認知症を持つ高齢者の徘徊に対する具体的な対応

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前回は徘徊の原因と、基本的な考え方について説明しました。

認知症を持つ高齢者の徘徊に対する基本的介護

更に具体的な対応について述べていきたいと思います。

徘徊をする高齢者への基本的な姿勢

以前の記事に前述しましたが、徘徊に対して怒ったり乱暴な態度で接することは逆効果になります。

「ここで嫌な思いをした」「怒る人だ」などの感覚が残り、むしろ家の外へ逃げ出そうとするケースを見たことがあります。

認知症であっても長く生きてきた高齢者の尊厳を大切に、穏やかな態度で接してください。

徘徊しようとする高齢者の意思を頭ごなしに阻むのではなく、その焦る気持ちに共感したり、お話を傾聴してください。

また、人員と時間の限られた介護の現場では難しいことではありますが、許される状況ならば高齢者の気持ちの通りにその徘徊に付き合ってあげると得られることもあるでしょう。

このような対応を繰り返すことで、今いる環境が高齢者にとって居心地のいいものになれば、徘徊も減ってくると期待できます。

定期的なトイレ誘導

時間を決めてトイレに誘導することで、家の中の徘徊が軽減されることもあります。

根本的にトイレの場所がわからなくなって探している場合もあり、トイレ歩行することでちょっとした気分転換にもなるようです。

徘徊の目的から一時的に目を逸らしてもらう

この気分転換は重要だと考えます。「私の家はここじゃない」とか「子供にご飯をあげないと」などの認知症のある方の言葉を「それは違います」「あなたはそうではありません」と言っても問題解決になることはありません。

まずはお話を伺って、「それは大変ですね」などとご本人の気持ちを受け入れてください。

その後「外出用に上着を取りに行きましょう」とか「お食事をここで作って持って帰りませんか」などと、外出以外の目的に目を向けてもらうとよいでしょう。

他の用事をしているうちに自然と徘徊したいと思っていた気持ちを忘れてくれることがあります。

高齢者が玄関から出るときに、介護者がわかるようにする

玄関に鍵をつけて勝手に出られなくしたり、物を置いて玄関をわかりにくくするという方法を取る介護者もいます。

簡単に出て行かれると困る事情は理解できますが、私の経験上ではあまりよい対策だとは思えません。

「玄関はどこ」と更にイライラしてしまったり、玄関以外の場所から出て行こうとする方がいるからです。

玄関には開けると反応するセンサーをつけるなどして、これまでに紹介した方法と組み合わせて介護にあたってみてください。

高齢者が玄関を出ようとしてもすぐに介護者が気付くことで、適切な対応が取れ事故の防止になるでしょう。

日中は楽しいことをして、夜はよく眠ってもらう

夜間の徘徊も、対応が大変です。日中は活動することでほどよく疲れてもらい、良眠してもらえるようにしましょう。

デイサービスなどを利用してもらい、楽しく過ごしてもらうことも一案です。

不眠が続くようなら受診し、適切な睡眠導入剤などを服用することで、日中のイライラやせん妄が改善することもあります。

高齢者の徘徊に付き合う

それでも外出してしまう方もいます。私は、一緒に歩きながら昔話を伺っていると次第に気持ちが落ち着き、当初の目的を持った小走りの歩き方から散歩調になってきて「今日は疲れたからまた今度にするわ」と、ご自分から帰宅してもらえる経験が多くありました。

ドイツの介護施設において施設の前に偽のバス停(本物のバス停とそっくりに作られているが、バスは来ない)を作ったという話を聞きますが、とても良い方法だと思います。

「ここからバスに乗りましょう」と暫く待ってもらい、「バスが遅れているようなので、中で一休みしましょう」と声かけしやすくなるからです。

行方不明にならないように

以上のように徘徊で大事にしないようにすることが基本的な対応ですが、万が一行方不明になってしまった時の対策も必要です。

服の裏や持ち物に名前や連絡先を記入しておいてください。財布やバッグに入れておくために、小型のGPSも市販されています。

徘徊する方を早期発見するネットワークを自治体や町内会で作っているところもあるので、調べてみてください。管轄の警察署、ご近所や常連になったお店にもお願いして前もって顔写真や事情を伝えておくとよいでしょう。

介護する側の視点を変えてみる

徘徊は「問題」行動として捉えられますが、歩くことは高齢者の筋力低下を防止したり、便秘の解消になるなど、体調管理の面からみても多くの利点があります。

徘徊が出現するとご家族や介護の現場ではイライラしたり困ってしまうことがありますが、少し視点を変えるよう努めてみてください。

何が徘徊を引き起こしているのかを考え、適切な対処をとって、高齢者本人も周囲も安心して暮らせるようにしていきたいですね。