋式(深く長い)よりも和洋折衷式(深さ・長さが中間)の方が、立ち座りやまたぎ動作が行いやすい場合が多いです。


問題83
仰臥位(背臥位)から半座位(ファーラー位)にするとき,ギャッチベッドの背上げを行う前の介護に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 1 背部の圧抜きを行う。
  • 2 臀部をベッド中央部の曲がる部分に合わせる。
  • 3 ベッドの高さを最も低い高さにする。
  • 4 利用者の足がフットボードに付くまで水平移動する。
  • 5 利用者のからだをベッドに対して斜めにする。

答え:2

解説
ギャッチベッドの背上げを行う際、利用者の臀部(お尻)がベッドの曲がる部分(ヒンジ部)に正確に合っていないと、背上げ時に体全体が足元へずれ落ちてしまいます。この「体位のずれ」は、仙骨部などに強い摩擦と圧迫(ずれ力)を生じさせ、褥瘡の大きな原因となります。そのため、背上げを行う前に必ず臀部の位置を合わせることが最も重要です。
1の圧抜きは背上げ「後」や体位変換時に行います。3、4、5は背上げ前の必須動作ではありません。


問題84
回復期にある左片麻痺の利用者が,ベッドで端座位から立位になるときの基本的な介護方法に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 1 利用者の右側に立つ。
  • 2 利用者に,ベッドに深く座るように促す。
  • 3 利用者に,背すじを伸ばして真上に立ち上がるように促す。
  • 4 利用者の左側に荷重がかかるように支える。
  • 5 利用者の左の膝頭に手を当てて保持し,膝折れを防ぐ。

答え:5

解説
左片麻痺(患側)の利用者が立ち上がる際は、麻痺のある左膝がカクンと折れてしまう「膝折れ」が起こりやすく、転倒の危険があります。介護福祉職は利用者の患側(左側)に立ち、片方の手で利用者の左の膝頭(または膝のやや上)を保持し、もう片方の手で体幹(背部や腰)を支えることで、膝折れを防ぎ、安全に立位を支援します。これが最も基本的な介護方法です。
1は逆で、患側(左側)に立ちます。2は逆で、浅く座ってもらいます。3は逆で、しっかり前かがみ(おじぎ)になってもらいます。4は健側(右側)に荷重がかかるように促します。


問題85
標準型車いすを用いた移動の介護に関する次の記述のうち,適切なものを 1つ選びなさい。

  • 1 急な上り坂は,すばやく進む。
  • 2 急な下り坂は,前向きで進む。
  • 3 踏切を渡るときは,駆動輪を上げて進む。
  • 4 エレベーターに乗るときは,正面からまっすぐに進む。
  • 5 段差を降りるときは,前輪から下りる。

答え:4

解説
エレベーターに乗る際は、ドアに挟まれないよう注意しながら、正面からまっすぐ進み乗車します。一般的に、降りる際の安全確認をしやすいよう「後ろ向き」で乗ることが推奨されますが、他の選択肢が明確に危険な操作であるため、4が最も適切と判断されます。
1は危険です。急な上り坂はゆっくり、場合によってはジグザグに進みます。2は危険です。急な下り坂は、利用者の転落を防ぐため、必ず「後ろ向き」で降ります。3は間違いです。踏切の溝に前輪(キャスター)がはまるため、前輪を上げて(ウィリーして)渡ります。「駆動輪」(後輪)を上げることはしません。5は危険です。段差を降りる時は、必ず「後ろ向き」で後輪から降ります。


問題86
医学的管理の必要がない高齢者の爪の手入れに関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 1 爪は,入浴の前に切る。
  • 2 爪の先の白い部分は,残らないように切る。
  • 3 爪は,一度にまっすぐ横に切る。
  • 4 爪の両端は,切らずに残す。
  • 5 爪切り後は,やすりをかけて滑らかにする。

答え:5

解説
爪切りで爪を切った後は、角が鋭利に残り、ご自身の皮膚を傷つけてしまう(掻破)恐れがあります。爪やすりをかけて切り口を滑らかにすることは、安全のために重要です。
1は逆で、入浴後など爪が柔らかくなっている時の方が切りやすいです。2は深爪の原因になります。3は巻き爪の原因になるため、数回に分けて切る(スクエアオフ)のが基本です。4も巻き爪の原因になります。


問題87
左片麻痺の利用者が,端座位でズボンを着脱するときの介護に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 1 最初に,左側の腰を少し上げて脱ぐように促す。
  • 2 右膝を高く上げて,脱ぐように促す。
  • 3 左足を右の大腿の上にのせて,ズボンを通すように促す。
  • 4 立ち上がる前に,ズボンを膝下まで上げるように促す。
  • 5 介護福祉職は右側に立って,ズボンを上げるように促す。

答え:3

解説
ズボンを履くときは「着患脱健」の原則どおり、麻痺のある患側(左足)から先に足を通します。端座位で患側の足を上げるのが難しい場合、健側(右側)の太ももの上に患側(左足)を乗せると、足先が安定し、介護福祉職の介助も少なくズボンを通すことができます。これは自立支援に有効な方法です。
1と2は「脱ぐ」動作ですが、「脱健」(健側から脱ぐ)が原則です。1は患側から脱ごうとしており不適切です。4は膝下ではなく、お尻が隠れる位置まで上げてから立ちます。5は患側(左側)に立って支援します。


問題88
次のうち,嚥下機能の低下している利用者に提供するおやつとして,最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 1 クッキー
  • 2 カステラ
  • 3 もなか
  • 4 餅
  • 5 プリン

答え:5

解説
嚥下機能が低下している方には、硬いもの、パサパサしてまとまりにくいもの、粘り気が強すぎるものは誤嚥や窒息のリスクが高く危険です。プリンは、適度なとろみがあり、食塊としてまとまりやすく、喉のすべりも良いため、最も安全なおやつと言えます。
1(クッキー)、2(カステラ)、3(もなか)は、パサパサして口腔内に散らばりやすく、誤嚥のリスクがあります。4の餅は、付着性が極めて高く、窒息の危険性が最も高い食品の一つであり、絶対に避けるべきです。


問題89
介護老人福祉施設の介護福祉職が,管理栄養士と連携することが必要な利用者の状態として,最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 1 利用者の食べ残しが目立つ。
  • 2 経管栄養をしている利用者が嘔吐する。
  • 3 利用者の食事中の姿勢が不安定である。
  • 4 利用者の義歯がぐらついている。
  • 5 利用者の摂食・嚥下機能訓練が必要である。

答え:1

解説
利用者の食べ残し(残食)が目立つ場合、必要な栄養量や水分が摂取できていない(低栄養・脱水)可能性があります。管理栄養士は栄養管理の専門職であるため、介護福祉職は残食の状況を正確に報告し、連携して、食事形態(刻み、ミキサーなど)や味付け、メニュー内容が利用者の好みや嚥下機能に合っているかを見直す必要があります。
2は看護職員、3はリハビリ専門職(PT/OT)、4は歯科医師、5は言語聴覚士(ST)が、それぞれ連携する第一の専門職です。


問題90
次の記述のうち,血液透析を受けている利用者への食事の介護として,最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 1 塩分の多い食品をとるように勧める。
  • 2 ゆでこぼした野菜をとるように勧める。
  • 3 乳製品を多くとるように勧める。
  • 4 水分を多くとるように勧める。
  • 5 魚や肉を使った料理を多くとるように勧める。

答え:2

解説
血液透析を受けている方は、腎機能の低下により、体内のカリウムを適切に排出できません。生の野菜や果物にはカリウムが多く含まれるため、野菜は「ゆでこぼし」たり「水にさらす」ことでカリウムを減らす調理法が推奨されます。介護福祉職は、この調理法が用いられているか確認し、摂取を勧めることが適切です。
1(塩分)、4(水分)、3(乳製品=リン)は、厳しく制限する必要があります。5(魚や肉=たんぱく質)は、適正な量を摂取する必要がありますが、「多くとる」のはリンの過剰摂取にもつながるため適切ではありません。


問題91
介護老人福祉施設の一般浴(個浴)で,右みぎかたまひ片麻痺の利用者が移乗台に座っている。その状態から安全に入浴をするための介護福祉職の助言として,最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 1 「浴槽に入るときは,右足から入りましょう」
  • 2 「湯につかるときは,左膝に手をついてゆっくり入りましょう」
  • 3_「浴槽内では,足で浴槽の壁を押すようにして姿勢を安定させましょう」
  • 4 「浴槽内では,後ろの壁に寄りかかり足を伸ばしましょう」
  • 5 「浴槽から出るときは,真上方向に立ち上がりましょう」

答え:3

解説
浴槽内では、お湯の浮力によって体が浮きやすくなり、姿勢が不安定になります。特に片麻痺がある利用者はバランスを崩しやすいため、安全な姿勢を保持することが非常に重要です。健側(左足)の足底を浴槽の壁(足元側)にしっかりと当てて踏ん張ることで、体が浮いたり滑ったりするのを防ぎ、姿勢を安定させることができます。
1は浴槽に足を入れる「手順」としては正しいですが、入浴「中」の安全性を確保する助言としては3がより適切です。2は健側の手(左手)を膝につくと不安定で危険です(手すりや浴槽の縁を掴みます)。4は足を伸ばすと浮力で体が浮き、最も危険な姿勢です。5は浴槽から出る際の助言ですが、動作としても不適切です(立ち上がりには前傾姿勢が必要です)。


問題92
次の記述のうち,椅座位で足浴を行う介護方法として,最も適切なものを 1つ選びなさい。

  • 1 ズボンを脱いだ状態で行う。
  • 2 湯温の確認は,介護福祉職より先に利用者にしてもらう。
  • 3 足底は,足浴用容器の底面に付いていることを確認する。
  • 4 足に付いた石鹸の泡は,洗い流さずに拭き取る。
  • 5 足浴用容器から足を上げた後は,自然乾燥させる。

答え:3

解説
足浴を行う際は、足が浮いて不安定になったり、お湯が足首まで浸からなかったりしないよう、足の裏(足底)がお湯を入れた容器の底にしっかり付いていることを確認します。これにより、安定した姿勢でリラックスして足浴を行えます。
1はズボンを膝上までまくり上げれば十分です。2は高齢者は温度感覚が鈍くなっている(感覚低下)恐れがあるため、介護福祉職が先に湯温を確認します。4は石鹸が残ると皮膚トラブルの原因になるため、しっかり洗い流します。5は湯冷めや皮膚(特に趾間)の浸軟を防ぐため、タオルでしっかり水分を拭き取ります。


問題93
身体機能が低下している高齢者が,ストレッチャータイプの特殊浴槽を利用するときの入浴介護の留意点として,最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 1 介護福祉職2名で,洗髪と洗身を同時に行う。
  • 2 背部を洗うときは,側臥位にして行う。
  • 3 浴槽に入るときは,両腕の上から固定ベルトを装着する。
  • 4 浴槽では,首までつかるようにする。
  • 5 浴槽につかる時間は,20分程度とする。

答え:2

解説
ストレッチャー浴で背中(背部)やお尻(臀部)を洗う際は、利用者に側臥位(横向き)になってもらい、安全に配慮しながら行います。仰臥位のままでは洗うことができません。
1は効率が悪いか、利用者が慌ただしくなります。3の固定ベルトは、腕の下を通して胸部や腹部を固定します。4は溺水のリスクや水圧による心肺への負担が大きいため、首までつかることはしません。5の20分は長すぎます。全身の血圧変動が大きいため、湯につかる時間は5分から10分程度が目安です。


問題94
Jさん(84歳,女性,要介護3)は,認知症(dementia)があり,夫(86歳,要支援1)と二人暮らしである。Jさんは尿意はあるが,夫の介護負担を軽減するため終日おむつを使用しており,尿路感染症(urinary tract infection)を繰り返していた。夫が体調不良になったので,Jさんは介護老人福祉施設に入所した。Jさんの尿路感染症(urinary tract infection)を予防する介護として,最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 1 尿の性状を観察する。
  • 2 体温の変化を観察する。
  • 3 陰部洗浄の回数を検討する。
  • 4 おむつを使わないで,トイレに誘導する。
  • 5 膀胱留置カテーテルの使用を提案する。

答え:4

解説
Jさんは尿意があるにもかかわらず、介護負担軽減のためにおむつを使用しています。おむつの常時使用は、陰部が不潔になりやすく、尿路感染症の最大のリスク因子です。Jさんには尿意があるため、おむつ使用をやめ、Jさんの排泄パターンに合わせてトイレ誘導を行うことが、尿路感染症の最も根本的な予防策となります。
1と2は発症を早期発見するための「観察」であり、「予防」ではありません。3も大切ですが、4の脱おむつが最優先です。5の留置カテーテルは、尿路感染症の最大のリスクであり、予防に逆行します。


問題95
夜間,自宅のトイレでの排泄が間に合わずに失敗してしまう高齢者への介護福祉職の助言として,最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 1 水分摂取量を減らすように勧める。
  • 2 終日,リハビリパンツを使用するように勧める。
  • 3 睡眠薬を服用するように勧める。
  • 4 泌尿器科を受診するように勧める。
  • 5 夜間は,ポータブルトイレを使用するように勧める。

答え:5

解説
夜間にトイレが間に合わない(切迫性尿失禁や移動能力の低下)場合、寝室からトイレまでの距離を短縮することが最も有効な対策です。寝室にポータブルトイレを設置することで、尿意を感じてから排泄するまでの時間を大幅に短縮でき、失敗を防ぐことができます。これは介護福祉職としての生活上の適切な助言です。
1は脱水のリスクがあります。2は安易なおむつ使用(失禁の容認)であり、自立支援に反します。3は転倒リスクを高めます。4は医学的診断(頻尿の原因究明)のために適切ですが、介護福祉職としての「生活上の助言」としては5がより直接的です。


問題96
介護福祉職が行うことができる,市販のディスポーザブルグリセリン浣腸器を用いた排便の介護に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 1 浣腸液は,39℃~40℃に温める。
  • 2 浣腸液を注入するときは,立位をとるように声をかける。
  • 3 浣腸液は,すばやく注入する。
  • 4 浣腸液を注入したら,すぐに排便するように声をかける。
  • 5 排便がない場合は,新しい浣腸液を再注入する。

答え:1

解説
浣腸液が冷たすぎると、腸が刺激されて腹痛や不快感を引き起こします。逆に熱すぎると粘膜を損傷します。市販の浣腸器(ディスポーザブル)も、人肌(39℃~40℃程度)に温めてから注入することで、利用者の苦痛を最小限に抑えることができます。(※介護福祉職の浣腸は、医師の指示のもと、医行為に該当しない行為として実施されます)
2は左側臥位(Sims位)が基本です。3はゆっくりと注入します。4はすぐに排便せず、数分間(3~5分程度)我慢してもらわないと効果が出ません。5は介護福祉職の判断で再注入してはいけません。


問題97
訪問介護員(ホームヘルパー)が行う見守り的援助として,最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 1 ゴミの分別ができるように声をかける。
  • 2 利用者がテレビを見ている間に洗濯物を干す。
  • 3 着られなくなった服を作り直す。
  • 4 調理したものを盛り付け,食事を提供する。
  • 5 冷蔵庫の中を整理し,賞味期限が切れた食品を捨てておく。

答え:1

解説
見守り的援助(自立生活支援のための見守り)とは、利用者が安全に自立して生活できるように、介護福祉職がそばで見守り、必要な時に声かけや助言を行うことです。「ゴミの分別ができるように声をかける」ことは、利用者の自立した行動を促すための適切な見守り的援助(声かけ)に該当します。
2、4、5は、介護福祉職が家事そのものを代行(または実施)しており、生活援助(家事援助)に該当し、見守り的援助ではありません。3は介護保険サービスの範囲外です。


問題98
高齢者が靴下・靴を選ぶときの介護福祉職の対応として,最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 1 靴下は,指つきのきついものを勧める。
  • 2 靴下は,足底に滑り止めがあるものを勧める。
  • 3 靴は,床面からつま先までの高さが小さいものを勧める。
  • 4 靴は,踵のない脱ぎやすいものを勧める。
  • 5 靴は,先端部に0.5~1cmの余裕があるものを勧める。

答え:5

解説
高齢者の靴を選ぶ際は、足の変形やむくみに対応できる幅があり、かつ、足が靴の中で動かないように甲が固定できるものが望ましいです。また、つま先(先端部)には0.5cmから1cm程度の余裕(捨て寸)がないと、指が圧迫されて痛みや変形の原因となります。
1は血行不良の原因になります。2の滑り止め付き靴下は、室内では有効ですが、靴の中では滑りが悪くなりかえって危険な場合があります。3は逆で、つま先が上がっていない(高さが小さい)と、すり足の場合に引っかかり(つまずき)やすくなります。4の踵のない靴(サンダルやスリッパ)は、脱げやすく転倒の危険が非常に高いです。


問題99
Kさん(77歳,女性,要支援2)は,もの忘れが目立ちはじめ,訪問介護(ホームヘルプサービス)を利用しながら夫と二人で生活している。訪問時,Kさん夫婦から,「Kさんがテレビショッピングで購入した健康食品が毎月届いてしまい,高額の支払いが発生して困っている」と相談があった。Kさん夫婦に対する訪問介護員(ホームヘルパー)の発言として,最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 1 「健康食品は処分しましょう」
  • 2 「クーリング・オフをしましょう」
  • 3 「買い物は夫がするようにしましょう」
  • 4 「契約内容を一緒に確認しましょう」
  • 5 「テレビショッピングでの買い物はやめましょう」

答え:4

解説
利用者が高額な契約で困っている場合、訪問介護員がまず行うべきことは、契約書や規約を確認し、「どのような契約内容になっているか(定期購入か、解約方法は、など)」を本人や家族と「一緒に確認する」ことです。現状を正確に把握(アセスメント)することが、次の対応(消費生活センターへの相談など)につながります。
1、3、5は、根本的な契約問題の解決になっていません。2(クーリング・オフ)は、契約から一定期間(通常8日間)を過ぎると適用できないため、まずは4の契約確認が優先されます。


問題100
消化管ストーマを造設した利用者への睡眠の介護に関する記述として,最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 1 寝る前にストーマから出血がある場合は,軟膏を塗布する。
  • 2 寝る前に,パウチに便がたまっていたら捨てる。
  • 3 寝る前に,ストーマ装具を新しいものに交換する。
  • 4 便の漏れが心配な場合は,パウチの上からおむつを強く巻く。
  • 5 睡眠を妨げないように,パウチの観察は控える。

答え:2

解説
睡眠中にパウチ(ストーマ袋)が排泄物でいっぱいになると、重さで剥がれたり、漏れ(漏出)の原因になったりして、睡眠が妨げられます。就寝前には必ずパウチの中身を確認し、たまっていたらトイレに捨てる(排出する)ことが、夜間の安眠につながります。
1は医療行為です。3は定期交換日や漏れがなければ、寝る直前に交換する必要はありません。4はストーマを圧迫し、排泄物の流れを妨げたり(パンケーキング)、漏れの原因になるため不適切です。5は漏れやスキントラブルの早期発見のため、観察は必要です。


問題101
Lさん(79歳,男性,要介護2)は,介護老人保健施設に入所して1か月が経過した。睡眠中に大きないびきをかいていることが多く,いびきの音が途切れることもある。夜間に目を覚ましていたり,起床時にだるそうにしている様子もしばしば見られている。介護福祉職がLさんについて収集すべき情報として,最も優先度の高いものを1 つ選びなさい。

  • 1 枕の高さ
  • 2 マットレスの硬さ
  • 3 掛け布団の重さ
  • 4 睡眠中の足の動き
  • 5 睡眠中の呼吸状態

答え:5

解説
Lさんの「大きないびき」「いびきが途切れる(無呼吸)」「夜間の覚醒」「日中のだるさ」は、睡眠時無呼吸症候群(SAS)の典型的な症状です。この場合に最も優先して収集すべき情報は、睡眠中の呼吸がどのようになっているか(無呼吸の頻度、長さ、チアノーゼの有無など)という「呼吸状態」そのものです。
1、2、3(寝具)も睡眠の質に関わりますが、呼吸状態の確認より優先度は低いです。4(足の動き)は周期性四V運動障害の観察点です。


問題102
Mさん(98歳,男性,要介護5)は,介護老人福祉施設に入所している。誤嚥性肺炎(aspiration pneumonia)で入退院を繰り返し,医師からは終末期が近い状態であるといわれている。介護福祉職が確認すべきこととして,最も優先度の高いものを1つ選びなさい。

  • 1 主治医の今後の見通し
  • 2 誤嚥性肺炎(aspiration pneumonia)の発症時の入院先
  • 3 経口摂取に対する本人の意向
  • 4 経口摂取に対する家族の意向
  • 5 延命治療に対する家族の希望

答え:3

解説
終末期ケアにおける意思決定支援(ACP:アドバンス・ケア・プランニング)において、最も優先されるべきは「本人の意向(自己決定)」です。Mさんが誤嚥性肺炎を繰り返している状況で、今後の「経口摂取」(食べる楽しみとリスク)をどうしたいのか、Mさん自身の意向(意思表示が難しい場合は、これまでの本人の言動や価値観を推察すること)を確認することが、今後のケア方針を決定する上で最優先となります。
1(医師の見通し)も重要ですが、本人の意向が基盤となります。4と5は「家族」の意向であり、本人の意向を確認した上で、家族の意向も確認し、すり合わせを行っていく流れが適切です。


問題103
デスカンファレンス(death conference)の目的に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 1 一般的な死の受容過程を学習する。
  • 2 終末期を迎えている利用者の介護について検討する。
  • 3 利用者の家族に対して,死が近づいたときの身体の変化を説明する。
  • 4 亡くなった利用者の事例を振り返り,今後の介護に活用する。
  • 5 終末期の介護に必要な死生観を統一する。

答え:4

解説
デスカンファレンス(Death Conference)は、亡くなられた利用者の事例(終末期のケアのプロセス、ご本人・ご家族への対応など)を、ケアチーム全体で「振り返る」場です。その目的は、提供したケアを評価・分析し、課題や学びを共有することで、今後の「将来の介護(看取りケア)」の質を向上させるために活用することです。
1や5は一般的な研修会の内容です。2は終末期を迎えている「現在」の利用者のカンファレンスです。3は家族への説明です。


問題104
福祉用具を活用するときの基本的な考え方として,最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 1 福祉用具が活用できれば,住宅改修は検討しない。
  • 2 複数の福祉用具を使用するときは,状況に合わせた組合せを考える。
  • 3 福祉用具の選択に迷うときは,社会福祉士に選択を依頼する。
  • 4 家族介護者の負担軽減を最優先して選ぶ。
  • 5 福祉用具の利用状況のモニタリング(monitoring)は不要である。

答え:2

解説
利用者の生活課題は一つとは限らないため、福祉用具は単体で使うとは限りません。例えば、「ベッドからの起き上がり(特殊寝台)」「トイレまでの移動(歩行器)」「便座への立ち座り(手すり)」のように、利用者の状況や生活動線に合わせて、複数の福祉用具を適切に組み合わせることが、自立支援や安全確保のために重要です。
1は福祉用具と住宅改修は組み合わせて検討します。3は福祉用具専門相談員やリハビリ専門職が選択に関わります。4は利用者の自立支援が最優先です。5は利用者の状態変化に合わせて用具が合っているか、定期的なモニタリングが必須です。


問題105
以下の図のうち,握力の低下がある利用者が使用するつえとして,最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 1 T字杖
  • 2 オフセット杖
  • 3 ロフストランド・クラッチ
  • 4 多点杖
  • 5 サイドケイン

答え:3

解説
握力の低下がある利用者は、T字杖や多点杖のようにグリップ(握り部)を強く握る必要がある杖では、体重を安全に支えることが困難です。「ロフストランド・クラッチ」は、グリップに加えて前腕を支える「カフ」と呼ばれる腕帯が付いています。これにより、握力だけに頼らず、前腕(腕全体)で体重を支えることができるため、握力が低下している利用者に最も適しています。
1、2、4、5は、いずれも手でグリップを握る力が必要となるため、握力が低下している方には不向きです。

介護過程

問題106
介護福祉職が,初回の面談で情報を収集するときの留意点として,最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 1 用意した項目を次から次に質問する。
  • 2 目的を意識しながら話を聴く。
  • 3 ほかの利用者が同席する状況で質問する。
  • 4 最初に経済状態に関する質問をする。
  • 5 家族の要望を中心に話を聴く。

答え:2

解説
初回の面談(インテーク)は、アセスメントのための情報収集と、利用者との信頼関係(ラポール)を構築する重要な場面です。単なる雑談ではなく、「利用者の生活課題やニーズを把握する」という目的を意識しながら話を聴く(傾聴する)ことが、専門職としての正しい姿勢です。
1は機械的な質問であり、信頼関係を損ねます。3はプライバシー(個人情報保護)の観点から絶対に避けるべきです。4は非常にデリケートな情報であり、信頼関係が構築できていない最初にする質問としては不適切です。5は利用者本人の意向を尊重する(自己決定の尊重)という原則に反します。


問題107
介護過程の評価に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 1 生活状況が変化しても,介護計画で設定した日に評価する。
  • 2 サービス担当者会議で評価する。
  • 3 相談支援専門員が中心になって評価する。
  • 4 利用者の満足度を踏まえて評価する。
  • 5 介護計画の実施中に評価基準を設定する。

答え:4

解説
介護過程における「評価」は、計画(目標)が達成できたかどうかを判断するものです。その際、サービスが適切に実施されたか(客観的評価)だけでなく、その結果として「利用者が満足しているか」(主観的評価)を踏まえて総合的に評価することが、ケアの質の向上にとって不可欠です。
1は間違いです。利用者の状態が変化した場合は、計画した日付に関わらず、速やかに再アセスメントと評価を行う必要があります。2は、サービス担当者会議は評価結果を「共有」する場ではありますが、評価そのものは日々のケアの中で行われます。3は介護支援専門員(ケアマネジャー)や介護職が中心です。5の評価基準は、実施中ではなく計画「立案」の段階で設定します。


問題108
次の記述のうち,介護老人保健施設で多職種連携によるチームアプローチ(team approach)を実践するとき,介護福祉職が担う役割として,最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 1 利用者の生活状況の変化に関する情報を提供する。
  • 2 総合的な支援の方向性を決める。
  • 3 サービス担当者会議を開催する。
  • 4 必要な検査を指示する。
  • 5 ほかの職種が担う貢献度を評価する。

答え:1

解説
介護福祉職は、利用者の食事、排泄、入浴、活動など、日々の生活に最も長く関わる専門職です。そのため、多職種連携(チームアプローチ)において、他職種(医師、看護師、リハビリ職など)が把握しきれない「利用者の生活状況の小さな変化」に関する具体的な情報を提供することが、介護福祉職の最も重要かつ独自の役割です。
2(方向性の決定)はチーム全体、3(会議開催)は主に介護支援専門員、4(検査指示)は医師の役割です。5は不適切です。


次の事例を読んで,問題109,問題110について答えなさい。
〔事 例〕
Aさん(75歳,女性)は,一人暮らしで,身体機能に問題はない。70歳まで地域の子どもたちに大正琴を教えていた。認知症(dementia)の進行が疑われて,心配した友人が地域包括支援センターに相談した結果,Aさんは介護老人福祉施設に入所することになった。入所時のAさんの要介護度は3であった。入所後,短期目標を,「施設に慣れ,安心して生活する(3か月)」と設定し,計画は順調に進んでいた。Aさんは施設の大正琴クラブに自ら進んで参加し,演奏したり,ほかの利用者に大正琴を笑顔で教えたりしていた。ある日,クラブの終了後に,Aさんは部屋に戻らずに,エレベーターの前で立ち止まっていた。介護職員が声をかけると,Aさんが,「あの子たちが待っているの」と強い口調で言った。

問題109
大正琴クラブが終わった後のAさんの行動を解釈するために必要な情報として,最も優先すべきものを1つ選びなさい。

  • 1 介護職員の声かけのタイミング
  • 2 Aさんが演奏した時間
  • 3 「あの子たちが待っているの」という発言
  • 4 クラブに参加した利用者の人数
  • 5 居室とエレベーターの位置関係

答え:3

解説
Aさんの行動(エレベーター前で待つ)の理由を解釈する鍵は、Aさん自身の「あの子たちが待っているの」という発言にあります。Aさんの生活歴(70歳まで子どもたちに大正琴を教えていた)と、クラブで「教える」という行為が結びつき、過去の記憶が想起された(「あの子たち=昔の生徒」)可能性が最も高いと考えられます。この発言は、Aさんの現在の心理状態や混乱を理解するために最も重要な情報です。
1、2、4、5は、行動の背景にある動機を理解する上での優先度は低いです。


問題110
Aさんの状況から支援を見直すことになった。次の記述のうち,新たな支援の方向性として,最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 1 介護職員との関係を改善する。
  • 2 身体機能を改善する。
  • 3 演奏できる自信を取り戻す。
  • 4 エレベーターの前に座れる環境を整える。
  • 5 大正琴を教える役割をもつ。

答え:5

解説
Aさんは「大正琴を教える」ことに強い意欲と能力(ストレングス)を持っています。今回の行動(エレベーター前で待つ)も、その「教える」という役割意識から生じた混乱と考えられます。したがって、新たな支援としては、その混乱を否定するのではなく、Aさんの強みを活かし、施設内で「大正琴を教える役割」を正式に持ってもらう(例:クラブの講師役をお願いする)ことが、Aさんの生きがい(QOL)の向上と精神的な安定につながる最も適切な方向性です。
1、2は現在の課題と異なります。3は自信を失っているわけではありません。4は行動(症状)のみに対応したもので、Aさんのニーズ(役割)に応えていません。


次の事例を読んで,問題111,問題112について答えなさい。
〔事 例〕
Bさん(50歳,男性,障害支援区分3)は,49歳のときに脳梗塞(cerebral infarction)を発症し,左片麻痺で高次脳機能障害(higher brain dysfunction)と診断された。以前は大工で,手先が器用だったと言っている。現在は就労継続支援B型事業所に通っている。短期目標を,「右手を使い,作業を自分ひとりで行える(3か月)」と設定し,製品を箱に入れる単純作業を任されていた。ほかの利用者との人間関係も良好で,左片麻痺に合わせた作業台で,毎日の作業目標を達成していた。生活支援員には,「将来は手先を使う仕事に就きたい」と希望を話していた。将来に向けて,生活支援員が新たに製品の組立て作業を提案すると,Bさんも喜んで受け入れた。初日に,「ひとりで頑張る」と始めたが,途中で何度も手が止まり,完成品に不備が見られた。生活支援員が声をかけると,「こんなの,できない」と大声を出した。

問題111
生活支援員の声かけに対し,Bさんが大声を出した理由を解釈する視点として,最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 1 ほかの利用者との人間関係
  • 2 生活支援員に話した将来の希望
  • 3 製品を箱に入れる毎日の作業量
  • 4 製品の組立て作業の状況
  • 5 左片麻痺に合わせた作業台

答え:4

解説
Bさんが大声を出した直接的な引き金は、彼が喜んで引き受けた新しい「製品の組立て作業」が、高次脳機能障害(HBD)の影響(例:遂行機能障害)で「途中で手が止まり」「不備が見られた」という、うまくいかなかった状況(4)です。元大工で「手先が器用だった」という自負と、「将来は手先を使う仕事に」という希望があるだけに、新しい作業での失敗が強い挫折感や混乱(カタストロフィック反応)を引き起こしたと解釈するのが最も適切です。
1、2、3、5は、大声を出した直接的な理由ではありません。


問題112
Bさんに対するカンファレンス(conference)が開催され,短期目標を達成するための具体的な支援について見直すことになった。次の記述のうち,見直した支援内容として,最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 1 完成品の不備を出すことへの反省を促す。
  • 2 左側に部品を置いて作業するように促す。
  • 3 完成までの手順を理解しやすいように示す。
  • 4 生活支援員が横に座り続けて作業内容を指示する。
  • 5 製品を箱に入れる単純作業も同時に行うように調整する。

答え:3

解説
Bさんの高次脳機能障害には、複雑な作業の「手順」を計画し、実行することが難しくなる「遂行機能障害」が含まれている可能性が高いです。新しい組立作業で手が止まったのはこのためと考えられます。したがって、支援を見直す際は、本人の意欲を尊重しつつ、組立作業の「完成までの手順」を写真やイラストで示す(作業手順書)、または見本を置くなど、「理解しやすいように示す」ことが、短期目標(ひとりで作業できる)の達成に最も有効な支援です。
1はBさんを責める不適切な対応です。2は左側(患側)に置くと、麻痺や空間無視(不明)によっては作業が困難になります。4は「ひとりで」という目標に反します。5は作業をさらに複雑にし、混乱を招きます。


問題113
事例研究を行うときに,遵守すべき倫理的配慮として,適切なものを1つ選びなさい。

  • 1 研究内容を説明して,事例対象者の同意を得る。
  • 2 個人が特定できるように,氏名を記載する。
  • 3 得られたデータは,研究終了後すぐに破棄する。
  • 4 論文の一部であれば,引用元を明示せずに利用できる。
  • 5 研究成果を得るために,事実を拡大解釈する。

答え:1

解説
事例研究は、個人の情報を深く扱うため、最も重要な倫理的配慮は「インフォームド・コンセント(説明と同意)」です。研究者は、事例対象者(利用者)に対し、研究の目的、内容、公表の方法、プライバシーの保護方法などを十分に説明し、本人の自由意思による「同意」を得なければなりません。
2はプライバシー侵害(匿名性の原則違反)、3はデータの保管義務違反(一定期間の保管が必要な場合が多い)、4は盗用(剽窃)、5は捏造(ねつぞう)・改ざんであり、すべて重大な研究不正行為です。

総合問題

次の事例を読んで,問題114から問題116までについて答えなさい。
〔事 例〕
Cさん(59歳,男性)は,妻(55歳)と二人暮らしであり,専業農家である。Cさんはおとなしい性格であったが,最近怒りやすくなったと妻は感じていた。Cさんは毎日同じ時間に同じコースを散歩している。ある日,散歩コースの途中にあり,昔からよく行く八百屋から,「Cさんが代金を支払わずに商品を持っていった。今回で2回目になる。お金を支払いにきてもらえないか」と妻に連絡があった。妻がCさんに確認したところ,悪いことをした認識がなかった。心配になった妻がCさんと病院に行くと,前頭側頭型認知症(frontotemporal dementia)と診断を受けた。妻は今後同じようなことが起きないように,Cさんの行動を常に見守り,外出を制限したが,疲労がたまり,今後の生活に不安を感じた。そこで,地域包括支援センターに相談し,要介護認定の申請を行い,訪問介護(ホームヘルプサービス)を利用することになった。

問題114
Cさんが八百屋でとった行動から考えられる状態として,最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 1 脱抑制
  • 2 記憶障害
  • 3 感情失禁
  • 4 見当識障害
  • 5 遂行機能障害

答え:1

解説
前頭側頭型認知症の特徴的な症状の一つに「脱抑制(社会的行動障害)」があります。これは、前頭葉の機能低下により、理性や社会的なルール(例:お金を払ってから商品をもらう)に基づいて自分の行動をコントロール(抑制)することが難しくなる状態です。Cさんが悪気なく(悪い認識がなく)万引きをしてしまったのは、この脱抑制によるものと考えられます。
2(記憶障害)はアルツハイマー型、3(感情失禁)は血管性認知症、4(見当識障害)や5(遂行機能障害)も認知症の症状ですが、Cさんの行動を最も直接的に説明するのは1です。


問題115
Cさんの介護保険制度の利用に関する次の記述のうち,適切なものを1つ選びなさい。

  • 1 介護保険サービスの利用者負担割合は1割である。
  • 2 介護保険料は特別徴収によって納付する。
  • 3 要介護認定の結果が出る前に介護保険サービスを利用することはできない。
  • 4 要介護認定の利用者負担割合は2割である。
  • 5 介護保険サービスの費用はサービスの利用回数に関わらず定額である。

答え:1

解説
介護保険サービスの利用者負担割合は、本人の所得に応じて1割、2割、3割のいずれかになりますが、「原則は1割負担」と定められています。事例からはCさんの所得は不明であり、他の選択肢が明確に誤りであるため、この原則を示した1が最も適切です。
2の特別徴収(年金天引き)は、原則65歳以上の第1号被保険者が対象です。Cさん(59歳)は第2号被保険者であり、医療保険料と一体で納付します。3は認定結果が出る前でも「暫定ケアプラン」を作成し、サービスを利用することは可能です。4は2割とは限りません。5は利用した回数や量に応じた従量制が基本です(定額ではありません)。


問題116
その後,妻に外出を制限されたCさんは不穏となった。困った妻が訪問介護員(ホームヘルパー)に相談したところ,「八百屋に事情を話して事前にお金を渡して,Cさんが品物を持ち去ったときは,渡したお金から商品代金を支払うようにお願いしてはどうか」とアドバイスを受けた。訪問介護員(ホームヘルパー)が意図したCさんへの関わりをICF(International Classification of Functioning, Disability and Health:国際生活機能分類)に当てはめた記述として,最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 1 個人因子への影響を意図して,健康状態に働きかける。
  • 2 健康状態への影響を意図して,心身機能に働きかける。
  • 3 活動への影響を意図して,身体構造に働きかける。
  • 4 参加への影響を意図して,環境因子に働きかける。
  • 5 環境因子への影響を意図して,個人因子に働きかける。

答え:4

解説
ICFにおいて、Cさんの「毎日の散歩や八百屋での買い物」は「参加」(社会生活への関わり)にあたります。Cさんがこの「参加」を継続できるように(不穏の解消)、訪問介護員は「八百屋の理解と協力」という「環境因子(社会的環境)」を調整するように助言しています。したがって、4が正解です。


次の事例を読んで,問題117から問題119までについて答えなさい。
〔事 例〕
Dさん(70歳,男性)は,自宅で妻と二人暮らしで,年金収入で生活している。ある日,車を運転中に事故に遭い救急搬送された。医師からは,第4胸髄節まで機能が残存している脊髄損傷(spinal cord injury)と説明を受けた。Dさんは,入院中に要介護3の認定を受けた。Dさんは,退院後は自宅で生活することを望んでいた。妻は一緒に暮らしたいと思うが,Dさんの身体状況を考えると不安を感じていた。介護支援専門員(ケアマネジャー)は,「退院後は,在宅復帰を目的に,一定の期間,リハビリテーション専門職がいる施設で生活してはどうか」とDさんに提案した。Dさんは妻と退院後の生活について話し合った結果,一定期間施設に入所して,その間に,自宅の住宅改修を行うことにして,介護支援専門員(ケアマネジャー)に居宅介護住宅改修費について相談した。

問題117
次のうち,Dさんが提案を受けた施設として,最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 1 養護老人ホーム
  • 2 軽費老人ホーム
  • 3 介護老人福祉施設
  • 4 介護老人保健施設
  • 5 介護医療院

答え:4

解説
介護支援専門員が提案した施設は、「在宅復帰を目的」とし、「リハビリテーション専門職がいる」という特徴があります。これは、病院退院後、在宅復帰に向けてリハビリを集中的に行う中間施設としての役割を担う「介護老人保健施設(老健)」の機能と一致します。
3(介護老人福祉施設)は生活の場、5(介護医療院)は長期療養の場であり、在宅復帰が第一目的ではありません。


問題118
次のうち,介護支援専門員(ケアマネジャー)がDさんに説明する居宅介護住宅改修費の支給限度基準額として,適切なものを1つ選びなさい。

  • 1 10 万円
  • 2 15 万円
  • 3 20 万円
  • 4 25 万円
  • 5 30 万円

答え:3

解説
介護保険の在宅サービスである「居宅介護住宅改修費」の支給限度基準額は、要介護度に関わらず、同一住宅につき「20万円」と定められています。このうち、利用者負担割合(通常1割)を除いた額(通常18万円)が支給されます。


問題119
Dさんが施設入所してから3か月後,住宅改修を終えた自宅に戻ることになった。Dさんは自宅での生活を楽しみにしている。その一方で,不安も抱えていたため,担当の介護福祉士は,理学療法士と作業療法士に相談して,生活上の留意点を記載した冊子を作成して,Dさんに手渡した。次の記述のうち,冊子の内容として,最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 1 食事では,スプーンを自助具で手に固定する。
  • 2 移動には,リクライニング式車いすを使用する。
  • 3 寝具は,エアーマットを使用する。
  • 4 更衣は,ボタンエイドを使用する。
  • 5 外出するときには,事前に多機能トイレの場所を確認する。

答え:5

解説
Dさんは第4胸髄(Th4)レベルの脊髄損傷であり、上肢(腕や手)の機能は正常です。しかし、下肢は完全に麻痺しており、移動は車いすとなります。自宅での生活(食事、更衣、移動)は住宅改修や練習で不安が軽減されますが、「外出」する際は、社会的な障壁(バリア)に直面します。特に排泄(導尿など)のために車いすで利用できるトイレ(多機能トイレ、だれでもトイレ)の場所を事前に確認しておくことは、安心して外出を楽しむために非常に重要な「生活上の留意点」となります。
1と4は、手の機能が正常なDさんには不要です。2は、座位が安定しているTh4損傷では、通常のリクライニング式でない標準型車いすを使用します。3(エアーマット)も褥瘡予防に重要ですが、Th4レベルでは上肢の力で体位変換(プッシュアップ)が可能なため、外出時のトイレ問題(5)の方が、在宅復帰後のQOL(生活の質)を考える上でより具体的な生活上の留意点となります。


次の事例を読んで,問題120から問題122までについて答えなさい。
〔事 例〕
Eさん(34歳,女性,障害支援区分3)は,特別支援学校の高等部を卒業後,週2 回,生活介護を利用しながら自宅で生活している。Eさんはアテトーゼ型(athetosis)の脳性麻痺(cerebral palsy)で不随意運動があり,首を振る動作が見られる。食事は首の動きに合わせて,自助具を使って食べている。食事中は不随意運動が強く,食事が終わると,「首が痛い,しびれる」と言ってベッドに横になるときがある。また,お茶を飲むときは取っ手つきのコップで飲んでいるが,コップを口元に運ぶまでにお茶がこぼれるようになってきた。日頃から自分のことは自分でやりたいと考えていて,お茶が上手に飲めなくなってきたことを気にしている。Eさんは,生活介護事業所で油絵を描くことを楽しみにしている。以前から隣町の油絵教室に通い技術を高めたいと話していた。そこでEさんは,「自宅から油絵教室に通うときの介助をお願いするにはどうしたらよいか」と介護福祉職に相談した。

問題120
Eさんの食事の様子から,今後,引き起こされる可能性が高いと考えられる二次障害として,最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 1 変形性股関節症(coxarthrosis)
  • 2 廃用症候群(disuse syndrome)
  • 3 起立性低血圧(orthostatic hypotension)
  • 4 脊柱側弯症(scoliosis)
  • 5 頚椎症性脊髄症(cervical spondylotic myelopathy)

答え:5

解説
Eさんは、食事中の強い不随意運動により、「首が痛い、しびれる」という症状を自覚しています。アテトーゼ型脳性麻痺のように、長期間にわたり頸部(首)の不随意運動が続くと、頸椎(首の骨)に過度な負担がかかり続けます。その結果、骨が変形したり、神経(脊髄)を圧迫したりする「頚椎症性脊髄症」という二次障害を引き起こすリスクが非常に高いです。
1、2、3、4も二次障害として起こり得ますが、Eさんの「首の痛み・しびれ」という具体的な症状に直結するのは5です。


問題121
Eさんがお茶を飲むときの介護福祉職の対応として,最も適切なものを1 つ選びなさい。

  • 1 吸い飲みに変更する。
  • 2 ストローつきコップに変更する。
  • 3 重いコップに変更する。
  • 4 コップを両手で持つように伝える。
  • 5 全介助を行う。

答え:2

解説
Eさんは不随意運動(アテトーゼ)により、コップを安定して口元に運ぶことが難しく、こぼしてしまっています。「自分でやりたい」という意向があるため、全介助(5)は不適切です。不随意運動があっても、コップ本体が動いてもストローの先端が口にあれば飲むことができる「ストローつきコップ」に変更することが、こぼれを防ぎ、本人の自立(自分で飲む)を支援する最も適切な対応です。
1(吸い飲み)は、コップ本体を口元に固定する必要があり、首が動くEさんには難しい可能性があります。3(重いコップ)はアテトーゼの抑制に使うことがありますが、こぼれ対策として2がより直接的です。4は両手で持っても不随意運動は制御困難です。


問題122
介護福祉職は,Eさんが隣町の油絵教室に通うことができるようにサービスを提案したいと考えている。次のうち,Eさんが利用するサービスとして,最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 1 自立生活援助
  • 2 療養介護
  • 3 移動支援
  • 4 自立訓練
  • 5 同行援護

答え:3

解説
障害者総合支援法における「移動支援」事業は、地域生活支援事業の一つであり、社会生活上不可欠な外出や、Eさんの「油絵教室」(余暇活動)のような社会参加のための外出支援(ガイドヘルプ)を提供します。Eさんのニーズに最も合致するサービスです。
1(自立生活援助)は一人暮らしの定着支援、2(療養介護)は医療的ケア、4(自立訓練)はリハビリ、5(同行援護)は視覚障害者のための外出支援であり、Eさんのニーズとは異なります。


次の事例を読んで,問題123から問題125までについて答えなさい。
〔事 例〕
Fさん(20歳,男性)は,自閉症スペクトラム障害(autism spectrum disorder)と重度の知的障害があり,自宅で母親(50歳),姉(25歳)と3人で暮らしている。Fさんは生活介護事業所を利用している。事業所では比較的落ち着いているが,自宅に帰ってくると母親に対してかみつきや頭突きをすることがあった。また,自分で頭をたたくなどの自傷行為もたびたび見られる。仕事をしている母親に代わり,小さい頃から食事や排泄の介護をしている姉は,これまでFさんの行動を止めることができていたが,最近ではからだが大きくなり力も強くなって,母親と協力しても止めることが難しくなっていた。家族で今後のことを考えた結果,Fさんは障害者支援施設に入所することになった。

問題123
次のうち,Fさんが自宅に帰ってきたときの状態に該当するものとして,最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 1 学習障害
  • 2 注意欠陥多動性障害
  • 3 高次脳機能障害
  • 4 強度行動障害
  • 5 気分障害

答え:4

解説
Fさんの「かみつきや頭突き」(他害行為)や「自分で頭をたたく」(自傷行為)が、家族では対応困難なほど激しくたびたび見られる状態は、「強度行動障害」の定義に該当します。これは、本人の障害特性と環境要因が複雑に絡み合って生じる、生活への適応が著しく困難な状態を指します。
1、2、3、5は、Fさんの行動を説明する状態としては不適切です。


問題124
Fさんが入所してからも月1,2回は,姉が施設を訪ね,Fさんの世話をしている。ある日,担当の介護福祉職が姉に声をかけると,「小学生の頃から,学校が終わると友だちと遊ばずにまっすぐ家に帰り,母親に代わって,弟の世話をしてきた。今は,弟を見捨てたようで,申し訳ない」などと話す。介護福祉職の姉への対応として,最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 1 「これからもFさんのお世話をしっかり行ってください」
  • 2 「Fさんは落ち着いていて,自傷他害行為があるようには見えませんね」
  • 3 「お姉さんは,小さい頃からお母さんの代わりをしてきたのですね」
  • 4 「訪問回数を減らしてはどうですか」
  • 5 「施設入所を後悔しているのですね。もう一度在宅ケアを考えましょう」

答え:3

解説
姉は、ヤングケアラー(きょうだい児)として長年Fさんの世話をしてきた過去と、入所に伴う罪悪感(「見捨てたようで申し訳ない」)を打ち明けています。この場面で介護福祉職に求められるのは、姉のこれまでの労苦と現在の複雑な心情を、評価や指導(1、4、5)をせず、否定(2)もせず、そのまま受け止める(受容・傾聴)ことです。選択肢3は、姉の話をそのまま繰り返して受け止める、最も適切な共感的な対応です。


問題125
Fさんが施設に入所して1年が経った。介護福祉職は,Fさん,母親,姉と共にこれまでの生活と支援を振り返り,当面,施設で安定した生活が送れるように検討した。次のうち,Fさんの支援を修正するときに利用するサービスとして,正しいものを1つ選びなさい。

  • 1 地域定着支援
  • 2 計画相談支援
  • 3 地域移行支援
  • 4 基幹相談支援
  • 5 基本相談支援

答え:2

解説
障害福祉サービスを利用する人は、サービスの種類や量などを定めた「サービス等利用計画」が必要です。Fさんはすでに施設に入所(サービスを利用)しており、1年が経過したため、支援の振り返り(モニタリング)と修正(計画の変更)を行います。この一連のプロセス(計画作成、モニタリング、変更)を担うサービスが「計画相談支援」です。
1(地域定着支援)や3(地域移行支援)は、施設や病院から地域生活に移る(または移った)際に利用するサービスです。

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