介護マニュアル

高齢者の災害対策で備えておきたい物と震災直後の生活ニーズ

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高齢者における災害対策

災害は人々の生活や心身の健康に大きな影響を与えてしまいます。疾患や障害を持つ高齢者への影響は更に大きなものになるため、いつ起こるかわからない災害に対して、日頃の備えが必要と言えるでしょう。

災害が起こってしまった時になるべく高齢者の健康を維持するために、重要なことを考えていきます。普段から備えておくものについては色々なメディアに取り上げられているため、ここでは一般的な項目は列挙せず、備蓄品や非常用持ち出し袋に対して高齢者についての注意点を説明します。

高齢者に特有の必要なもの

お薬手帳や健康保険証の写し、常備薬や医療物品の予備、眼鏡や補聴器や杖、入れ歯の洗浄剤やオムツなどが挙げられます。

オムツやパットなどの消耗品は、非常事態が長引けば支援を受けることが期待できるものもありますが、当面のものは確保しておいてください。

眼鏡や杖などの矯正器具は十分に矯正できるものがベストですが、以前に使っていたものでもあれば安心です。

在宅における備え

在宅で療養している高齢者については、災害時には非常用持ち出し袋としてすぐに持ち出せるように準備しておくとよいでしょう。

高齢者自身が運べる重さ・形状にまとめることができればベストですが、肉体的・体力的に難しい場合も多いと思います。介護者が非常用持ち出し袋を背負う場合は、高齢者を連れた状態でも物品が運べるかどうかを考慮してください。

また医療依存度が高かったり寝たきりの高齢者については、災害が発生しても避難が難しい場合もあります。非常時にどのような対応が必要になるのか、支援を得られる事業所などと一緒に考えておきます。

人工呼吸器などを装着している高齢者では非常用電源の確保は必須です。東日本大震災の発生時には、ライフラインが回復するまで一時的に入院するALS患者などもいました。

介護施設の備え

施設では利用者とスタッフを含めた大人数が過ごしています。ライフラインが断絶したときの物資の補給は、拠点病院等ほど優先度が高くないことが予想されます。

そのため、施設などではできれば全員が一週間ほど過ごせる備蓄をしておくと安心です。

東日本大震災では、備蓄された食料の賞味期限が切れているという事態がよく聞かれました。

長期間倉庫にあった毛布などが埃まみれで、喘息発作を誘発してしまった事例も聞きます。物品は定期的に点検し、メンテナンスや期限の確認をしてください。

また介護施設では、スタッフの連絡網などが必要になります。実際に東日本大震災では、スタッフはシフトに関係なく寝泊りして勤務していたという話をよく耳にしました。

出勤したくてもガソリンがなく電車や道路も断絶したために通勤手段が失われたり、逆に帰宅困難になったスタッフも多くいたようです。

震災の発生時には、自宅にお子さんや要介護者がいるスタッフは先に帰らせてあげたり、勤務可能なスタッフは出勤するなど、臨機応変で互いに思いやりを持った対応が必要となるでしょう。

水や食料品

食品は、火がなくても食べられるものも必要です。最近では、お湯がなくても水で戻して食べられる食品も販売されています。

固形食が食べられない高齢者のために、ペースト状のものや栄養補助ゼリーなどもよいでしょう。

水について1人分として1日3リットルが必要と言われています。

これは飲用水の1.5~2リットルの他に、洗浄用の水などを含めています。

飲用水に制限がありトイレも流せないような状況では飲水を制限してしまいがちですが、高齢者は脱水になりやすいことを念頭においてください。

また、非常時には入浴などをすることは難しいですが、感染症の防止のためにも最低限の清潔を保つことは必要です。

身近な生活ニーズ

災害が発生すると高齢者は、健康や生活障害を容易にきたしてしまうと言われています。

備えていても災害発生時には、予測がつかない事態になってしまうことでしょう。

そのような状態で高齢者の介護にあたる方には、可能な限り高齢者への悪影響を予防することが求められます。

食事について

災害後に移動した避難所での食事や支援される食品などは、高齢者には適さない場合があります。

お粥やきざみ食やミキサー食を食べている高齢者は、硬めのおにぎりやお弁当などはそのままでは食べることが難しいでしょう。

災害で義歯を紛失してしまうことなどで、硬いものは更に食べにくくなります。

また、おにぎりよりも移送が簡単なためによく支援されるパンなどは、高齢者があまり好まないことがあります。

食品はできれば温めたり、柔らかく細かくしたり、汁物をつけるとよいでしょう。

高齢者が飲み込みやすく、食べやすくなります。栄養状態が不良な場合は、高カロリーの栄養補助食品などを支給してもらえるように求めてください。

それでも下痢などの消化器症状や栄養状態の悪化が著しい時には、医療者へ相談して援助を求める必要があります。

また、災害発生後には食中毒の発生も懸念されます。実際に熊本地震の後に発生してしまったことは記憶に新しいでしょう。

水や電気などのライフラインが断絶することで、トイレが不衛生になったり手洗いや食品の洗浄が十分でなかったり、食品の冷蔵保存やゴミの処理も難しくなるためです。予防のために手洗いを励行し、水の確保が困難な場合には手指消毒薬やウェットティッシュなどを設置しましょう。

居住空間とゴミ置き場を分け、高齢者の健康状態を把握するようにしてください。

高齢者は脱水に陥りやすく、栄養状態も悪くなれば様々な健康被害に繋がります。高齢者の食事摂取状況をアセスメントし、被害の状況下でも可能な部分の対応に努めましょう。

排泄について

避難所の仮設トイレや、自宅や施設でも状況が変わってしまうと、高齢者には排泄環境が適さない可能性があります。

例えば避難所でのトイレは遠く、道順がわかりにくかったり、途中に階段があったりします。自宅でもライフラインの断絶により、トイレが暗く寒くなり、バケツで水を流さなければならない状況があるでしょう。

トイレに行きにくくなると飲水を制限してしまいがちなため、注意してください。

できれば無理なく行ける場所にトイレを確保できるよう、周囲の人の協力を求めてください。

照明や段差についても解消できればよいですが、環境の改善が難しければ周囲の理解や手助けによりカバーできる部分も多いでしょう。

清潔について

避難所などの環境では、高齢者には使いにくい設備だったり介護者がいないなどの条件により、高齢者が長期間にわたって入浴できないことがあるようです。

日常的にも風邪予防にはうがい手洗いが重要と言われており、様々な感染症を防止するために清潔保持の援助は重要となります。

東北大震災の発生後には、尿路感染症のために亡くなった高齢者もいました。

水の確保も困難となる状況ですが、尿路感染症や褥瘡の悪化を防止するために、尿道留置カテーテルを挿入していたり褥瘡がある高齢者では、1日1回は陰部・創部を洗浄するようにしてください。

入浴ができなくても、部分浴などでも感染症予防は期待できます。使い捨てのものを含めて下着を頻繁に交換したり、ウエットティッシュやドライシャンプーなどで清潔を保ちましょう。

その他の様々なニーズ

高齢者の情報からの孤立

高齢者は元々、聴力や視力、認知機能の低下などからコミュニケーションに困難がある場合があります。また近年発達したネット環境も使いにくく、更に被災後はショックや疲労などから、情報を収集する余力も低下してしまいます。

災害後には支援や生活再建について多くの情報が伝達されますが、特に認知症を持つ独居の高齢者には理解できないことがあります。このような状況を理解し、高齢者が情報から孤立してしまうことで不利益を被ることを防ぐ支援が必要となります。

情報を配信する場合は、高齢者にもわかりやすい内容やレイアウトにしたり、個別の配布が必要となります。また高齢者に接する時には、情報が行き届いているか理解できているかを確認してください。

必要時には手続きに関するサポートを行ってください。

高齢者のメンタルヘルスや認知症について

成人や若年者と同様に高齢者も災害による様々なストレスのため、PTSDやうつなどを発症する可能性があります。高齢者のメンタルヘルスを維持・向上させるための支援も大切です。心身の状態をアセスメントしたり抱える不安について話を聞き、可能な部分は対応策を練ったり医療機関や専門家に繋げる必要性があるかどうかを判断してください。

また、災害による疲労や体調の悪化があったり避難所生活など生活環境が変化する場合は、認知症の増悪が見られたり、せん妄が発症することがあります。せん妄は認知症と鑑別が必要な一過性の脳機能障害ですが、対処方法には共通した部分もあります。基本的に介護する側は高齢者の不安な気持ちを受け入れ、穏やかな態度で接してください。

また、生活リズムがつくように日光や照明を配慮し、活動範囲にある危険なものは排除して日中の活動性を高めるようにしてください。

周囲の人との交流は大切で、コミュニケーションがとれるように調整します。それでもその場所での生活の継続が困難な場合は、ショートステイなどを考慮してください。

生活環境を変化させる必要があるとき

高齢者は環境の変化に柔軟に対応することが難しいとされています。

しかし、災害の規模が大きかったり復興に長期的な時間が必要なときは、元の居住地に住み続けることができず、継続した人間関係も断ち切られることがあります。そのような環境の変化によって、孤独感を増強し心身の健康を損ねる場合があります。

避難所に移ったりその後の引っ越しなどを余儀なくされる場合は、高齢者の認知機能や精神状態を把握する必要があります。

自己決定が可能な状態であれば、高齢者のペースに合わせて話を傾聴し、今後の居住地について自己決定を支援しましょう。

認知機能が十分でない場合は、ご家族や後見人と相談してよりよい方向性を探っていきます。

被災前となるべく近い場所での生活を望む高齢者が多いと思いますが、医療や福祉などの社会資源やご近所づきあいなどの人間関係も保たれるように努めてください。

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