優良施設かブラック施設かを見極めるリスク対応とは?

現在、新聞やメディアの報道において、岐阜県高山市にある介護老人保健施設「それいゆ」に入所されている利用者が、なんとたった2週間の間に3人が死亡、2人が大けがされるという事がありました。

この報道では、平成29年の7月末から8月中旬において、80才男性、93才男性、87才女性が相次いで死亡、91才と93才の女性が大けがで入院されているという内容でした。

この報道内容が事件なのか事故なのかという事についてはまったく分かりませんし、この記事内においても判断することはできません。とある元職員の男性がこのすべての利用者に関わっていたとして、警察が慎重に捜査を進めているようですが真相は分かりません。

老人ホームにおけるリスクマネジメントとは

ここでは一般的な介護施設における事故対応について考えてみたいと思います。

みなさんが勤めておられる介護施設においても、少なからず事故というものがあるかと思います。その事故というものは大小さまざまなものがあるかと思います。

そもそも老人ホームなど介護施設はお年寄りが住んでおられる施設になりますので、絶対に事故リスクというものはついて周ります。これは仕方がない事になります。というのもよく老人ホームなどにおいては、リスクマネジメントを行い、事故が起きないためにどうするかという視点で、さまざまな検討を行います。リスクマネジメントの考え方は、そもそも存在するリスクを取らないのではなく、そのリスクを最小にするにはどうすれば良いのかという考え方になります。

その中でもどうしても事故は起きてしまいます。例えば歩いている利用者がつまづいて転倒してしまうといった事ですね。歩いていれば転倒するといったリスクはなくなりません。しかし何かにつまづいたということであれば、そのつまづいたものを除去するだけで転倒リスクがかなり少なくなります。その考え方がリスクマネジメントになります。

リスクマネジメントはどのように行われるのか

リスクマネジメントの考え方は大きく分けて2種類あります。

ひとつは事故が起きないようにするにはどうすれば良いかという考え方。

もうひとつは事故が起きた時にどう対処することが一番良いのかという考え方です。

一つ目の考え方をリスクコントロール、二つ目の考え方をダメージコントロールと言います。このリスクコントロールとダメージコントロールを総称して、リスクマネジメントと言います。

例えば転倒事故が起こった場合、その事故がどのようなシチュエーションの中で起こったのか検証します。利用者の居室なのか、食堂なのか、トイレなのか。また時間はどうであったか、利用者は何を使用とされていたのか、事細かく分析をするのです。

その分析の中から、次はこうすれば転倒されないのではないかという仮説を立てる作業を行います。その仮説通りに対応することで転倒事故が起きなければ、仮説が実証されたという事ですし、ひとつの事故が解決されたという事になります。

また事故が起こった際に、職員はどのような対応をしたのかというダメージコントロールの部分も必ず検証します。職員の対応如何によっては、利用者の受けた怪我のダメージが大きくなるかもしれませんし、あるいは最小で済むかもしれません。出来る限り起きてしまった事故は最小に食い止めなければなりませんから、事故が起きてしまった時の対応はとても大事なのです。

また利用者に対する対応だけでなく、利用者家族に対する対応がどうであったのかという検証も必要になります。例えば職員から敏速に事故の状況を説明し、今後の対応などきちんと説明するのであれば、利用者家族からしても信頼感は失わないのかもしれません。むしろここで誠実な対応ができていないとしたら、施設に対する不信感につながるために、現場でどれだけ誠実な対応をしていたとしても、信頼感はまったく失われてしまうでしょう。

リスクマネジメントにおけるハインリッヒの法則とは

みなさんはリスクマネジメントの考え方にたいへん重要な「ハインリッヒの法則」というものをご存知でしょうか。

このハインリッヒの法則とは、1つの重大な事故の背景には、

29の軽微な事故があり、また300ものヒヤリハット(ヒヤッとした、ハッとしたが事故にならなかったもの)があるという法則です。

もし、利用者が転倒され、下肢を骨折されたとしましょう。

その骨折事故の背景には、今までの29件の軽微な事故があって、300件ものヒヤリハットがあったはずなのです。

そのような法則に則って、リスクマネジメントでは通常、ヒヤリハットにどれだけ気付けるかという事を行います。例えばつまづいてフラっとされた瞬間を見かけたような場合です。転倒されずに怪我もなかったかもしれませんが、その時の状況を分析します。

何につまづかれてふらつかれたのか、つまづくものがなかったとしたらなぜふらつかれたのか、など検討します。もしもつまづくものがあったとしたら、除去が必要ですし、滑りやすいということであれば滑りにくいように対応することが必要です。つまづく物など何もなく、ただその利用者の下肢筋力が低下しているということであれば、リハビリなどが必要になるかもしれません。

何にせよ、このリスクマネジメントというものは、大変な労力がいる作業で、場合によっては事故が頻発するなんて事も可能性としたらありますから、その都度利用者の安全確保のためにリスクマネジメントを行うということはとても大変な事になります。

リスクマネジメントがなされているかどうか

述べてきたように、リスクマネジメントはやはり対応する知識も必要になりますし、現場で対応する技術も必要になります。現場現場でリスクマネジメントの担当者というものが設置されていて、何かあればその担当者を中心にリスクマネジメントがなされているという施設が多いと思います。

また職員間で意見の交換などを行うリスクマネジメントにかかる委員会活動なども積極的に行われている施設も数多くあります。幅広い職員が参加し、意見を交換する中で、利用者の安全対策や自分たちの対応の盲点を発見するなど、日々リスクに対する努力が必要なのです。

しかし残念ながらこのリスクマネジメントがなされていない施設も存在します。

いま述べてきたような対応が取れていますでしょうか。ある意味、このリスクマネジメントをしっかりと取り組むことで、現場のケアの士気も高まりますし、職員のモチベーションも上がります。利用者を守りたいという普通の感情が芽生えてくるわけです。

しかしこの対応が取られていないとしたら、利用者のケアの質も下がり、職員の利用者に対する意識も相当低くなるだろうと危惧します。

最後に

リスクマネジメントの取り組みは入所施設において必須の事であると理解しましょう。もしもまったくその取り組みがなされていないとしたら、その施設はブラック施設であると言っても過言ではないでしょう。

利用者や家族の視点から考えてみると、利用者の安全が確保されていないわけですから、そんな施設にはだれも入所したくないわけです。

今回は転倒事故を例に挙げてみましたが、リスクというものは様々な視点で捉えるべきで、挙げればきりのない事です。きりがないという事はそれに取り組んでいくというリスクマネジメントは相当大変なもので、ものすごく豊富な知識も必要であるために、それ専門の学習も必要になってきます。ということはこれは法人挙げての取り組みを行わないといけないという事です。

それほど重要なことであると理解し、その施設が優良なのか、ブラックなのかの判断をなされれば良いのではないかと思います。