認知症高齢者で問題になりやすい「嚥下」とは?

青空とつるバラ

食べ物を飲み込む動作を「嚥下(えんげ)」と呼びます。

認知症高齢者では、しばしば嚥下の過程に障害が見られるため、食事に特別な配慮が必要なケースがあります。

この記事では、認知症高齢者で問題の起こりやすい嚥下について解説します。

複雑な動作の集合体である嚥下

「食べ物を見る~胃に入る」までが嚥下

「嚥下」とは、食べ物を飲み込む一連の流れを指す言葉です。と言葉で言われても少しイメージがつきにくいと思いますので、実際に嚥下を行ってみましょう。

コップに水を入れて、それを飲んでみてください。飲み込めましたか?

今、水を完全に飲み込むまでに、まず水を目で確認し、口に含んで、のどの方へ送り込まれたかと思います。そうして水は、食道を通って、胃に収まりました。

この一連の流れが”嚥下”と呼ばれる動作なのです。

いくつもの働きが複雑に絡み合う

嚥下は、私たちの脳や神経、のど周辺の筋肉の運動など、多くの働きが関係するとても複雑の動作です。

嚥下には、下に挙げるような多くの体の機能や動作が関係しています。

・食べ物の形や量を確認する認知機能
・食べ物を口の運び、タイミング良く口を開ける動作
・食べ物を口の中に留めて噛む動作
・食べ物をのどの奥へ送り込む動作
・食べ物が気管に入るのを防いで食道を通過させる機能
・食べ物の到着と同時に胃の入り口を開く機能

嚥下がスムーズに滞りなく完了するためには、これらの機能や動作が、正常にタイミング良く働く必要があるのです。

認知症高齢者の命に関わる嚥下の障害

認知症高齢者に多い嚥下の障害

健康な若い人であれば、これらの機能や動作を、ほぼ無意識に実行できます。しかし、高齢者、特に認知症を患った高齢者では、認知機能や筋肉の運動能力が弱くなることで、嚥下の動作をスムーズに実行できないこと(嚥下障害)がよく起こります。

食べ物の形や量を理解できない、タイミング良く口が開けられない、食べ物を口の中に留めておけない、噛み砕けない、気管に入ってしまうといった問題のために、食べ物をスムーズに飲み込めなくなってしまうのです。

栄養不良や誤嚥(ごえん)の原因になる嚥下障害

食べ物をうまく飲み込めないことは、「栄養不良」と「肺炎」という、高齢者にとって命に関わる重大な問題を引き起こします。

嚥下がうまくいかなくなると、口に含むたびにムセるなど、食事に時間がかかるようになります。また、スムーズに食事ができないストレスも強く感じるようになります。

この結果、本人も気が付かないうちに食事量が減ってしまい、栄養不良を引き起こします。栄養不良は、風邪をひきやすくなる、筋力が衰えるなど、寝たきりの原因にもつながるため、軽視できません。

また、食べ物が気管に入ること(誤嚥:ごえん)が続くと、食べ物といっしょに雑菌が気管や肺へ入ってしまい、それが元で肺炎を起こすことがあります。これを誤嚥性(ごえんせい)肺炎といいます。

誤嚥性肺炎は、高齢者の肺炎の約半数~7割を占めているとも言われており、一度起こすと繰り返し再発しやすいため、命に関わる非常に危険な病気です。

嚥下障害に対する食事の注意

嚥下に問題を抱える認知症高齢者では、食事の介助や形態に工夫が必要になります。

食事を介助する際の注意点

飲み込む力が弱くなった認知症高齢者に対して、食事の介助が行われます。介助の際には、下のようなポイントに注意して行うことが、誤嚥を防ぐ上で大切になります。

・口に運ぶ際に声をかけて、意識を食べ物に向けてもらう。
・一口の量を飲み込みやすい量に調整する。(多すぎても少なすぎても×)
・すべて飲み込めているか一口ごとに確認する。残っている場合は、もう一度飲み込む動作をしてもらう。(追加嚥下)
・口の中が空になってから、次の一口に進む。

また、前かがみの姿勢になると、気管に入りやすくなるため、上半身をやや起こした姿勢を取ることも大切です。この際に、あごが上がると嚥下しにくくなるため、あごはやや引いた状態が適しています。

食事形態の工夫

誤嚥を予防するためには、食事の形態にも工夫が必要です。水分が少なくパサパサするものや、ベタついて口の中にくっつきやすいものは、飲み込みにくく口の中に残りやすいので避けます。

噛む力や食べ物を食道に送る力が衰えた高齢者に対して、食事をペースト状にする、トロミを付けるといった対策もあります。

食事をペースト状にすると、噛まなくても飲み込むことができるため、噛む力の衰えを補ってあげることができます。また、トロミを付けることで、食べ物がまとまって流れやすくなるため、気管に入るのを防ぐことができます。

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いかがでしたか。
認知症高齢者では、嚥下の動作が衰えることで、さまざまな問題が起こってきます。
誤嚥や栄養不良を予防して、安全に食事を取ってもらうことが、認知症高齢者のケアにおいては重要です。