2015年の介護保険改正で何が変わるのか

桃色の花弁

2015年に介護保険法が改正され、ニュースなどでも取り上げられていますが、今回の改正ではいったいどのように変わるのかを解説していきたいと思います。

今回の改正は大きく分けると2つの方針に分けられます。
一つ目は施設ではなく、地域で介護を行っていこうという方針、もう一つは、保険という性質上平等となるように財源を見直すということです。

ではそれぞれについて具体的にどのような施策が行われるかを紹介していきます。
まず地域で介護を行っていくために「地域包括ケアシステム」の構築が行われます。
地域包括ケアシステムとは、医療・在宅介護・それらの予防・生活支援サービスを一体的に提供するもので、例えば重度の介護が必要となった状況でも、今まで暮らしていた場所や地域で継続して生活してくことができるようにすることが目的です。
具体的な内容としては、
①生活支援サービスの充実
②訪問介護・通所介護サービスの主体を地域に置く
③小規模多機能型介護サービスの充実と普及
④特別養護老人ホームの入所要件の変更

が挙げられます。

それぞれについて詳しく説明していきたいと思います。

①「生活支援サービスの充実」

生活支援サービスとは、その名の通り、買い物や食事の支度、外出などといった日常生活を支援するものですが、
従来⇒ご家族が行っていました。

改正後⇒生活支援コーディネーターを創設し、地域住民のボランティア、NPO法人、民間企業などに対して紹介・養成を行うことになりました。
当然ながら家族の負担が軽減されることは予想されますし、特に増え続けている独居老人の方への支援が充実されることは大きな前進かと思われます。

②「訪問介護・通所介護サービスの主体を地域に置く」

訪問介護とは利用者の居宅に訪問し、入浴、排泄、食事などの介護を行うことです。
通所介護サービスとは、利用者がデイサービスセンターに行き、入浴、排泄、食事などの介護を受けることです。
従来⇒全国一律のサービス基準によって行われていたため、地域によって異なるニーズに対応できていないという問題がありました。

改正後⇒市町村によって介護予防・生活支援サービス事業が行われることになり、地域ごとの状況に合わせたサービスが提供可能となりました。
さらに、従来の事業所のみではなく、①の生活支援サービスと同様に地域住民のボランティア、NPO法人、民間企業の活用も方針として掲げられています。
このことで、サービスの多様化、介護の担い手の人材確保、費用の抑制が期待されています。

③「小規模多機能型介護サービスの充実と普及」

小規模多機能型介護サービスとは、訪問介護、通所介護、ショートステイといったサービスを一事業所が一括して行うことで、同じ職員が対応することが可能となり、利用者が安心して今まで暮らしてきた地域で一連のサービスを受けながら生活できることが最大のメリットであるサービスです。
従来⇒通所介護やショートステイに偏る傾向にありました。
これは、小規模多機能型介護サービスが定額制であるため、一人の利用者様に対して一人の職員を必要とする訪問介護は非効率的であるためと思われます。

改正後⇒訪問介護の機能強化を行う施設に対して、介護報酬の上乗せをすることになりました。
本来の目的である同じ職員での一連のサービス提供が促進されることが期待されます。

④「特別養護老人ホームの入所要件の変更」

特別養護老人ホームとは入所型の介護施設で、社会福祉法人であり国からの援助があるため費用が軽費で済む施設です。
従来⇒軽微な介護を要する方(要介護1や2)でも入所することが可能であり、そのため入所待機者が多く、2013年10月の厚生労働省の発表では52万人とのことでした。

改正後⇒入所要件として、要介護3・4・5の方に限定されます。
このことで入所待機者は減り、より切実に入居を必要としている方が入所できることになります。

このように、地域に介護を移行していくことで、より多くの方が適切な介護を受けることができるようになるわけですが、当然ながらデメリットも懸念されています。
市町村に主体を置くにあたって、市町村がサービス費用の負担額や事業所への報酬を決めることになります。
3年ごとの見直しを義務付けられてはいるものの、市町村の能力によって、費用や質が変わってくるため、地域格差が生じてしまうのではないかと言われています。

次に財源の見直しについて説明していきたいと思います。
簡単に言ってしまうと、所得の少ない方の負担を減らし、所得の多い方の負担を増やすということなのですが、具体的な内容としては、

①第一号被保険者の介護保険料の変更
②介護保険サービス利用時の自己負担額の変更
③高額介護サービス費支給制度の見直し
④補足給付制度の見直し

が挙げられます。

それぞれについて詳しく説明していきたいと思います。

①「第一号被保険者の介護保険料の変更」

第一号被保険者とは、介護保険を支払っている65歳以上の方のことですが、
従来⇒6段階の所得区分によって保険料が決まっていました。

改正後⇒所得区分を9段階に区分し、第一段階から第三段階の方の保険料を減額することになりました。
これにより、低所得者の支払う保険料が減額されることになるわけですが、実際に対象となるのは以下に該当する方です。
・生活保護被保護者、世帯全員が市町村民税非課税の老齢福祉年金受給者等
・世帯全員が市町村民税非課税かつ本人年金収入等80万円以下等
・世帯全員が非課税かつ本人年金収入等80万円超120万円以下
・世帯全員が市町村民税非課税かつ本人年金収入120万円超等
(詳しくは各市町村の福祉課に問い合わせる必要がありますのでご注意ください。)
この改正で低所得者の負担額は減るわけですが、その財源には消費税が充てられることになり、1300億円になると推定されています。
消費税は低所得であっても平等に課せられる税金であるため、この改正が消費税を上げる要因となるような状況になれば、単純に低所得者の負担減にはならない施策と言えます。

②「介護保険サービス利用時の自己負担額の変更」

介護保険サービス利用時には、医療保険と同様に一部は自己負担しなければいけません。
従来⇒一律1割の負担でした。

改正後⇒年金収入が280万円以上ある方は負担額が2割に引き上げられます。
単純に負担が2倍になってしまうので、利用者も安易に介護サービスを利用することが無くなり、無駄な介護サービスの利用の減少や、企業のサービス内容の競争、向上も期待されます。

③「高額介護サービス費支給制度の見直し」

高額医療費支給制度をご存知の方は多いかと思われますが、介護保険においても同じように高額介護サービス費支給制度というものがあります。
一定以上の自己負担額を超えた場合に、4段階の所得区分で段階ごとに一カ月あたりの自己負担限度額が決まっていて、それを超えた場合に、超過分が払い戻されるという制度です。
従来⇒4段階のうち、最高段階である第四段階(市町村民税課税世帯)の自己負担限度額は37200円でした。

改正後⇒第四段階の自己負担限度額が44400円に変更されます。
市町村民税が課税されるほどの所得者はできるだけ自己負担してくださいということです。

④「補足給付制度の見直し」

補足給付制度とは、介護保険施設入所者の方は光熱費や食費は原則自己負担となっていますが、これらを支払うことが困難な低所得者には一定額以上は現物支給するという制度です。
従来⇒対象者は市町村民税が非課税である方でした。

改正後⇒以下の方が対象外となります。
・一定以上の預貯金や有価証券を有する方。
・住民票上別世帯になっている配偶者が市町村民税課税対象者である場合。
・収入として取り扱われない遺族年金や障害年金を収入と合算した場合第四段階以上の所得となる場合。
ざっくり言えば所得が無くてもお金を持っている方は対象外になるということです。

これらの施策によって、所得の少ない方は低負担で介護を受けることができるようになり、高所得者は負担が増えることになります。
賛否両論あるとは思いますが、保険というものは助け合うことが前提にある制度ですので、所得により負担が変動することはしかるべき事であると思われます。

介護保険の歴史は浅く、まだまだ問題は山積みです。
例えば慢性的な介護従事者の不足や低賃金、年々進行する少子高齢化などです。
今回の改正にとどまらず、安心して老後を迎えられる社会が実現することが切実に求められているのではないでしょうか。

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