「親の介護度が上がってしまい、今のまま家で看るのは限界かもしれない」
「夜中にトイレに行こうとして転んだら、朝まで誰も気づけない」
親御さんの介護が重度化してきたり、一人暮らしをしていたりすると、どうしても「夜間や緊急時の不安」がつきまといますよね。
家族が24時間付き添うのは現実的に難しく、「そろそろ老人ホームを探すべきか……」と悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
でも、諦めるのはまだ早いかもしれません。
介護保険には、まるで施設にいるかのように、24時間365日いつでもヘルパーや看護師とつながり、駆けつけてくれるサービスが存在します。
それが、「定期巡回・随時対応型訪問介護看護(ていきじゅんかい・ずいじたいおうがた ほうもんかいごかんご)」です。
名前がとても長いので、一般的には「定期巡回」と呼ばれています。今回は、在宅介護の切り札とも言えるこのサービスについて、わかりやすく解説します。
「夜中に転んだらどうしよう」を解決する仕組み
このサービスの最大の特徴は、「定期的な訪問」と「緊急時の対応」がセットになっている点です。
1. 1日に何度も来てくれる(定期巡回)
通常の訪問介護は「1回1時間」などでしっかり家事やケアをしますが、このサービスは「1回10分〜20分」といった短時間のケアを、1日に何度も受けることができます。
- 朝:起床介助と着替え
- 昼:食事の配膳と服薬確認
- 夜:パジャマへの着替えと就寝介助
このように、生活のリズムに合わせてこまめに顔を出してくれるので、一人暮らしでも孤独感が和らぎます。
2. 「何かあったら」すぐ呼べる(随時対応)
ご自宅に「ケアコール端末(通報装置)」が設置されます。
「転んで起き上がれない」「気分が悪い」といった時にボタンを押せば、オペレーターにつながり、必要だと判断されればヘルパーや看護師がすぐに駆けつけてくれます。
まさに、「自宅にいながら、施設のナースコールがあるような安心感」を得られる仕組みなのです。
毎日じゃなくてもOK。柔軟な使い方が魅力
「定期巡回」という名前を聞くと、「毎日必ず来てもわなきゃいけないの?」「今日は家族がいるから来なくていいんだけど」と心配になるかもしれません。
しかし、このサービスは非常に柔軟です。
「利用者の状況に関わらず毎日訪問しなければならない」というルールはありません。
「平日の日中は家族が仕事でいないから、安否確認を兼ねて来てほしい」
「土日は家族が看るから、訪問はなしで緊急コールだけ使えるようにしたい」
このように、ご家庭の事情や親御さんの体調に合わせて、必要なタイミングだけ訪問を依頼することができます。画一的なスケジュールではなく、オーダーメイドの安心を作れるのが魅力です。
利用できるのは「要介護1」から。知っておきたい条件
とても便利なサービスですが、利用するにはいくつかの条件があります。
1. 「要支援」の方は使えません
このサービスは、中重度の介護が必要な方が、施設に入らずに家で暮らせるように設計されています。そのため、利用対象は「要介護1〜5」の方に限られます。「要支援1・2」の方は利用できません。
2. 医師の「指示書」が必要です
サービス名に「訪問介護看護」とあるように、このサービスには「訪問看護(医療ケア)」の機能も含まれています。
そのため、利用を開始する際には、必ず主治医から「指示書(文書)」を書いてもらう必要があります。
「口頭でいいよ」とはいきません。しっかりと医療と連携して、安全にサービスを提供するためのルールです。
まとめ:住み慣れた家で暮らすための「第三の選択肢」
「家族だけで頑張る」か「施設に入る」か。介護は、この二択だけではありません。
「定期巡回」というプロの支えを借りることで、重度の介護が必要になっても、住み慣れた我が家で最期まで暮らすという選択が可能になります。
もし、夜間の不安や頻繁なケアの必要性に悩んでいるなら、担当のケアマネジャーに「定期巡回サービスを使ってみたい」と相談してみてください。
地域によってはまだ事業所が少ない場合もありますが、あなたの親御さんの生活を支える強力なパートナーになるはずです。
