怒らせるきっかけを作らない ~認知症患者との付き合い方~

カラドナの花

認知症の義父と一緒に暮らしていた頃、普通の人なら何でもないようなことで突然火がついたように怒り出す義父に手を焼いていた私です。

病院に付き添って行ったとき、順番が来て「○○さん!」と呼ばれた瞬間にいきなり表情が変わり、「俺が何したって言うんだ!」と怒り出した義父。
夫や私がなだめても聞かず、「絶対(診察室へ)行くもんか!」と怒鳴りました。

実はそのときに義父を呼んだ人の言い方が少々きつかったんです。

優しく「○○さ~ん♪」と呼んでくれていたら何の疑問もなく診察室へ入っていったと思われるのですが・・・。

認知症の人は、カチンと来るポイントがいくつかあるようです。
私が義父の介護をしていて気づいた「怒りスイッチを入れてしまうポイント」は、以下のようなことです。

1.患者のプライドを傷つける言葉や、言い方。

  「まだですか」とか「早くしてください」のように、本人が何かをできずにいることに対して急かすような言い方をすると、怒ってしまうことが多いです。

  なかなか診察室に入ろうとしないなど困ったときは、「○○さんに教えてほしいことがあるって先生が待ってます」などのように、患者を持ち上げるような表現をしてみることをおすすめします。

2.患者の行為を否定すること。

  「そうじゃないです」とか「そっちに行ってはダメです」のように、患者の行動を否定する表現は避けましょう。
自分の部屋ではない部屋に入ろうとしたときなどに「ダメ」というのは患者を怒らせるきっかけになります。
  そのような場合は、「お菓子食べませんか?」などと声をかけ、注意をそらすようにします。

そのほか、我が家の場合は義母(義父にとっては妻)の法事の日にどうしてもグループホームから帰宅しようとせず、途方にくれたことがあったのですが、仕方がないのであきらめて帰ってきたら、職員の方から連絡があって、「説得が上手くいって、行く気になったようなのでこれから送って行きます」とのことで、帰宅した義父はなぜか満面の笑みで、さっきまであんなに怒っていて「絶対行かない!」と言っていたのは何だったのだろうかと不思議に思ったことがありました。

たぶん、患者本人の気が進まないことを無理にさせようとすると、意地を張るばかりなのだと思います。

そういうときには、一旦あきらめて、しばらく時間を置いてからやんわりと話を持って行くなどすると、意外にあっさり言うとおりにしてくれることがあります。

また、認知症が進行してくると、服の着方がわからなくなってくる場合があります。
ズボンの足の部分に手を入れてかぶろうとしたり、セーターを持って途方にくれていたりすることがあります。
また、着る順番を理解できず、ズボンの上からパンツをはいたりすることもあります。

このような場合、「違うでしょ」と脱がせようとしてはいけません。
パンツを触りながら、「これを中にはくと着易くていいですよ」「ちょっと脱いでみましょうか」などと声をかけ、脱いだあとはパンツだけを渡して正しくはかせ、そのあとでズボンを渡して、「ここに足を入れましょう」と丁寧に案内するようにしてあげてください。

夜中にどうしても出て行こうとするときなども、無理に止めようとするのではなく、「もうすぐ息子さんが帰ってくるから、そのあとで一緒に出かけましょう」などと声をかけた上で別の話題をふって注意をそらせるなどの工夫をすると、安定する場合があります。

認知症の人は、何をどうしていいのかわからなくてとても不安だったり混乱したりしています。
ですから命令するような口調で話しかけたりせず、「一緒に考えましょう」というスタンスで接することを心がけましょう。

本人が安心して生活できるように寄り添いながら丁寧に導いていくのが望ましいと思います。