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悲劇を繰り返さないために、介護施設の取るべき災害対策とは

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2016年の北日本を襲った台風10号による洪水被害で、グループホームの高齢者10人が亡くなったのは記憶に新しいところです。

このグループホームでは、水害の発生時、隣接する施設の3階に避難することになっていたようですが、逃げることもできないあっという間の出来事でした。

私が以前勤務していたデイサービスでは、在籍していた3年間のうち、ただの一度も災害を想定した避難訓練が行われていません。

施設長に、「もし災害が起きたらどこへ逃げますか?」と尋ねても、返事はうやむや。水や食料の備蓄も一切なかったため、「いざとなったら行き当たりばったりでみんな助からないかも」と不安で仕方ありませんでした。

災害時の避難は、たとえ健脚な場合でも危険や困難が伴うものですが、介護施設で暮らす高齢者の中には、車いすの方や、寝たきりの方、意思の疎通が難しい方もいます。全員で一度に避難し終えることは非常に困難です。

日頃から災害を想定し、対処法を考え、訓練を行うことが、いざという時に命運を分けます。大切な命を預かる介護施設でとるべき災害対策とはいったい何でしょうか。

①食料・飲料水の十分な備蓄

災害の発生から支援が始まるまでには時間がかかることから、通常1人あたり3日分の食料や飲料を備蓄しておくことが望ましいとされています。

例えば、食料は水を注ぐだけで簡単に戻せるフリーズドライのご飯やおかゆ、レトルトのカレーや魚や肉の缶詰など、電気やガスが使えなくても食べられるものを選び、飲料は1日3リットルを目安にします。

しかし、たとえ支援物資が届くようになってからも、高齢者に適した性状や形状のものであるとは限りません。

東日本大震災の際、避難所への支援が優先され、介護施設に留まる高齢者や職員に届けられたのが、柿の種だったということもあるようです。

高齢者は、嚥下の状態や体調により、口にするものひとつで危険な状態に陥ります。慣れない環境下でも安全に、安心して食べられるように、とろみをつけるための粉末も多めに用意しておくといいかと思います。

また、食べるということは、当然排せつするということです。食料だけでなく、簡易トイレやオムツ、おしりふきも十分に揃えておきましょう。

特にオムツは、利用者に合ったサイズのものが支援物資として届くとは限りません。テープタイプならともかく、サイズの小さいリハビリパンツの着用は不可能です。あらかじめ把握し、用意しておいた方がいいと思います。

②自治体の災害時への取り組みや福祉避難所の存在を知っておく

津波や土砂災害により介護施設に留まるのが難しい場合、公民館や学校の体育館への避難を検討しているケースもあると思います。しかし、高齢者に対する理解が得られず、居づらくなるのはよく耳にする話です。

公民館や学校の体育館など、広域避難所に指定された避難所以外に、福祉避難所が存在することをご存知ですか?

福祉避難所は、避難先として一般的な一時避難所の利用が困難な高齢者、障害者、妊婦や乳幼児、病弱な人やその家族が利用できる避難所です。

利用のためには、一時避難所に避難して、保健師の聞き取り調査により福祉避難所の利用が適当と判断される必要があります。

福祉避難所のほとんどは、地域の福祉施設、養護学校など、あらかじめ要介護者を受け入れやすい体制が整っている施設です。

2016年の熊本地震では、あらかじめ1700人の利用を想定していた福祉避難所も、当初予定していた176施設のうち、4月16日の本震から20日までに開設できたのはわずか34施設でした。

災害が起きて受入れ困難となった施設もあったようですが、一番の原因は、現場の混乱を恐れ福祉避難所の開設を住民に周知していなかったことにあるようです。

しかし、行政側ばかりを責めるわけにはいきません。日頃から、自治体の災害に向けた取り組みに関心を持つことが重要です。

一度、自治体のホームページをご覧ください。福祉避難所に指定された福祉施設や養護学校の名称や、受け入れ可能人数などが掲載されています。

③避難訓練の実施

災害を想定した場合、避難訓練の実施は非常に重要です。繰り返し繰り返し行うことで、実際の災害時にとるべき行動がイメージしやすくなります。

介護施設ではありませんが、もう何十年も地震が来ると言われ続けている静岡県では、避難訓練が頻繁に行われているために、震度6の強い地震が来ても落ち着いて行動できたそうです。

介護施設の場合も、災害発生時にどう行動するか、誰から順番に連れて避難するか、誰が誰を連れて行くかなど、あらかじめ決めておきましょう。

必ずしも想定した通りになるとは限りませんが、咄嗟の判断が出来るのも、日頃の訓練があればこそです。日常の介護に追われ、時間を作るのが難しい施設もあるでしょうが、命には代えられません。

平時こそ気を抜いてはいけない!

災害直後は、被災地域以外でも危機感が募り、「日頃から備えておかなければ」と思うものの、時間の経過とともに忘れていきます。しかし、何もない時だからこそ、きちんと備えなければいけません。

今日起こらなかったからといって、明日も大丈夫とは限らないのです。

悲劇を繰り返さないために、少しずつ、出来ることから始めていきましょう。

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