家族の介護施設やグループホームへの入居が決まると、限られた時間の中で大量の衣類や日用品を準備することになります。その際、施設側から必ず「すべての持ち物に名前をフルネームで書いてください」と説明を受けます。
下着から靴下、普段着、アウターに至るまで、数十枚におよぶ衣服に一枚ずつ名前を書いていく作業は、想像以上に根気がいるものです。
「マジックで書くと生地に滲んで文字が読めなくなる」
「衣類のタグに直接書いても大丈夫なのだろうか」
「黒い服や濃い色の服にはどうやって名前を書けばいいのか」
衣服の素材や色に合わせた適切な書き方を知っておかないと、せっかく書いた名前が一度の洗濯や乾燥機で台なしになってしまうこともあります。施設での集団洗濯の仕組みをふまえながら、失敗しない衣服の名前書きの現実的な対策を解説します。
なぜすべての衣服に「フルネーム」が必要なのか
自宅での生活とは違い、介護施設では何十人分もの衣類をまとめて大型の洗濯機にかけ、乾燥機で乾かし、スタッフが手分けして各居室へ配るという仕組みをとっているところがほとんどです。
そのため、もし名前に名字しか書かれていないと、同じフロアに同姓の利用者がいた場合にどちらの持ち物か判別できなくなります。また、靴下などの小さな衣類は、少しでも名前が薄くなっていると、他の利用者の洗濯物に紛れ込んでしまう原因になります。
施設で働くスタッフがパッと見て誰のものかすぐに判別できるよう、すべての衣類に「はっきりとフルネームで」書くことが、大切な衣服の紛失を防ぐための基本です。
マジックが滲まない書き方と濃い色の服への対策
衣類に油性マジックでそのまま文字を書こうとすると、繊維にインクがじわっと染み込んでしまい、何と書いてあるか分からなくなってしまうことがあります。これを防ぐための具体的な道具と工夫を紹介します。
滲みを防ぐ「にじみ防止用マジック」と事前のひと手間
布専用として販売されている「にじみ防止油性ペン」を使用するのが一番確実です。普通のマジックに比べてインクの広がりが抑えられています。
もし普通の名前書き用ペンしか手元にない場合は、文字を書く部分の生地を「少し水で湿らせてから、あて布をしてアイロンをかける」という方法が有効です。繊維に適度な水分が含まれることで、インクが横に広がるのを防ぐことができます。完全に乾いてから通常通り洗濯をすれば、文字が落ちることはありません。
服に直接書くか、洗濯表示タグに書くか
基本的には、服の裏側にある「洗濯表示タグ」の余白に直接書くのが最もおすすめの書き方です。タグの素材はポリエステルなどの化学繊維が多く、綿の生地に比べてマジックが滲みにくいというメリットがあります。服の生地そのものに直接ペンを入れるのに抵抗がある場合も、タグであれば安心です。
黒や紺など「濃い色の服」への名前書き
衣類の色が暗い場合、黒いマジックで書いても見えなくなってしまいます。この場合は、以下の2つの方法が現実的です。
- 白やシルバーの「布用マイネームペン」を使用する
- 市販の「アイロン接着できる白い名前テープ」を貼り、その上に黒マジックで書く
名前テープを使用する場合は、施設の強力な乾燥機にかけると端から剥がれてきやすいため、アイロンで接着した後に、テープの四隅を数針だけで良いので糸で縫い止めておくと、何度洗濯しても剥がれなくなります。
スタッフが見つけやすい「名前を書く位置」の基本
名前を書く位置は、服のデザインや好みを優先して目立たない場所に小さく書いてしまいがちですが、これだと施設のスタッフが洗濯物をたたむ際、名前を探すために服を何度も裏返さなければならず、見落としの原因になります。
基本的には、以下の「決まった位置」に統一して書くのが、紛失を防ぐために最も効果的です。
トップス(シャツ、肌着、上着など)
首の後ろにある洗濯表示タグか、ブランドタグの余白部分に書きます。もしタグが小さすぎる場合は、服を後ろから見たときの「裾(すそ)の内側の左側」に統一して書くと、スタッフが広げたときにすぐ目に入ります。
ボトムス(ズボン、ズボン下など)
ウエストのゴム部分の内側、または後ろの腰回りにある洗濯表示タグに書きます。
靴下
靴下は施設の中で一番紛失しやすいアイテムです。土踏まずの足の裏にあたる部分か、足首のゴムの内側の白いスペースに大きく書きます。つま先の外側に書く方法もありますが、靴を履いたときに名前が見えてしまうのを本人が嫌がる場合もあるため、内側の目立たない、かつ分かりやすい場所が最適です。
100均アイテムやお名前スタンプで手間を大幅に減らす
すべてを手書きでこなそうとすると、腕や指が疲れてしまい、途中で文字が雑になってしまうこともあります。枚数が多い場合は、便利なグッズに頼るのが賢い選択肢です。
100均(セリアやダイソー)で揃うお名前シール
最近の100均には、アイロン不要で「洗濯表示タグに指でギュッと貼り付けるだけ」で接着できる衣類用のお名前シールが販売されています。洗濯機や乾燥機に対応しているタイプを選べば、手軽に名前書きを済ませることができます。
布用のお名前スタンプ
あらかじめフルネームで作っておくゴム印のスタンプです。布用の油性インク(ステイズオンなど)を使ってポンポンと押していくだけなので、手書きに比べて数倍の速さで作業が終わります。文字の太さも均一で、誰が見ても読みやすいというメリットがあります。将来的に衣替えで衣類を総入れ替えするときにも長く使えるため、ひとつ作っておくと重宝します。
もし間違えたら?衣類の油性マジックの名前を消したいときの対処法
名前書きをしている最中にうっかり漢字を間違えてしまったり、別の家族のお下がりの服を着せるために古い名前を消したい状況が出てくることもあります。油性ペンのインクは一度染み込むと水洗いでは落ちませんが、以下の方法で薄くすることが可能です。
除光液や消毒用エタノールを使う
油性マジックのインクは油分に溶ける性質があります。消したい文字の裏側にいらないタオル(あて布)を敷き、上から除光液や消毒用エタノールを染み込ませたコットンでトントンと叩きます。すると、インクが裏側のタオルに移動して文字が徐々に薄くなっていきます。
完全に真っ白に戻すのは難しいことが多いですが、上から新しい名前シールを貼り直して隠せる程度には綺麗になります。生地によっては色落ちや傷みの原因になるため、まずは目立たない裏側などで試してから行うのが安全です。
家族がこれからの生活を施設で心地よく過ごすための最初の準備だからこそ、後から文字が消えて書き直す二度手間にならないよう、道具や位置を工夫して、効率よく準備を進めてみてください。
